札幌在住40代会社員が住宅購入を機に積み立て投資を開始。家族4人でNISAとiDeCoを活用しながら思い出を積み重ねている話
コツコツ投資家さんインタビュー、今回はブログ「低コストの投資信託で資産形成| LoLo Investors」を運営する、北海道札幌市在住なるたくさん(48歳)のストーリーです。3月上旬になるたくさんの元を訪れたときは、一面、雪、雪、雪。東京暮らしの私は「時間を遅らせたほうがよいですか?」とメッセージを送ってしまいましたが、なるたくさん、私よりも早く待ち合わせ場所に到着されてました(笑)。さすがに雪に慣れています。
2012年5月から投資信託の積み立て投資を続けている、なるたくさんに、投資スタイルの変遷などを詳しくうかがいました。
きっかけは住宅購入で貯蓄がなくなったこと
――なるたくさんが投資を始めたきっかけから教えてください。
なるたく:もともと給与天引きでお給料の2~3割は貯蓄に回していたので、まとまった預金はありました。ただ、マンションを購入するときの頭金にあてたため、預金がほとんどなくなってしまいました。
加えて、職場が変わって、お給料も少し減ったので、資産形成ができる方法はないだろうか、と考え始めたのがきっかけです。
――それはいつ頃ですか。初めにどんな行動をしましたか。
なるたく:2011年(36歳)頃ですね。最初はインターネットでいろいろ調べました。調べているうちに、インデックス運用の投資信託で積み立て投資をするという方法があることを知りました。どうやら、毎月一定額を積み立てて、数十年後を目標に投資を続けるというもののようでした。負けにくい投資として紹介されていました。
ただ、積み立て投資に興味を持ったものの、やり方がよくわからない日々が続き、なかなか前に進めませんでした。
――なるほど。そこからどうやって前に進むことができたのですか。
なるたく:書店でさまざまな本を手に取って、手当たり次第に読みました。当時、いちばん参考になったのはファイナンシャル・プランナー(FP)カン・チュンドさんの『忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術』(明日香出版社、2009年)です。
本に書いてある通りにネット証券で口座をつくり、ポートフォリオの組み方を参考にしました。この本に出会えたことは投資をはじめる大きなきっかけになりました。
いろんな人のブログを読んだことも大きいです。たとえば、水瀬ケンイチさんのブログ「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー」は、どんな商品を買っているか、実践した場合にどうなるのかなどが書いてあって、参考になりました。投資のイベントでお会いしたときは、本当に実在するんだと感動しました(笑)。
――おひとりでネット証券で口座を開設して、投資信託の積み立てをはじめたわけですね。
なるたく:はい。セミナーに参加したり、金融機関やFPに相談したりはしていません。そもそも札幌ではセミナーはほとんどなかったですし…。かといって、友人ともお金の話はしにくいので、ひとりで考えて行動しました。
毎月6000円から積み立て投資をスタート
なるたく:投資を始める前は、損をすることは怖いと思っていたので、月々6000円から積み立て投資を始めました。それくらいの金額なら、減っても耐えられるかな、と思いまして。妻には黙って始めました。
始めてから、損益がマイナスになっていた時期もありますが、最初の頃は投資金額も少ないので耐えられました。1年くらい続けるうちに、体感としてわかってくるというか、値動きにも慣れてきました。そこから、少しずつ積み立て金額をふやしていきました。
怖いという気持ちはやってみないとわからないものなので、少額からでも投資を始めてみるのがいいと思います。最初の一歩を踏み出せるかどうかが大きな違いになると思います。
投資スタイルの変遷
――現在の投資スタイルにたどり着くまでに、どんな変遷があったのでしょうか。
なるたく:ずっとインデックスファンドを中心に積み立てをしていますが、思い返すと、大きく3つの時期に分けられるかもしれません。
第1段階は、自分の証券口座のみで投資をスタートした時期です。当時は全世界株式のインデックスファンドといった便利なものはなかったので、全世界に投資することを心がけて、国内株式、先進国株式、新興国株式、国内債券、先進国債券の5つのインデックスファンドに積み立てをしました。
資産配分(アセットアロケーション)は、日本株式10%、先進国株式40%、新興国株式20%、先進国債券10%、日本債券20%です。日本債券クラスは、その後に個人向け国債(変動10年)に変更して、株式と債券の割合を7対3にする方式に落ち着きました。
