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「~の件で、部長と会話しました」はITスラング?#話し方

元日本語教師で、今はIT企業で人事をしてます。

入社以来ずっと気になっているこの言い方。

「~の件で、部長と会話しました」

社内チャットで、情報を共有する時によく使われていて、このあとに、その「会話内容」が続くことが多い。初めて見た時「いや、会話しました、って!そんな仰々しい…!」って、瞬間的に感じたんだけれど、ぞわぞわさせられているのは私だけのようで、エンジニアだけでなく、人事の同僚たちも平然と使っています。違和感を感じているのは私だけ???「なんか変じゃない?」って言いたいけど、言えないでいます。

「会話する」は3グループの動詞、目的語には「(だれだれ)と」とか「(話題)について・のことを」とかを取れるので、文法的には間違ってはいないけど、どうして気持ち悪いんだろう…

「~の件で、部長と話しました。」は違和感なし。だとすると、「会話する」が違和感の元なんですよね。そもそも「会話する」って、身近な普段の行動を描写するときに使うんだろうか?自然にどういう時に使われているか、ちょっと思いつくままに書き出してみましょう…

・(動物の生態に迫る番組の解説で)「見てください、高い声で鳴いて、オスとメスが会話しているようです。」
・(夫婦関係を尋ねられて)「うちはもう冷め切ってて、会話することもないよ。」
・(オンラインチャットツールの宣伝文句)「オンラインでもストレスフリーに会話できます」

ざっと見ると、どれもちょっと自動詞的な使われ方のような印象ですね。「鳥が飛んでいる」とか「犬が走ってる」みたいな感じの「AとBが会話している」的な、描写っぽい使われ方だと不自然じゃないのかもしれないですね。

じゃあ、自分の行為で使うから違和感なのか?うーん…例えば

・昨日、主人と会話しました。???

うん、これは普通の文脈では変。「いや、会話って…そんな大層な言い方しなくたって…、もしかして会話してないの?普段?」ってなりますね。でも、

・昨日、主人と1週間ぶりに会話しました。

これはそんなに変じゃない気がします。きっと、2人の関係はすごくこじれてて、会話することさえ“大層なこと”だったんだろうな、と想像できれば。

(国際結婚の夫婦が)うちは英語で話してるよ
(国際結婚の夫婦が)うちは英語で会話してるよ

この2つの「会話する」も許容範囲でしょうか。「国際結婚」「英語」という背景があって、ここで話されてる「会話」そのもののちょっとしたイレギュラー感が効いてるのでしょうか。

ちょっと整理すると、「会話する」は第三者の行為や見た光景などの説明時に自動詞っぽく使われるが、自分の行為に使う時は、いわゆる普通の「話す」に比べて「“イレギュラー“な話す」である場合に使われることが多そうです。だから、標題の「部長と会話しました」に違和感を感じたわけですね。

おぉ!ということは、わざと使ってる可能性もありますね。

「部長と話しました」→ 普通に世間話した、挨拶した、いつものように話した
「部長と会話しました」→ 挨拶や世間話じゃない、いつもじゃない話をした、でも、MTG(会議)ではなくあくまでも「話した」の範疇

会議したわけじゃないので「部長とMTGしました」とは言えない。普通に話したというよりは何かの件について、大事なことを話した、ということを示すために、もしかしてわざわざ選んで使っている表現だったのではないだろうか?なるほど。

と、いうわけで、こんな考察にたどり着きました!ただ、ITスラングかどうかはちょっと不明です。うちの会社も使ってます!って方いれば、ぜひ教えてください。

はい、今日のところはこんな話でした。こういう分析作業は本当に楽しいです。時間に追われていない時はw






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