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「わたしとあなたを愛すること」イベントを終えてmimosasが想うこと

2025年までに性的同意をカルチャーに

「あのとき酔っていたから」
「もっと抵抗していれば」
「よくあること、大した問題じゃない」

自分が、そして大切な誰かが性被害に遭ってしまったときに聞こえてくる、こうした言葉たち。自分自身で抱えてしまうだけでなく、ようやくの思いで相談した誰かからの言葉によって、さらに深く傷ついてしまう方は多いのではないでしょうか。

性被害について、そして性的同意についての認識がまだまだ不十分な社会で、「自分自身と、周りの誰かを愛する=大切にする」というのは、実はとても難しいことです。

だからこそ、安心して性的同意について学び、経験を誰かと共有できる空間を作りたい。誰にも傷つけられることなく自分と向き合ったり、大切な人とのコミュニケーションを見つめ直したりする時間を作りたい。

そんな思いの下、メディア発足から約2ヶ月。
私たちmimosasは10月2日の国際非暴力デーに、初めてのイベントを開催しました。イベントのタイトルは「わたしとあなたを愛すること」。

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多くのゲストを迎え、「性的同意」「性被害」そして「自分と誰かを大切にすること」をテーマに会場・オンラインで4つのトークを行いました。

「イヤよイヤよも好きのうち」 から 「相手を見たコミュニケーション」へ

第1部「セックスのときのYES/NO どうやって伝えている?」では、パートナーという親密な関係での性的同意の難しさについて掘り下げました。

エッセイストの小島慶子さんは「私の若い頃は『イヤよイヤよも好きのうち』が当たり前で、自分もそう振る舞わなければならないと思っていました。無知であることで、被害者だけでなく、加害者にも傍観者にもなった経験があります。だからこそ(性暴力や性的同意について)知ることは大事だと思います」と話してくれました。

小島さんの話を受け、話題はそれぞれが経験したことのある性被害や性加害、そしてその影響についてへと展開しました。

「被害の現れ方は本当に様々で深刻だけど、1番大きいと思うのは被害者が『自分は価値のない人間だ』と感じてしまうことです」と臨床心理士/公認心理師の齋藤梓さんは指摘しました。

カップル間の性暴力を多く担当してきた弁護士の川本瑞紀先生は、相談を受ける中で「カップルは、YESが一緒のとき(うまくいっているとき)より、NOのときにそれを受け入れられるかという方がよっぽど大事」だと発言しました。

お笑い芸人のせやろがいおじさんは、「『男はこうしたら興奮する』や『女性のイヤはイヤじゃない』といった雑な括りではなく、『あくまで自分が性的関係を結びたい相手はどう感じているのか』と、その人自身を見ることが大事なのではないでしょうか」と語りました。

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社会全体の問題として「性暴力」を考える

第2部「私たちが作りたい世界 mimosasの想い」では、ジャーナリストの伊藤詩織さんより、イギリスと日本における性被害に対する対応の差をシェアしてもらいました。

「イギリスでは、証拠を保全することから、身体的・心理的なケア、警察への届け出まで、 “レイプクライシスセンター”という専門機関がすべてのケアをしてくれます。それだけでなく、大学の寮で性被害にあってしまった場合には、新しい家を探すサポートなど、社会に復帰するまでの長期的なケアまでしてくれます。これは社会全体で、“性犯罪サバイバーへのケアが大切である”と認識しているからこそではでしょうか」

この報告を受けて、「(日本では)“自分が受けた被害は大したものじゃないから”と、本当はカウンセリングなどのケアが必要なのにに、受けることをためらってしまう空気がある」と話したのは、mimosasメンバーのみたらし加奈。

性暴力によって受ける身体的な傷など、短期的な影響はもちろんですが、身体に出てくる症状やフラッシュバックなど、長期的な影響の深刻さについても、まだまだ日本社会では認識が十分ではないと感じます。自分がどんなケアが必要なのかさえ判断することが難しい日本で、mimosasが情報を発信する必要性を再認識しました。

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誰も加害者にさせない社会へ

第3部「今『生きづらい』と感じている人に伝えたいこと」では、メイクアップアーティスト/僧侶の西村宏堂さんが登場。性被害を受けた人はもちろん、時には加害者となってしまう人も含めて、「生きづらさ」を抱えている人が多いと感じる今の社会で、まわりで起きる嫌なことに飲み込まれずに、自分らしさを保って生きやすくなるためのヒントを探り合いました。

