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クイズ$ムリオネア

「続いての挑戦者です。どうぞ」

早押し並べ替えクイズで勝ち残った俺は割れんばかりの拍手と同時に入場し、バーにあるような高めの椅子に座る。
眼前には爬虫類顔のオッサンがニヤニヤしながら俺に尋ねてくる。

「1000万円、手にしたら何に遣いましょう?」
「結婚費用。それ以外は考えてません」
「おぉー、良いですね~ご結婚! お相手は?」
「……ノーコメントで」
「良いでしょう。若きシャイガイの運命を変えるかもしれない、クイズ$ムリオネア!」


[ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが創始者である国際的企業は次のうちどれ?]

A:Facebook
B:Apple
C:Google
D:Amazon







「C」
「お見事」

[STUDY!:A→マーク・ザッカーバーグ B→スティーブ・ジョブズ D→ジョフ・ベゾス]

[Vtuberと呼ばれるバーチャルユーチューバーの始祖は誰?]

A:電脳少女シロ
B:ミライアカリ
C:輝夜 月
D:キズナアイ







「……D」
「正解!」

危なかった。一瞬Aと迷った。

[STUDY!:各デビュー日:A→2017年8月17日 B→2017年10月27日 C:2017年12月9日 D→2016年12月1日]

[225の平方根は次のうちどれ?]

A:13
B:14
C:±15
D:15







「C」
「さすが」

[STUDY!:A→13の累乗は169 B→14の累乗は196 D→15は√225の根号]


[元素記号でホウ素を表すものは次のうちどれ?]

A:Be
B:Bh
C:Ba
D:B







「D」
「いいですね」

これは大丈夫だ。

[STUDY!:A→ベリリウム B→ボーリウム C→バリウム]

「ここまでは楽勝ですね?」
「……まぁ」

次のステージにいくまでにオッサンが一呼吸置いてくる。さっさと次に行って欲しい俺は手早く返事をする。

「どんどん参りましょう。続いて10万円への挑戦です。クイズ$ムリオネア」


[次のうち、最も画数が多い漢字はどれ?]

A:かがみ
B:びゃん
C:たいと
D:おおいちざ

……何それ? びゃん? おおいちざ?
聞いたことすら無い。無理ゲーだろこれ。

「50:50で」
「早速ライフラインを使いますね?」
「いや使いますよ無理でしょこれは」
「それではコンピュータが2つに絞ります!」


C:たいと
D:おおいちざ

絞られてもなぁ……。
ええいままよ!







「C」
「ファイナルアンサー?」

くっそ。このニヤつきが腹が立つんだ。

「ファイナルアンサー!」

やけくそ気味に答える。






「正解!!」

[STUDY!:A→76画 B→68画 C→84画 D→79画
参考:https://tomorrownews19.hatenablog.com/entry/2019/12/16/235856]

流石ムリオネア、と言ったところか。
というかどんだけケチりたいのやら。10万円の挑戦でこの難易度とは。



そこから先も理不尽な問題は続いた。

一例

[風呂掃除RTAの日本記録は何分何秒?]

A:7分55秒
B:8分55秒
C:9分55秒
D:10分55秒







俺は側面にAからDを描いた鉛筆を転がした。
Aが出たからAにした。

「ふぁいなるあんさー」
「せぇかぁいっ!」

うるせぇ。

[STUDY!:参考:https://note.com/minami3/n/nf3182bff612d]

一例

[第3回ヒヨリミコロシアムの優勝者は誰?]

A:乱読する鳩
B:水無飛沫
C:月見肉団子
D:落着

誰だよ! てか何の大会だよ!!




「テレフォンで」
「はい。それではお電話繋がっています。お友達の職員Mさん」

俺は仕方なしに大学時代の悪友に電話を掛ける。恐らく次も鉛筆に頼ることになるだろう。どのみちライフラインなんかに絶対は無いんだ。

「はい」
「あなたのお友達なんですけどね、今75万円に挑戦中です!」
「おおぉぉ!!」

そんなテンション上がる額じゃねぇだろ。

「お時間30秒です。大切に遣ってください……。ではどうぞ」

オッサンが言うやいなや、チクタクという嫌な音が木霊する。俺は急かされるように問題文を口にした。

「えっと。第3回」
「第3回!」
「ヒヨリミコロシアムの」
「ヒヨリミコロシアムの!!」
「優勝者は誰?」
「優勝者? あ、飛沫先生です」
「飛沫先生?」
「ひまつじゃなくてしぶきね。水無飛沫先生」
「絶対?」
「さぁね?」

