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いつも通りの朝、そうではない朝。


午前6時。

この世でいちばん嫌いな音がなる。

とても心地の良い気温。そのなかでよだれを垂らしながら気持ちよく寝ているぼくに、けたたましい音が浴びさる。

ジリリリリリリリッ!!

アラーム音は昔から好きになれない。この音自体が嫌いなんだと設定を変えても、また瞬時に次の音が嫌いになる。

アイフォンに罪があるわけではないのだけど、このときばかりはこいつが憎くて仕方がない(いつもは大好きなんだけど)。

布団にへばりついた体をなんとか引き剥がし、カラダを起こす。

トイレに向かう。帰りに洗面台へ寄り、歯を磨く。リビングに戻ると、小さな水槽でカメがぬらぬらと泳いでいた。

いつも通りの朝。きっと、明日もあさっても、今日とあまり変わらない朝を迎えることになるのだろう。

しかし、そのなんの変哲もない朝は、誰かにとっては、迎えたくても迎えられなかった朝でもある。

寿命のひと。病気のひと。事故でいきなり生を閉ざされたひと。日本では考えられないけど、どこかの世界では食べるものもがなく、栄養失調で息を奪われたひともいるかもしれない。

何気ない朝は、実は、そんな誰かにとっては欲しくて欲しくてたまらなかった朝でもある。

アラーム音に怒れる。ぬちゃぬちゃの口を面倒くさそうに洗う。泳ぐカメを眺める。

忘れてしまいがちなことだけど、それができるだけで、ひとはとても恵まれているのだ。

そう思うと、今日も頑張ろうと思えてくる。大袈裟に言うと、誰かの分まで生きようと思えたりもする。

今日も一日、できるかぎり楽しもう。

まあ、それでもアラーム音は、好きになれそうにないけども。

我に缶ビールを。