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約20年前に男性育休を取った備忘(6)~ハローワークと転職活動~

ぼくが育児休業を取得したのは、今から18年前だ。
曖昧な記憶だが、当時男性で育休を取得したのは、首都圏で労働組合のあるすべての会社で累計で89人しかいなく、ぼくが90人目だった、と記憶している。

今この時代が「こんなに子どもを育てる社会の環境は変わった、良くなった」ということを改めて噛みしめる意味で、18年前の体験を記録しておこうと思う。



ぼくはこの6ヶ月の育児休業の中で、すっかり自分のキャリアのイメージが変化してしまった。
体験した周辺の人の反応。
児童館で出会ったママ友のエピソード。

この国は、あまりにも仕事をしながら子育てをする環境がなってない。
まず自分自身がこの先、現職のスーパーで売り場担当をしながらこの両立ができるのかももちろん不安だった。
そしてなにより、同じような境遇にある人が次々と自分のキャリアを諦めてドロップ・アウトしていく、そういう社会のありように強い強い不安を覚えた。

あまりにももったいない。
このイケてない状況を、絶対打破する。

そして、育休復帰するときにはもう明確に、自身のキャリアを「ワークライフバランスの推進を仕事にしょう」と決めていた。
(まあ、現職が『もういいかな…』と思っていたのも否定はしないけど)

復職してほどなく、ぼくの転職活動は始まった。


まず、自分の仕事と育児の両立


さて、子どもを寝かしつけてから、とりあえずパソコンの前に座ってみたのだが、はたと困った。

「どうやって探すんだ…??」

まず、自分自身が「仕事と子育てが両立できる」職場を探そうとしたわけだが、まず会社の求人が探せない。
検索画面に、そういう絞り込み条件がない。
かろうじて「我社は女性の活躍を大切にしています」「育休取得率○○%(もちろん女性の、だけど)」くらいの文言は見つけられるが、じゃあ具体的になにを推進しているから両立しやすい職場なのか?はまるでピンとこない。
「この会社に入ったら、子どもが熱を出したらお迎えに行ったりするのを温かく認めてくれるのだろうか?」などという情報は、どこにも載っていないのだ。
※ もちろん、面接の場で聞くというのもできないだろうな、というあきらめもあった。あと、この頃に「テレワーク」などという言葉はほぼ存在していないと言っていい。

途中から、仕方がないから「育児そのものを扱う会社だったら、少なくとも両立を支援してくれないということはないのでは?」と、わらにもすがる思いで育児用品メーカーの求人などに迷い込むようにもなっていた。


そうこう迷走しているうちに、ハローワークのサイトにこんなワードが飛び込んできた。


<両立支援ハローワーク>


両立支援…ハローワーク…!!

なあんだ、お上がちゃんと取り組んでくれてんじゃん!!
んもう、もったいぶってくれちゃって~~

ぼくは喜び勇んで<両立支援ハローワーク>をうたう横浜市のハローワークに足を運んだ。


ある夏の日。
ぼくは足取りも軽く横浜市のハローワークの窓口にでかけた。


(以下のやり取りは完全に実話です)

ぼく「あのう、『両立支援ハローワーク』の担当の方にお繋ぎいただきたいんですけど!」
受付「…あ、少々お待ち下さい…」

案内された窓口には、ちょっと困った顔をした係の方がぼくを迎え入れてくれた。

ぼく「ぼくは1歳の子どもがいまして、子育ての両立に理解のある会社を探していてですね、この『両立支援ハローワーク』に来たのですよ」
係「なるほど…ただですね、ハローワークの求人には、お迎えに行きやすいとか、理解があるとか、そういう情報は載らないんですよね…あのう、『子育ての両立がしやすい』っていうのは、具体的にはどんな会社をイメージされていますか?」
ぼく「(そこからかい!!)いや、あの、それはですね…例えば子どもが熱を出したときとか…」
係「ああ、そういうことは求人には載ってないですね…」
ぼく「そうですか~…あ、あとですね、保育園に子どもを預けるので、お迎えに行かなきゃいけないんですよ。ぼくのうちは共働きで、パートナーが仕事が忙しかったらぼくがお迎えに行くので、基本ちゃんと保育園の時間に迎えにいける必要があるんですよ」
係「あ~なるほど、夕方にはお迎えに行くわけですね」
ぼく「そうそう、そうなんです!」
係「あ、そしたら、こちらとかどうですか?」

案内してくれた求人は、3交代制の24時間稼働の工場の求人だった。

(そりゃあ確かに、お迎えには行けるとも(怒)…でもさあ、そういうことじゃなくない??)

ぼくは多少悪態をついて、失意のもとにハローワークをあとにした。


ワークライフバランスの推進を仕事にしたい


このように「自分が仕事と育児の両立ができる会社」を探そうとしてもそんな状態だから、まして「ワークライフバランスの推進を業とする」会社など、全く見つけることができない。

強いて言えば人事…なのか?
それとも、コンサル…?
そう思って求人をさらってみるが、それらしい職種は皆目見当たらない。

そのうちに、ぼくは転職サイトを頼らなくなり、Google先生にそのまま尋ねるようになる。

<子育て 両立 仕事>
<子育て 募集>
<ワークライフバランス 転職>
<ワークライフバランス 求人>

いきあたりばったりにワードを選んで、それらしい企業を探してみるが、もちろん目的の会社にはいきつかない。
(ちなみにこの時、現職はヒットしなかった気がする。ここはヒットしたかも)


こうして、今の仕事にもすっかり意欲はなくなってくる中で、先の見えない自分のキャリアイメージに窮していたぼくは、よくわからない方向に迷走し始めていたかもしれない。
(「そうか、人材業界っていうのも、働きやすさを推進しているというかなんというか、広い意味ではワークライフバランスを推進している会社と言えなくもないのでは?」などと考えて、人材派遣会社を受けたりもしたかもしれない。)

「かもしれない」と書いたのは、
ぼくはこの頃の記憶がちょっとなくなっているからだ。


この頃、転職先が決まっていないのに(正確には『内定をだそうを思う』という面接でのやり取りを真に受けたら、ちょっとした食い違いがあって、実は採用は決まっていない状態だった)退職を決めてしまったぼくは、一時的に無職になっていた。

子どもは1歳。
マンション買ったばっかり。
で、自分は職なし。

この頃、微妙にギクシャクする家の中にあって
「ああ、家族ってこうやって壊れるんだな…」
と肌で感じた期間だった。

もう、この辺の時期は思い出したくないので、記憶もとぎれとぎれになっているんだろう。



NEXT:実際に夫婦で両立させてみたら

※今後このへんのエピソードを上げていく予定です。
もしもご興味ありましたらお話もしますので、お声がけくださいませ。


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