どの資産クラスが伸びるかよくわからないので、株式のインデックスファンドを世界に分散して買うことにしました。そのおかげで、それぞれの値動きに違いがあることも実感としてわかるようになりました。
債券クラスを組み込んだのは、リスク(値動きの振れ幅)を軽減する意味が大きいです。投資をはじめた当初は怖いと思っていたので、精神的な安定感を求めました。
家族で税優遇のある口座を活用
――次に、第2期に移行するわけですね。
なるたく:はい。第2段階では、自分だけでなく、妻や子どもを含め、家族全体で非課税口座を大きく活用していくことを意識するようになりました。
妻はつみたてNISAが始まった2018年に口座を開設。先進国株式と新興国株式のインデックスファンドを積み立てています。
子どもはジュニアNISAがスタートした2016年から積み立て投資を始めました。子どもは将来的に証券口座をそのまま渡すことも考えられるので、先進国株式、新興国株式、日本株式をそれぞれ6対3対1の割合で購入していきました。
そうしておけば、資産によって増え方が違うことが後からでもわかりますよね。子どもたちが理解できるようになったら、それぞれの資産クラスで値動きが違うことを伝えるのに良いかな、と思ったからです。
――ジュニアNISA口座は2023年で廃止になりましたが、この後、お子さんの口座はどうされる予定ですか。
なるたく:2024年以降は新規の積み立てはせず、ジュニアNISA口座で購入した商品をそのまま運用していく予定です。教育費は投資してきたお金と預貯金などで準備しようと思います。
ジュニアNISA口座で運用している分は、大学に行く時に使うかもしれませんし、そのまま子どもが運用を続けるかもしれません。学費がどの程度かかるかは進路次第でしょうが、ふたりともまだ小学生なので、正直わからないです。
あと、自分は、2017年の対象者拡大でiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入できるようになったので、iDeCoに加入をしました。iDeCoでは「たわらノーロード先進国株式」を積み立てています。ただ、口座開設には苦労しました。書類不備だと言われて、人事部と書類を何度か往復したり…。手続きは簡素化してほしいですね。
――自分だけでなく、家族全体で税優遇のある制度を積極的に使っていこうという方針になったわけですね。最後の第3期ではどう変わったのでしょうか。
なるたく:第3段階は2024年、つい最近になります。2024年にNISAが新しくなって、低コストの全世界株式のインデックスファンドも登場しました。そこで、今まで購入したものは維持したまま、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」1本を積み立てるスタイルに切り替えました。妻も同じです。
保有中にかかる運用管理費用(信託報酬)が圧倒的に安いことと、リバランスなどを考えずに買い続けられることが大きな理由です。また、先日亡くなった経済評論家の山崎元さんがeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を購入して、シンプルに続けることを推奨していたのも、購入商品を切り替えた理由の1つです
昔買った商品は、住宅ローンの繰り上げ返済をした時などに、解約して、整理しました。住宅ローンは完済したので、積み立て額は若干ふやしています。
――投資をやめようと思ったことはありますか。
なるたく:特にないですね。お金が必要になったとき、例えば、車を買い替える時などには、一部投資信託を解約して使うこともありましたが…。解約したあとに普通預金に置いておいても仕方がないので。
子どものことを含め、急にお金が必要になることもあるので、生活防衛資金として銀行(楽天銀行と地方銀行)に金融資産の30%程度はおいています。それ以外は投資に回すようにしてます。
家族との対話
――家計管理はだれが担当しているのですか。
なるたく:家計管理は基本ボクですね。家族の資産などもだいたい把握していますし、妻や子供が口座開設するときもサポートしました。みんな同じ楽天証券にしています。
――ご夫婦で資産形成をするとき、どんなことに気をつけていますか。
なるたく:妻にも社会で活躍してほしいので、働くことをすすめたところ、4~5年ほど前から正社員として働くようになりました。1人で家計を支えていたのが、ふたりで稼ぐようになり、安心感が増しました。
その代わり、家ではルンバや全自動洗濯機、食洗機、ホットクックと、時短につながる家電は最大限活用しています。時短家電は導入するときにはお金がかかりますが、時間を買うのと同じなので、すごくいいです。ホットクックも便利。下手に自分で作るより美味しいことが多いです(笑)。家事は効率を大事にして、夫婦で協力してやっています。
――我が家は食洗機も、ホットクックもまだないです(苦笑)
なるたく:共働きでしたら、ホットクックはぜひ!