なんでだよ。じゃあなんで自信満々なんだよ。

「真実は、ヒヨコロに参加した者だけが目に出来るんだぜ……」

こちらから切った。

「良かったんですか?」
「良いです。Bで」
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー」







「せいかぁぁあい!!」

だから75万円のテンションじゃねぇだろ。

[STUDY!:A→2位 C→4位 D→3位
https://twitter.com/i/events/1548878479617589249?s=20]




そして死ぬ気で辿り着いた100万円チャレンジだった。残るライフラインはオーディエンスのみ。クイズに縁遠い奴らのヤマ勘だ。無いに等しい。
すると突如オッサンがこちらに居直る。

「実は本日、挑戦者にとって大切な方に来ていただいています」
「え?」
「オーディエンスにいらっしゃいます。中岡美波さんです」
「美波……!」

俺が後方を見ると、確かにこちらを真っ直ぐ見つめる美波の姿があった。スポットライトが当てられ、周りからは野次混じりの歓声が湧く。
馬鹿な。こんなしょうもない空間に来なくて良いのに。

あいつは俺の幼馴染で、今日の賞金で、あいつに......!


「大丈夫ですか?」
「は、はい」
「動揺してますか?」

うるせぇな。

「大丈夫です」
「それではいきましょう。100万円の挑戦です」


[中岡美波さんが5歳の誕生日にもらった思い出深いプレゼントは次のうちどれ?]

A:シルバニアファミリー
B:手紙
C:プリキュア変身セット
D:花束


無理だっつの!!そもそもクイズかこれ!!

「......すぅー......。オーディエンス」
「最後のライフラインを使いますか」
「使います」
「それでは皆さま、お手元のボタンを押してください!」

ややあってから画面に表示される。

A:33%
B:4%
C:31%
D:32%


3択に減っただけじゃねぇか!!

ふと美波を見ると、投票結果を見てどこか儚げに微笑んでいる。勿論答えを教えてくれるはずなどない。だが......。



「これあげる」
「いいの?」
「おたんじょうびおめでとう!」

これは......。確か幼稚園くらいの誕生日に......。




「割れましたねぇ〜」

愉しげにニヤつくオッサンを睨みつけると、深呼吸を一度し、答える。






「B」
「え? 良いんですか?」
「Bだ。ファイナルアンサー」
「なんと4%を選択! Bですファイナルアンサー!」





「......もう、ここには、戻れません」

じっくりといやらしく、オッサンは75万の小切手を破る。

尚も時間をかけて俺の顔を覗き込み、ニヤつきを最大限まで持っていくオッサン。何故誰も殴らないのか理解に苦しむ。






「......」

俺も鼻息荒く睨み返す。





「おめでとううぅぅぅううう!!!!」

突如大絶叫しながらオッサンは立ち上がり、俺にハグをしてくる。俺はされるがままだった。

「100万円です!」
「......ありがとうございます」


最終賞金1000万円じゃなかったっけ?


[STUDY!:A→8歳誕生日 C→6歳誕生日 D→10歳誕生日(1/2成人式を兼ねる)]



「ムリオネアはここからが本番! 150万円の挑戦です!」


[コストが理由で日本のファミレスに無い物は次のうちどれ?]

A:ウェイター
B:ウェルカムドリンク
C:2階席
D:ナイトショー





俺は鉛筆を転がしてDを出し、そのまま回答した。






「ざぁぁぁぁぁんねぇぇぇん!!!」

オッサンは実に愉快そうに残念そうな面を貼り付けた。

正解:C

[STUDY!:各フロア担当の配置を避ける為
参考:https://omnamahashivaya.info/archives/2183.html]



俺は税金を差し引いた65万円を手にし、足りない35万はMの奴から借りて指輪を買いに行った。

「Bって答えてくれて、ありがと」

恋人から婚約者になった彼女は、あの時のことを詳しく話さずに、ただ俺を見つめながら微笑んでいた。





「あなたの人生を変えるかもしれない、クイズ$ムリオネア! あなたの挑戦をお待ちしております!」

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