タリーズコーヒーにいた、バスケ部女子のグループの話
グロービスでクリティカルシンキングの講義を取っていたときに、色々々々学んだ中でも一番強く感じたのは「思考のためのツールは、早く、たくさん知っていればいるほどよい」ということだった。
去年、それを象徴する出来事があった。
タリーズコーヒーでオーダーを終えて席を探していると、6人位の女子中学生のグループがいた。
他愛のない話で盛り上がっているというより、真剣に、でも楽しそうに、机の上の一枚の模造紙に注目して、何かを書き込んでいるようだった。
いけないこととはわかりつつ目をやったら
「マインドマップ」をみんなで書いていることがわかった。
マインドマップ
マインドマップとは、
トニー・ブザンが提唱する、思考の表現方法である[1]。頭の中で考えていることを脳内に近い形に描き出すことで、記憶の整理や発想をしやすくするもの(Wikipediaより抜粋)のこと。
ぼくはインストラクターなどではないので詳しい解説は省くけれど、実際に書いたことがあるのと、身近にいるインストラクターの話を聞いたところで感じるのは、複雑に絡み合った問題や課題を枝分かれさせながら図示していって、個人やチームが大切にしていることや、共通認識のあることなどを明らかにしていく手法、だと理解している。
見た目はだいたいこんな感じのもの。
中学生が6人でマインドマップ!?
さらにいけないこととはわかりつつ、そのマップをちょこっと覗いてみたら、タイトルが書かれていた。
そこにはこんな文字が。
「なぜバスケを3年間続けないといけないの?」
この時点でぼくの興味は爆発しそうになったんだけど、もうこのくらいにしないと不審すぎるので、そこはぐっとこらえて、そのグループに付かず離れずの席につくことにした。
(推測)
マインドマップがこのチームにもたらしたもの
※ここからは完全な推測。気持ち悪いと思うけど、お付き合いください。
たぶん「部活を引退まで続けなければいけない」ことの合理的な理由を、タブーを排除して、さらに論理的に(精神論を排除して)突っ込んで考えるという経験は、多くの中学生や教師があまり経験していないだろう。
だから「マインドマップ」という道具を手にしたこのチームが、今までたどり着かなかった思考の霞の上に行けることを、全く縁もゆかりもない自分が期待していた。
その後ややあって聞こえてきたのは、キャプテンらしき一人からの声。細かいところはうろ覚えだが、だいたいこんな話だった。
「もう練習始まるから戻るけど、今から言う4つは『みんなOK』ってことでいいよね?
1! うちらは、人がどう言おうと、続ける価値はあると胸張って言おう
2! でも、他に打ち込みたいことを見つけた子も、それはそれでいい。応援する
3! これを○○(チームメイトの名前かな)私から話す。どうなるかわかんないけど、結果はどっちになってもいい
4! 「頑張って続けるのはいいこと」の理由は、今ははっきりした答えはみつからない
その後、一人から聞こえてきたのは、
「そっか~~…でも切ないな~~」
彼女は泣きながら笑っているようだった。
ぼくはこのとき、(どんなきっかけかわからないが)マインドマップという道具を手にしたことによって、この結論に達したこのチームに、拍手したくてたまらなかったのだ。
ロジカルの鍵を開けた瞬間だったと、勝手に祝福していた。
思考の道具を教育の場に
自分の中高生時代を振り返ってみると「普通に考えたら絶対おかしいのに、なんでこの人達はなんの疑問も持たないんだろう?」ということが山ほどあったように思う。
なぜ中学男子は丸刈り?
なぜ保健体育の授業の内容が男女で異なっている?
なぜ給食は残さず食べなければいけない?
なぜ成績を掲示する?
こんな疑問に、問題自体は解決することができなくても、その根底にあるロジック(誤っているものも含め)にたどり着けていれば、盲目的に理不尽なルールに従って時をやつすことにならず、その抑圧の経験を人生にプラスに役立てることができたんじゃないか、と思うと、なんか悔しい。
また、グループでロジカルシンキングのための道具をなにか知っていて使うことができたら、疑問のいくつかは解決したんじゃないかと思う。
今、高校生になった長男のコンテスト応募資料を添削していても、その思いは強く感じる。
正直、おとなになってから全部の道具を知るのでは、すでにスタートが遅れているようにも思う。
結論
学校の先生を、学卒でいきなり現場に放り込むのはやめて、5年位社会人経験をさせてから教職につくようにしてください。