お金の使い方
――お金の使い方で何かこだわりはありますか。
なるたく:積み立てる金額だけ決めて、それ以外は普通に使っています。
心がけているのは、経験にお金を使うことです。『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著・ダイヤモンド社、2020年)を読んで、躊躇なく、経験にお金を使えるようになりました。結局最後に残るのは、幸せや思い出だよな、と。自分や家族の経験にお金をかけるようにしています。
子どもたち2人はピアノを習っていて、楽しんでいるようです。発表会でピアノを弾いている姿をみると、子どもの成長に驚きます。ピアノの購入や2人のレッスン代、衣装代などを合わせると結構な金額になりますが、夫婦で「これも推し活だね」と話して、納得するようにしています。
家族でスキーも楽しんでいます。子どもの道具は数年で買い換えですし、学校の授業でも使うので、北海道ではスキー代が結構かかります。家族4人でスキーに行くと、リフト代だけでもそれなりの金額になりますが、子どもが小さい今しか経験できないことがあると思うので、積極的に行くようにしています。
あとは、マンションの壁一面を本棚にしました。家は嫌いではないので、80歳になっても、家で読書していたいです。
――投資にどれくらい時間をかけていますか。
なるたく:ほとんど時間をかけていません。最初は気になって、口座にログインして、毎日見てましたが、最近はほとんど見なくなりました(笑)。
投資してよかったこと
――改めて投資をしてきてよかったと思いますか。投資以外に何かリターンを得られましたか?
なるたく:当初から一貫している考え方としては、投資はあくまで資産形成の手段であって、本業や自分の生き方に影響が出ないようにしたい、ということです。
将来的なお金の不安はなくなりました。この調子でいけば、なんとかなるだろうという見通しを持てたことは、精神的な安定につながっています。今、仕事は面白いと思っていますが、嫌になったらいつでも辞められる、と思えるのは精神的にラクですよね。
――お友だちとお金の話をすることはありますか。
なるたく:新NISAも始まり、友人で興味を持つ人もふえていますが、始めるのはハードルが高そうです。職場の飲み会でもその話題になったんですが、自分が投資をしていることがわかると「そんなに危ないことやっているの?」という雰囲気になりかけました。みんな株式会社に勤めているんですけどね(苦笑)。
――株式に投資するインデックスファンドも、株価指数に投資しているわけではなく、その先の会社に投資しているわけですからね。
なるたく:そうなんです。投資することは経済に貢献すること、いいことだと感じられるとよいですよね。みんな、もっと投資をしてもいいのにな、と思います。
――ゴールはどこにおいていますか。
なるたく:金額的なゴールはおいていません。資産配分は保守的に変更するかもしれませんが、投資自体はこのまま一生続けるだろうと思っています。
編集後記
4年半ぶりの北海道は寒かったですが、楽しいお話をうかがうことができました。
家族の幸せの総和
「資産形成は手段」というお話をされていたように、家族でいろんな経験をすることに使う、幸せの総和をふやすことを心がけているのは、素敵だな、と思いました。資産形成についても同様で、ひとりで投資を考えるところから、「夫婦で稼いで収入アップ→家族みんなで資産形成・非課税枠をできるだけ使おう→シンプルな投資へ」というふうに変遷しています。
少額からスタート
ご自身のことを「慎重な性格」という、なるたくさん。投資を始める前は怖いものだと思っていたと言います。そこで、6000円という少額から積み立てをスタートしました。そして、1年程度かけて投資に慣れてから、徐々に投資額をふやしています。最近は「NISAの非課税保有限度額の上限までなるべく早く埋めたほうがよいですか」という質問を受けますが、経済的にも、精神的にも耐えられる金額から始めて、長く続けることが大事です。
投資信託という器を通して会社のオーナーになる
なるたくさんの同僚の方だけでなく、自分は株式会社に勤めていても、株式や(株式に投資する)投資信託に投資するのはこわい、という人は多いようです。NISAのつみたて投資枠で購入できるのは、主に「株式」に投資する投資信託や、「株式」を含むバランス型の投資信託です。成長投資枠では個別株にも投資できます。
株式投資というのは、株式を買って会社のオーナーのひとりになることを意味します。いい会社をみつけて投資をし、長期で株式を保有することで、その会社の成長の果実を分け合う(シェア)わけです。
投資信託を通じて株式に投資をするにしても、長期で資産形成をしていくなら、そこは心にとめておきたいところです。そうでないと、どうしても目先の「価格」ばかり気になってしまいますし、相場が悪くなるとやめたくなってしまうと思うからです。長い目でNISAが普及するためには、単に「利益が非課税になる制度=お得」だけではなく、株式を持つことや、投資をする意味について伝えることも大切だと感じます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました! 今後もコツコツ投資家さんへのインタビュー続けていく予定です。ご意見・感想などがありましたら、お寄せください。取り入れていきたいと思います。
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