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村上春樹『うずまき猫のみつけかた』新潮文庫

ちょうどツイッター上である記事が話題になっていた。アメリカの大学に村上春樹が来て、授業で質問に答えた(というか、やる気がなくて実質あまり答えなかった)というレポートだった。そのレポートが非常にわかりにくい文章で2度も読み直さないといけなかったが、へぇ、こういうことがあったのかと、それなりに興味深く読んだ。学生からの質問に対して村上があまりやる気がない態度だったので非常に感じが悪かったらしい。また、彼は英語があまりしゃべれなくて、その場にいた日本人(レポートを書いた学生)が通訳しなければならなかったらしい。あとは、なぜか奥さんもそばにいて、ちょっとしゃべっていたらしい。おかしかったのは、大学の先生(村上を呼んでいるのだから日本文学が専門だろう)の日本語がめちゃくちゃ下手で、使い物にならないレベルだったことで、こういう日本語を聞いたら村上さんも脱力してあまり熱心には話ができなかっただろうなと思った。

別に翻訳家だからといって英語がペラペラである必要は全然ないのだが、彼の場合はエッセイ(たとえばこの『うずまき猫のみつけかた』)を読むと、アメリカで何不自由なく、現地の人といかにもナチュラルにしゃれた会話をしているみたいに書かれているので、ちょっと意外だった。以前、英語のスピーチを聞いたときも発音がわりとジャパニーズ・イングリッシュだったので意外に思ったが。英語についてのそういう話はたぶん『やがて哀しき外国語』の方に書いてあるのかもしれない。っていうか、たしかわたしは『やがて』を読んだことがあるはずだぞ。でも内容をさっぱり覚えていないのだった。

それはともかく、『うずまき猫のみつけかた』である。この本は『ねじまき鳥クロニクル』を執筆していたときに気晴らしに書いたエッセイで、とにかくゆるい。ゆるゆるで、村上さんはアメリカの猫について書いたりするほか、5ページに1回ぐらいは「冷たいビールが飲みたい」とつぶやいている。ボストンマラソンで走っていて辛いときでも、「もうすぐ冷たいビールが飲める」と思って走ったのだそうだ。この本を読んでいる間、わたしもつい、冷たいビールを飲んでしまった。冷たいビールはおいしいね。村上さんの英語力はもうどうでもいいから、この夏はビールと猫を楽しみたいと思うのであった。



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