「同性愛者でお坊さんになっていいのかな? メイクをしてもいいのかな?」と悩んでいた西村さんは、「仏教においては、みんなが平等に救われることがいちばん大切な教えだ」ということや、実際に他の職業を持ちながら僧侶でもある人の存在を知ることで、気持ちが楽になったといいます。

mimosasメンバーのみたらし加奈も、日本で育つ中で自分の見た目に関して人と比較してしまい、自己嫌悪に陥ってしまっていたといいます。「ハワイに留学した際、どんな見た目や体型の人ものびのびと過ごしているように見えました。そんな空気の中で生活して、少しずつ、自分もこのままでいいのだと感じるようになれました」と話しました。

ついつい人や社会の「普通」と比べてしまうことの多い社会で、「そうではなくても大丈夫」と知ることは、私たちの生きやすさに繋がるのではないかと感じました。

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「自分は大切にするべき存在」と知ること

最後のトーク「相手を想いやったコミュニケーションって?」には、女優のVioletta Polt(Vivi)さんが登壇。Viviさんは日本で生活する上で、女優やモデルという職業や見た目から、性的に見られてしまう経験を数多くしてきたと言います。

mimosas代表の疋田万理から「日本では、多くの女性たちがはっきりとNOというのが難しい空気を感じています。どうしたら自分の考えをはっきりと相手に伝えることができるでしょうか?」と質問。かつてはViviさんもはっきりと断れなかった瞬間があったそう。
「セックス以外にも、YES/NOを言わなければいけないシチュエーションはたくさんありますよね。だからこそ自分に自信を持って、『自分は大切にする価値がある』と自分自身で知ることが大切なのでは」と話してくれました。

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イベントを通して見えた
「知ることで変えられる未来がある」

会場やオンラインでトークを聴いてくださった方々や、ゲストと共に、性暴力にまつわる社会の問題から、日々行われる具体的なコミュニケーションまで、この1日を通して考えを深めることができました。

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また会場では、参加型プロジェクト『The Clothesline(クロースライン)』も展示しました。こちらは、昨年のあいちトリエンナーレ「表現の不自由展」にも出展されたものです。

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『The Clothesline(クロースライン)』とはメキシコのフェミニストアーティスト、モニカ・メイヤー氏が1078年から世界各地で続けているアート・プロジェクトです。参加者は日常生活で感じた抑圧やハラスメントの経験を匿名でピンク色の紙に書き、物干しロープ(clothesline)に洗濯バサミで挟みます。この作品では、世の中に埋もれていく「声なき声」や、いまだに可視化されていないジェンダーにおける暴力や嫌がらせ、差別などを浮かび上がらせます。


今回、参加者の方に答えてもらった質問は「セクハラ・性暴力を受けた自分(または家族や知人)に、どんな言葉をかけたいですか?」というもの。

「あなたは何も悪くない。よくがんばったね」
「1人で抱え込まなくてもいいんだよ」
「生きていてくれてありがとう」

会場の紙1枚1枚に紡がれた経験は、かつて自分が経験し、そして大切な誰かが経験したものでもありました。

会場に来てくださった方が、じっくりと誰かの言葉を受け取り、そして自身でも言葉を残していく。それはまさに、私たちが目指した空間だったように感じます。

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コロナ禍でイベントを決行することにメンバーで何度も話し合いました。でも今回、実際に会場で参加された方々の表情を見ることができたり、直接お話しできる機会を設けられたことは、mimosasのメンバーにとって、そして参加してくださった方々にとっても力強く、優しい時間の過ごし方になったのではないか、と思っています。

大切な相手を、お友達を、家族を守るために。誰かを傷つける側にならないために。そして何よりも、自分自身を大切にするために。

性的同意や性暴力について知り、相手や自分自身を尊重する大切さを知ることで、変えられる未来があるのではないでしょうか。

イベントを通して私たちは、mimosasの「2025年までに性的同意をカルチャーに」という目標の意義を再確認することができました。
mimosasは、これからも「性暴力に関する必要な情報を多くの人に届ける」というミッションを掲げて、一歩ずつ前に進んでいきたいと思います。

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最後になりましたが、今回「わたしとあなたを愛すること」にご来場くださった方、オンラインチケットで参加くださった方、そしてご支援と応援の声を届けてくださったみなさま、本当にありがとうございました。


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2021/4/29
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