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高校生向け短期集中日本文学史#1 (明治期の流れ) 全5回

文学史は地味にながら意外と定期テストで出題されて特典源になることも多いです。そのような文学史について素早く勉強をする全5回のシリーズ記事です。

次の文章は明治時代の文学について説明したものです。語群を参考にして、空所①~⑦に当てはまる語句を解答しなさい。

 日本の近現代文学の萌芽を考えるに当たって、旧文学観を排除して世態・人情の写実を解いた( ① )の坪内逍遥の写実主義の提唱は見逃せない。また(①)とほぼ同時期に言文一致の実践を行なった二葉亭四迷の( ② )も近現代文学の萌芽を考えるにあたって重要な作品の一つである。
 このような近現代文学の萌芽のきっかけの一つには西洋からの文化の流入が挙げられる。そのような流入に対して、明治二〇年代に二つの大きな文学の主義が生まれる。一つは欧化熱に対して否定的な擬古典主義がある。その擬古典主義の代表的な作家として、尾崎紅葉・幸田露伴・樋口一葉がいる。樋口一葉は明治の女流文学の第一人者であり、代表的な作品には( ③ )がある。また幸田露伴の( ④ )は、名匠気質を描いた作品として良く知られている。
 擬古典主義に対して、比較的欧化に賛同的な主義として浪漫主義がある。これはヨーロッパで流行していた、romanticismに由来するものである。浪漫主義の代表的な作家としては森鴎外や北村透谷や島崎藤村がいる。例えば、『厭世詩家と女性』の恋愛観により、当時の青年を感動させ、新しい精神世代の出発を促した人物として知られる、北村透谷は『内部生命論』や( ⑤ )などの評論で、日本の浪漫主義運動の先駆者として活躍した。
 擬古典主義と浪漫主義の後、文壇を席巻したのが自然主義である。日本の自然主義は、西洋での自然主義の流行を受けつつも、既存の浪漫主義から生まれたものである。そのため、自然主義の発端は浪漫主義の作家であった島崎藤村の( ⑥ )であった。(⑥)は社会小説的側面と自己告白小説的側面を持つ作品であり、多くの評論家に絶賛された。しかし、社会性は深められず、藤村は自伝的な小説家としての道を辿ることになった。また、自然を愛した国木田独歩は、詩情豊かな( ⑦ )や『忘れえぬ人々』などで叙情詩人らしい資質を示した。

語群
『破戒』/『蒲団』/『若菜集』/『舞姫』/『高野聖』/『不如帰』/『人生に相渉るとは何の謂ぞ』/『五重塔』/『たけくらべ』/『金色夜叉』/『浮雲』/『小説神髄』/『安愚楽鍋』/『武蔵野』/『こころ』/『高瀬舟』/『羅生門』/『放浪記』/『鼻』

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解答
①『小説神髄』②『浮雲』③『たけくらべ』④『五重塔』
⑤『人生に相渉るとは何の謂ぞ』⑥『破戒』⑦『武蔵野』

解説
①坪内逍遥とあるので、坪内逍遥の代表的な文学理論書である『小説神髄』を選ぶ。なお、『小説神髄』では西洋文学を学んだ成果が見られ、近代文学の礎と呼ぶに足る作品であるが、その理論を体現しようとした『当世書生気質』は完全に江戸時代の文学となってしまい、実践は失敗したことで知られている。
②坪内逍遥が失敗した近代文学の作品を成功させたのが二葉亭四迷である。そして、二葉亭四迷の代表作と言えば『浮雲』である。なお、二葉亭四迷は父親に「お前なんか、くたばってしめえい」と言われたのをもじって付けた名前である。
③お札でもお馴染みの樋口一葉の代表作には『たけくらべ』と『にごりえ』がある。
④幸田露伴の代表作には『風流仏』と『五重塔』がある。
⑤北村透谷の代表作には『人生に相渉るとは何の謂ぞ』と『内部生命論』がある。恋愛を日本に輸入した透谷は恋愛のために死ぬと呼ばれるほど恋愛が関わる人物である。
⑥島崎藤村の代表作には『破戒』と『若菜集』と『夜明け前』がある。最も有名な作品は『破戒』であり、今回の説明にも合致する。『若菜集』は浪漫主義を代表する詩集であるが、そもそも小説ではないため今回の説明には合致しない。『夜明け前』は藤村の晩年の歴史小説である。
⑦国木田独歩の代表作には『武蔵野』がある。

選択肢
『蒲団』は田山花袋、『舞姫』と『高瀬舟』は森鴎外、『高野聖』は泉鏡花、『不如帰』は徳富蘆花、『金色夜叉』は尾崎紅葉、『安愚楽鍋』は仮名垣魯文、『こころ』は夏目漱石、『羅生門』と『鼻』は芥川龍之介、『放浪記』は林芙美子の代表作であり、全て押さえておきたい。

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