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詩「すべてのきみは春の」

「手水鉢のところの」
うん
「手水鉢のところの水さ」
うん
「飲んじゃいけなかったんだ」
そうなのか
気がついた頃には風にまでなってる
きみの言葉の一片に触れた
「足水鉢って言葉があったら、きみはなんて読みたい?」
ふっずばち、とか、付かない格好をつけてみる
(特段格好良くはない)
そこかしこのアルバムの紙片に吐息で
テープ貼りを続ける
だまり続ける手水鉢の中に
身の程知らずの小豆
としての右足先を入れていく
腿が、膝が、脹脛が溶け生える
春日協奏としての 深呼吸

学生が住んでいた家の匂い
街に流れる
この季節特有のもの
枯れない若草と
酸味しか出ない漬けた梅
導火する生命線のカーブにへばりつく手手汗汗
街はいつまでもゴー・サインを出し続ける
使わない横断旗を持ち続ける名も
知らない案山子のような郷愁の好々爺に
手をふる カートインした
小さな男の子と
少し大きな女の子
抱きしめた

※海風に裏打ちされた、大きな坂のある道でした。一番酸っぱい砂利と一番甘い野良犬のしょんべんを点・点結ぶとそこがきみのもう忘れた旧家です。

レンズで海をきみに浸して
髪の毛からはじめて
ファイリングすると
みようみまねの北風が
めくる
めく
スタートのゴールテープをとばして
祝福はやすくぬるい昼の水滴
すべてのきみは春の
お手本かなと思った












すきです。



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