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『開幕前夜』第23話「逆さまの蝶」

 うん?

それがし……いまなにを……?

………………
…………
……

「おいおい……これ程とは……?」

【夢降る森】でいつもの御役目。

怪火現象、狐火(きつねび)が数百。

和歌市の有志の者達と、

いつもすまなそうに見ている✕✕と✕✕。

二人のその顔が、

それがしに充実を練らせてくれる。

そなたらの力は強力だが、諸刃だからな……。

そなたらに、まわしてたまるものかっ!

それがしも、成長しているのだ。

………………
…………
……

狐火自体は強力な妖とはならぬ。

しかし……、

増えていくこと自体が障りを招く。

牛鬼(うしおに)など複数障ったら、

もう、それがしだけではお手上げだ。

だからこそ小火で食い止める。

「“鼎”! 覚えたてだが降ろすぞっ」

………………
…………
……

 間合いさえとれば、狐火に害は無い。

……気合いを伝え鼎に充分。

それぞれの者達が、

それぞれの能力を行使し始める。

………………
…………
……

「同胞よ。『饕餮(とうてつ)』の名のもと、希う」

言の葉降ろし、

「吼えろっ! …………“蒲牢(ほろう)”」

ゆらぎはゆらぎで相殺せん。

鼎は打突や斬撃の能力もあるが、

本来は、薙ぎ、祓う、為に在り。

………………
…………
……

……恋……というものなんだろう……か?

それがしが?

柄にもなく。

✕✕も✕✕も喜んでくれていた。

「頑張って」……、

そう言ってくれた。

違う……とも言えぬし……心が……揺らぐ。

……それがしは、まだ……こんなに、弱い。

 運ばれた命……より、

あらかじめ宿っていた命。

宿命なんだ。

姫君との出逢いは……。

定まりを、定まりで、終えた事。

それがしに確かに在るもの。

「このお方を護る」

 澄み切った空に、

憎しみの火が灯り始めている。

蒼き心に紅き情熱。

白き雲に赤き鮮血。

なぜだか、

とても、

美しいではないか。

しかし仕える者として、

こちらも小火で食い止めねばな。

もう一度、

「姫君は、それがしが、護るっ!」

孤独の風が凪いでいく。

心地が良い……。

狐火が教えてくれる。

明日はきっと、“狐の嫁入り”。

………………
…………
……

「姫君、そこが地獄の底だとて、この✕✕✕✕は、お供させて頂きます」

いつまでも、

逆さまにとぶ、蝶とともに。



 こころがきちんとせいりされていれば、
しはおそれるものにあらず。
ゆえに、しぬこととみつけたり。




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