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大金の使い途。

私が自室で いつものように書き物をしていると、

こんこん。とドアがノックされ、
「ねぇ、みー、入っていい?」

ドア越しの少しくぐもった声だったが、クリスだとすぐに分かった。
私は「どうぞ~」と返し、書きかけのものを脇に寄せた。

おじゃまします。と入ってきたクリスを、「そこ どうぞ」と
部屋の真ん中の来客用ソファへといざない、私もその向かい側に座った。

私「どしたん?」

ク「例の 4000Gの使い途のことで。」

私「ああ。決まったん?」

ク「うん、一応。」

私「ほう。で、どうしたい?」

ク「みー に預ける。」

私「え?」

ク「みー に預けて、あたしたちの行動が少しでも有利に働く何かに
換えて欲しい。」

私「うーん。曖昧すぎるねぇ。もっと具体的に言うと?」

ク「あの時……。
あの、酒場のマスターまでの『あと一歩』が届かなかった。」

私「……ああ。
(クリスが言っているのは、ディナーにされそうになっている
 ガチョウたちを助けた、招待クエストのことだ。あれは……)
結果的に成功したハズ。なぜ?」

ク「くやしかった!あと一歩だったんだ!!あと一歩マスターに
接していたら、あたしがトドメの一撃を入れられていたのに!」どん!

クリスはテーブルを両の拳で殴りつけ、俯いて肩を震わせた。
(うん……でも、トドメって……苦笑 届かなくて幸運だった気がする。)

私「まぁ、落ち着いて。さ、お茶でも飲もう。レモンティーでイイ?」
クリスは ぐしゃぐしゃの顔を上げて、鼻をすすりながら「う゛ん゛」
と頷いた。

ふたり「ずず……。ふぅ。」
私「……つまり、あの時の場合で言ったら、あと一歩が届くような『何か』を、このお金で Get したいと?」

ク「まぁ、そうなるのかな。でも、急がないし、
どんなのがあるのか分からないから、みー に預けておきたい。」

私「なるほど。ふむ……。」
少し考えながらレモンティーをもう一口飲む。
レモンの風味が口いっぱいに広がり、
アタマの片隅の記憶を手繰り寄せてくれる。

私「この世界のどこかにね、」
ク「うん。」
私「ウィングブーツってのがあって、」
ク「ほぅ?」
私「空を飛べるらしいんだ。」
ク「なんと!!」
私「なので、それを探す旅に出ようか。4000Gは旅の資金。どう?」

ク「はぁぁ……。」
クリスは一転、息を整え、今までの浮ついた雰囲気を殺した。
こういうトコロは、さすが、ローグとは言え武道の心得を知る者
って感じがして好き。

ク「いったん みんなに訊いてみる。
 今日はありがとう。おやすみ。」

私「うん、またね。」

次回予定、経験点の取得についての説明会だった気がするけど、
もうこのまま実戦経験積むお話になりそうだ。
さぁ、忙しくなるぞ🎶✨(終)

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あとがき

プライドの高いクリスティーナの名誉のためには、
絶対にこんな内容にすべきでなかったと断言できますが、
あまりに彼女が可愛くて! ごめんクリス😆✨
いや珍しい一面が見れたなぁ😊

さて、近々 4人の冒険が始まることになりましたが、
クリスの報告を受けて、あとの 3人はどんな反応を見せるのか?
また、最初の冒険すらいむ工房・ぱーる屋さん)から
この街・ギルデンスターンで仕事をしている間に稼いだ経験で
どれだけレベルが上がるのか?どんなスキルを身に付けるのか?

よろしければ、今年も Maverick を、どうかよろしくおねがいします😌✨

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