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枡野浩一『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである:枡野浩一全歌集』左右社

同じ男性の歌人でも、以前読んだ木下龍也さんとはずいぶん違う印象だ。木下さんの凛として優しい歌もいいが、枡野さんの歌はほんとに毎日汗をかいてあがいて生きている男性の歌だ。熱い歌、苦い歌、弱いような強いような歌がある。

本の題名をこの切ない歌にしたのもいいアイディアだ。恋に限らず、何かの夢を持っているがそれがなかなか叶わない人は多いだろう。もどかしく、つらく、でも希望は捨てないで生きている毎日。

いくつか好きな歌を抜き書きします。

 赤ちゃんのうちに手相の矯正をするのにつかう銀製の型

 ビクビクと食うな畜生 ゴミ置き場なんかジャンジャン散らかして食え

 この夢をあきらめるのに必要な「あと一年」を過ごし始める

 どことなく微妙にちがうものだった なくしたものを取り戻しても

 やめようと誓った行きとやめるのをやめようかなと思った帰り

 そのことを忘れるために今はただ小さいことにくよくよしたい

 一歩ずつ来た道だからお別れを言い終わるのに時間がかかる





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