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Killers in the Sky第二章 "Lose my voice"

ガールズ・スチーム・メタル楽団FATE GEARによるコンセプトアルバム「Killers in the Sky」の第二章です。(第一章はこちら)
サブスク配信とともにお楽しみください。

なお歌詞の掲載を省略している代わりに、
CDブックレットにはない解説付きでお届けします。

第二章 "Lose my voice"

「はぁぁ…どうしたもんか。想定外すぎる答えが返ってきやがった!
女の不正入隊、そして味方の殺害。本来ならこの場で死刑にするが…
お前、歳は?」
 
「…15です。」
 
「殺された3名の傷を見たが、それぞれ一撃で仕留めたな?
若くしてその手腕、戦力として失うにはあまりに惜しい…」
 
ラカム教官が考え込んだところで、俺は切り出した。
 
「あの…それなら、俺を正規軍に入れてください!」
 
 
「父は身体が不自由で、母は幼い妹と父の世話で手一杯…
極貧でまともな生活が出来ず…
兵士になれば国から給付が出るので、長らく男子として育てられてここへ。
 
俺が…父の代わりに強くなって家族を守り、
父の代わりに稼いで家族を養っていかないと駄目なんです!!」
 

しばしの沈黙が流れる。
 
1人の少女が男性として生き、
父親代わりになって家族を支えていこうとしている事実に、
ラカムは人生最大の衝撃を受けた…と、あとあと本人から聞いた。
 
「…事情は理解した。
だが、お前のその甲高い声だとまた女だってバレるのは時間の問題…」
 
「それなら、こうします。」
 
俺は隠し持っていた細い暗器で自分の縄を解くと、
その暗器を呑み込むように自分の喉の奥を繰り返し刺した。
 
「おい、何をやってるんだ?!」
 
「がはっ…こ…れで…なんとか…!」
 
「わかった、わかったからもうやめろ!」
 
俺は自分の声を男のように聞かせるため、わざと自分の声帯を傷つけた。
もう二度と、元の声には戻らないと承知の上で…
 
 
「まったく、しょうがねぇなぁ。
実は俺の本職は教官じゃあなくて、インビンシブルという戦艦の士官だ。
監査も兼ねてこっちに来てたのさ。
 
そろそろ艦に戻ろうかと思ってたとこだ。お前も来い。
今回の件は事故ということで誤魔化しておく。」 
 
「え…いいん…ですか?ゴホッ」
 
「暫く喋るのはやめとけ。
さて、インビンシブルは海空両用の戦艦だ。
空中、海上、さらに船内を想定した戦闘訓練と、課題は山積みだ。
覚悟はいいだろうな?」
 
滲み出てくる血を飲み込みながら、俺はうなずいた。
 

解説

今作のキャッチコピー「その少女は『声』を捨て、戦うことを選んだ―」の意味が分かる大事な曲です。

まさかの『声』(物理)を捨てるということだったんですね。

荊さんの少女ボイスと、
NANAさんのデスボイスを起用した理由がここにあります。

なおラカムの口癖「どうしたもんか」は私の心の中の口癖です(笑)

第三章へ続く!


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