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坂口という男

我々Smart City戦略室に、坂口という男がいる。本日リリースした西日本鉄道とのDX協定の仕掛け人だ。

もちろん両社の思惑が合致して協定締結に至ったわけだが、例えるならば戦国時代に新興の小国が伝統の大国と対等の条件で盟を結んだ将のような、それが今回の坂口の武功である。

坂口との出会いは3年前にさかのぼる。中途採用の面接だ。彼は福岡の広告代理店で働いていた。
当時、僕はLINE Fukuokaの経営企画マネージャーとして、LINE Fukuokaの新規事業としてスマートシティに取り組むか否かを検討していた。
まだ正式に組織設立に至っていない、やらない可能性すらあったが、彼は僕が考えている構想を目をキラキラ輝かせて聞いていた。

印象的だったのは「自分はとにかく面白そうな案件に積極的に携わり、"爪あとを残したい"」と言っていたこと。
そうして彼は去り際になぜか名刺交換を求め(後にも先にも面接で名刺交換してきたのは彼だけである)、見事に僕の脳裏に爪あとを残した。
その後、メールやTwitterのDMで連絡をしてきたような積極性や主体性(こっちが若干引くくらいの)を評価し、それから地場でのネットワークに期待を寄せ、内定を出した。

LINE Fukuokaに入社後、Smart Governmentチーム(当時の組織名)に配属し、福岡市との協業案件を担当してもらった。彼の積極性が自治体の意思決定を早めてくれることに期待したからだ。
ところが入社後の彼は意外にもおとなしく、それから数ヶ月間目立った実績を出せていない。

そんな彼が頭角を表したのが、G20福岡 財務大臣・中央銀行総裁会議のゲストおもてなし企画である。
福岡を訪れた人に、福岡の街を便利に楽しんでもらう、いわば観光やMaaSに紐づく取組みである。

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このプロジェクトは単にシステムの開発だけでなく緻密なオペレーションの設計や多方面のステークホルダーとの調整など難易度が高かったが主体的にやり切ってくれた。それによって組織内での存在感が一気に上がったと思う。
しかしこの頃から、坂口はおかしなことを言うようになった。

「MaaSマンに、俺はなる!」


・・・どうした坂口。

と、また一瞬引きそうになったが、その後の坂口の凄まじい行動を見て腑に落ちた。

・西鉄さんやJR九州さんなど地場の交通事業者と会いまくる
・MaaSの権威が集まるイベントに参加するため北海道へ
・福岡でMaaSアプリ「my route」の話を聞きに東京のトヨタさんへ

そういう行動力の果てに生まれたのが、この仕事だ。

電動キックボードのmobbyさんと一緒にLINEで借りられるシステムを開発し、九州大学のキャンパスで実証実験。
着実に、MaaSマンへの道を歩み始めた。この頃すでに坂口はSmart Paymentチーム(現 共創推進チーム)に異動している。

その後も観光・MaaS関連の取組みをいくつかリリースしているが、

最も象徴的な成果となったのが、西鉄さんとの「混雑状況の見える化」のプロジェクトだ。

これは緊急事態宣言解除の直後、移動することへの不安を感じる市民のために「混雑状況を確認し密を避けながら電車やバスに乗る」ことを促すのが目的。西鉄さんもLINE Fukuokaも速やかに意思決定を行い、わずか8日でリリースに至った。
安心安全な移動に不安を感じていた市民の一助となり、リリースから10ヶ月で累計10万回以上利用されている。

このプロジェクトから
◉福岡というコンパクトな経済界ならではの速やかな連携
◉地場企業の、福岡の街への強い思い
これらの示唆を得て、地場企業10社とのFukuoka Smart City Community設立や、今回の西鉄さんとの協定締結につながっていく。


僕は坂口という男の凄さを、以下のように感じている。

個人の好奇心を起点とした凄まじい行動力

やりたいことを実現するまでやり続ける忍耐力


実はこれらは良い結果につながるための「Planned Happenstance Theory(
計画的偶発性理論)」として整理されている。

要約すると、実は良いキャリア・良い仕事とは"机上で緻密に練られた計画"ではなく"良い偶然を生み出す計画"が必要だということ。

良い偶然を生み出すために必要なのは、
・好奇心
・持続性
・柔軟性
・楽観性
・冒険心

まさに、坂口という男を象徴するキーワードである。


今回このようなnoteを書いた理由は、坂口への敬意と感謝を伝えるとともに、これから新しいことにチャレンジしようとする若いビジネスパーソンや学生さんのロールモデルとして参考にしていただきたいと考えたからだ。

西鉄さんとの取組みはここからが本当のスタートになるわけだが、ぜひ引き続きプロジェクトそのものやそれを牽引する坂口という男の動きに注目してほしい。


中途採用の面接で「自分はとにかく面白そうな案件に積極的に携わり、"爪あとを残したい"」と言っていた坂口。

あれから3年が経ち、彼はついに福岡の街に大きな爪あとを残した。

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