大切なことは小説が教えてくれる。

タイトルはあくまで個人の見解です。自己啓発本も読んだことはあるけれどしっくりこなかった。「○○は△△したほうが良い」などの言葉を具体的に自分の日常に落とし込むイメージがつかずふんわりとした理解のまま読み終わってしまうから。

小説にははっとさせられることが多い。細かい描写で登場人物の人生に入り込めるから、この人がどんな思考をしていてどんな苦悩があってどのようにそれを乗り越えようとしているのかまでわかるから理解しやすいのかもしれない。

昔ずっともやもやしていたことがあって、『偽善』について。
善いことをするのはの誰かのためではなく、自分が善い人だと思われたいからであって、100%の善意なんて存在しない、人間は他者からの評価や自己満足でしか生きれないんだと、善い人ぶって生きるのって嫌だなと思ってた。
特に学生時代に起こった震災。募金活動をする人に違和感を感じてしまっていた。じゃあ自分は何をするのか、何もできないししようとしない自分に嫌悪感を抱き、そんな自分を縛る自意識が苦しかった。
でも、2冊の本がもやもやを晴らしてくれた。
※ここから辻村深月作品、西加奈子作品を一部引用しています。

辻村深月の『ぼくのメジャースプーン』で秋先生の言葉、

「責任を感じるから、自分のためにその人間が必要だから、その人が悲しいことが嫌だから。そうやって、『自分のため』の気持ちで結びつき、相手に執着する。その気持ちを、人はそれでも愛と呼ぶんです。」

西加奈子の『i』でミナがアイへ言った言葉、

「どうせ自分は被災者の気持ちが分からないんだって乱暴になるんじゃなくて、恥ずかしがりながらずっと胸を痛めていればいいんじゃないかな。」
「誰かのことを思って苦しいなら、どれだけ自分が非力でも苦しむべきだと、私は思う。その苦しみを、大切にすべきだって。」

自分の気持ちは偽善であると認めてしまった方が楽かもしれない。けれど、その上で何かしてあげたい、力になりたいって思うことは悪いことではないと思えるようになった。自分の中から湧き出てくる他者への気持ちは大切にすべきだと教えてくれた。心がスーッと楽になった。

大切なことはやっぱり小説が気づかせてくれる。こんがらがった思考回路をほどいてくれる。

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