詩「よかったです」
路傍の缶の六年目、桜を見ることができたのはあなたがあの夜酔いにまかせてわたしを思い切り蹴
り 飛ばしたからです。視界のずっと外にあったそれに、吐露すれば憧れていたと言えるでしょう。と言って何ができるわけでもなく錆びていく身体を感じながら寝そべっていました。
みなさん春は温かいですね。
冷めやすいわたしですが、春は一番心地よい。水の音がする。車が、走っています。口がひとつしかなかったところに、今は複数空に向かって裂け目が広がっています。これはこれで清々しいような。
ところで口が複数になってしまったから水どころか秘密も漏らしかねないわたしですが、先日自転車を押してふたり並んで歩いた女の子、やああなたです、やあ、あなたです。大丈夫です。隣の女の子はあなたのことをわかっています。鋭利な桜が咲きます。と。怪我もまた味。お互いに。と。小さな男の子の声が聞こえます。手のひらに花。おや。もう少しとどまっていたいような気もしたのですが、そうですか。終の棲家がかわったようです。願うものなど。
放っておかれて気ままに過ごし、大きなものに蹴飛ばされて、小さなものに導かれて。
桜を見られて。
のほほん系。
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