素材から考える刺繍デザイン
ものづくりを仕事にしている方はみなさんそうだと思うのですが、時々「どうやってデザインするんですか」なんて聞かれること、ありますよね。
私の場合、
・紙を前にペンを走らせる
一択でした。ずっと。
この時頭に浮かんでいるのは、絵というより文章です。それを手繰り寄せて絵にはめていく感じ。
(物語のアルファベット)
特にアルファベット刺繍のデザインはこれです。
ところがここ数年、
・ただただ素材を観察する
という新しいデザイン方法が仲間入り。
(その前の段階で、自分発信のものか、クライアントワークか、なにが目的か、誰とどこまでやるのかなども重要ですが、今回は割愛)
ほんとにただ見てる
集めた素材をとにかく見ます。
糸はルアーを自作するためのもの。
集光プレートは本来は何に使うものなんでしょうか。2年前、ハンズで買いました。
シシャワーク(ミラー刺繍)に使えそう。。。
使えました。
でも厚みがありすぎて難しい&強度に問題が。
まだまだ試してみないと実用は無理そうです。
閉鎖された工場から発掘された桐生織のマス見本(色合わせのサンプル)。
これは長期で眺めてる途中。まだ刺繍は乗せてません。
こちらはインドの手刷り布。
これは1年くらい眺めていたかな。
立体刺繍や飾り刺繍を乗せてみたら合いました。
ただ眺めるだけの時間を積み重ねると
急に手が動くがあるんです。数年動かないこともあります。一生動かない素材もたぶんある。
猫になった
1年前購入した、デッドストックの桐生織のマス見本。
この個性的なチェック布、けして好きな柄ではないのですが、なんだかすごく気になって、なにか刺繍を乗せてみたいと、時折取り出して眺めていました。
そしたら今日、猫になりました。
唐突に。
これは本当に不思議な体験です。
「これを作ろう」とか「こんな使い方にいいかも」というイメージがまったくないけれど、なんとも気になる素材というのがあるのです。
毎日眺める中で「あ、あれに良さそう…」とほわほわイメージが湧いてきて、試作を重ねることで完成することもあるし、今回みたいに昨日までまったく想像していなかった猫に急になることもある。
たぶん、考えるでもなく考えているんでしょうが、道程が脳内で言語化されていないので、「自分へサプラ〜イズ!」みたいになります。
金の猫は、布の裏面をメイン使い。
「この布は裏の方が好き」ということも、今日はじめて気づいた。
観察の積み重ねが、仕事で活きることも
このやり方は〆切仕事にはあまり向きません。
観察がいつ実を結ぶかわからないからです。
そもそも、最悪刺繍できなくても別にいいんです。
素材がステキでつい見ちゃうんだから。
でも、普段常に「この素材なんか見ちゃう…」を走らせておくと、タイミングがあった時にバチっと仕事で活きるときがあって、そのうれしさはちょっと言葉にできません。
見ているだけでそのまま数時間過ぎることもあって、さすがに何もしなかった…と虚無に包まれることもあるのですが、いつと約束されているものでもないから仕方ないのです。
(と言い聞かせる日々です)
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