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弱者

今村夏子の「こちらあみ子」を読んだ。

そしたら、底の方に蓄積していた過去の記憶が時間を置いた味噌汁を箸でかき回したようにブワワ〜っと広がってずっと頭の中を支配している。

嫌な記憶だけど、小説を読んだことで変に納得した自分がいる。

保育園の頃の話だ。何故か幼い記憶は数年前の記憶より鮮明に残っている。

私は弱かった。

背が小さく小食で、友達はおらず、毎日保育園に行きたくなくて母の手を離さずシクシク泣いていた。(小学生になっても朝は毎日泣いていた。)おもらしを良くしていた。

不思議だと思う。いじめ、と聞くと中学生くらいをイメージするが、なんの知恵もない幼い頃から弱いものをいじめることは当たり前にある。人間とはそういうものなのか。よく二人の女の子にいじめられていた。友達と呼べる子はいなかった。

ある日、一つ歳が下の発達障害を持った大人しい女の子をそりの上に乗せて園庭の1番遠くに連れて行った。
そして、遠くにその子を置き去りにして、走って逃げた。
振り返るとその子はそりに乗ったまま、ポカンとこちらを見ていた。

これを毎日繰り返した。

置き去りにされるのに、いつも〇〇ちゃん、遊ぼう。と言って誘うと、その子は嬉しそうにした。

ある日その子のお迎えにきたお母さんとばったり会い、「いつも遊んでくれてありがとうね。この子も喜んでいるわ。」と言われ、初めて罪悪感が襲った。

当時の私は何がしたかったのか。
それは、自分より弱いものをコントロールして、自分を肯定していたのかもしれない。
最低だ。

私の通っていた保育園は、今思うと色んな子どもがいた。同じクラスだけでも、発達障害の子が二人、外国人の子が二人いた。
外国人の子のうち一人は、途中から入ってきた子だった。
たしか、中国から来て、日本語もままならない子だった。でも一生懸命つたない日本語でお迎えに来た別の子のお母さんと話すくらい人懐こい子だった。

母親に、その子のことを悪く言った。たしか、気持ち悪い。と言ったと思う。幼い私は、外国からはるばる来て日本の小さな保育園に入れられたその子の気持ちなんか想像できなかった。

母は泣いて怒った。

訳もわからず、ああ悪いことを言ったんだなと思った。

発達障害の女の子、日本語が話せない男の子、自分より弱い人を見下して
いじめられて、いじめて、

幼い頃から無意識にひとはひとを見下して生きている。

想像するしかない。あみ子になって。想像なんかできなくても努力するしかないんだ。

悲しくなった。

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