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【vol.1-1 2021.9月号】2021年、浦和地区でSC-STERN発足!~中学生年代の女子サッカー環境特集~

日本の中学生年代の女子サッカー環境の現状

今回は、中学生年代の女子サッカー環境をテーマとする内容です。日本の女子サッカー環境の特徴として、小学生年代や高校生年代はサッカーをする場がかなりの広がりをみせてきている一方で、中学生年代での身近な女子サッカーの環境が非常に少ないという課題があるということは、かなり前から言われてきていて、それでも依然として女子サッカーの場が広がってきていないという現実が続いています。下記のリンク先にデータがあるのですが、将来をみすえてトップレベルを目指すような選手は、WEリーグやなでしこリーグのクラブチームの下部組織でサッカーをしたり、男子サッカー部に混じってやるという選択肢があるのですが、中学生からサッカーを始めたい子や、小学生の時に経験していたとしても、トップレベルについていくまでの自信がもてないけれどもサッカーを本当は続けたい子など、気軽で身近にサッカーを始めたいという期待に応えられる環境はまだまだかなり限られているというのが現状です。

2020年リリース記事↓

2021年リリース記事↓


 そのような現状を少しでも変えていくべく、浦和地区で、新しく女子中学生のサッカーの場づくりに奮闘している方に、今回は取材することができました。 

SC-STERN 望月こず江さんと望月有季子さん

 2021年7月22日(木)、北浦和にて、今年から発足した女子小中学生のサッカーの場、sc-stern(スポルトクラブ・シュテルン)のコーチをつとめるお二方、望月こず江さんと望月有季子さん(たまたま名字が同じで血縁家族というわけではないそうです)に、中学生年代の女子サッカー環境をテーマに取材を行ってきました。ちょうど前日はオリンピック女子サッカー日本代表の開幕戦(対カナダ戦)が行われており、GK池田咲紀子選手(浦和L)、DF南萌華選手(浦和L)、MF長谷川唯選手(ACミラン)、MF塩越柚歩選手(浦和L)、MF木下桃香選手(日テレ)の5人の埼玉出身の選手たちの話題でもちきりでした。
 取材を終えて感じた望月こず江さんのサッカー観は、この運営サイト「女子サッカーに耳をすまして」に込めた願い(=ひとを尊重する)と共通する部分を強く感じた上に、さらにもっと深く追求し考えられた要素となるようなキーワードが沢山でてきて、非常に充実した学びと刺激の多い取材となりました。サッカー界、女子サッカー界にとって、このような方がいるということが素直にとても嬉しく、この方の魅力を余すことなく伝えていきたいと強く思いました。
 同席した望月有季子さんは、冷静な雰囲気の中にもサッカーに対する秘めたる熱い情熱を感じる方で、冷静さと情熱の両方をしっかりもちながらサッカーに関わり続け、進路を選択してきた貴重なお話を聴くことができ、女子サッカーを活発にやってきた人がどんなキャリアを形成していくか?という点などで実りの多いお話を沢山してくださいました。

<今回のインタビュー登場人物紹介>

★望月こず江さん

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女子中学生チーム、SC-STERN(スポルトクラブ・シュテルン)代表、コーチ。さいたま市内の社会人女子チームで選手としても活動している。小学6年生の娘の母親でもある。
小学4年生から長野南サッカークラブでサッカーを始め、中学・高校でも男子の中でサッカーをつづけていた(高校時代は男子サッカー部に所属)。
社会人になってからはLリーグでプレー。長野県国体に選ばれており、当時の長野県国体の監督に頼まれて松本北少年団(長野県)でコーチ活動をしたり、松本市の少女のサッカーの場「松本ウイング」創設に尽力。浦和FCヴィーナスでコーチ経験後、前々から女子中学生のサッカーチームに関わりたいという願いがあり、SC-STERNを2021年より発足、活動中。

★望月有季子さん

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SC-STERNコーチ、さいたま市内の社会人女子チームの選手。
小学2年生で男の子達の少年団でサッカーを始め、小学5年生~中学生まで浦和FCラッキーズでプレーし、GKとして県選抜なども経験。高校時代は県内の高校の女子サッカー部に所属。女子サッカー選手として食べていく道も考えていたが、サッカーとの関わりをもちながらパン職人になる道を選び、現在に至る。

※以下、インタビュアー西出の発言は、西)、望月こず江さんは、こ)、望月有季子さんは、有)、で示します。

SC-STERNが生まれた経緯

西)SC-STERNの活動はいつから始まったのですか。活動を始めた経緯を教えてください。

こ)SC-STERNの活動は2021年からです。Jリーグができたばかりの20数年前は長野県の松本北少年団(男子小学生)でコーチをしたり、松本市に点在している女子小学生サッカー選手を集めて松本ウィングという女子サッカーの場を立ち上げたり、ここ数年は浦和ヴィーナスという少女チームのコーチ活動を4年ほどやったのち、SC-STERNを立ち上げました。中学生年代の女子は、思春期ということもあり、うまい子しか生き残れないような雰囲気があり、せっかくやりたいのにできない子がいるのではないか、そういった子たちをすくっていく場をつくりたいと思いました。技術がある子というのは、どうしても自分勝手に育ってしまいやすいところがあるので、思いやり、は本当に大事にしています。本当にうまい子は、人をフォローする力ももっています。小学生から高校生までを一緒にやらせて、上級生のうまいプレーを真似させてうまくなっていくような仕組みのサッカースクールの事例もあるそうで、それと近い形で多世代のスタイルを取り入れ、上級生や上手な子は、下級生や初心者のフォローもすることで思いやりも育つような場をつくりたいと思っています。

サッカーをする上で大切な3要素

西)豊富なコーチ経験があるんですね。コーチ活動をしていくうえで、大切にしていることはありますか。

こ)(子どもたちに対しては)「思いやり」「判断(賢さ)」「解放感(自由度、のびのび感)」の3つですね。「共感すること」「相談しながらすすめていくこと」も大切にしています。女の子だと早い子は小学5年生くらいから自我が芽生えてくるので、その自我にまず共感し、相談し、話し合いをするということが大事なんです。

こ)松本北少年団にいたときは、保護者の方には「試合中は静かにしていてください」「家に帰ったらわざわざサッカーの話はしないでください」といったお願いもしていました。Jリーグができたばかりで熱もあったからか、1学年で1チームできるくらいの人数がいましたが、その当時の保護者の方々及びチームの代表のフォロー・協力してくださったこと、とても有難かったですね。それもあって、まとまったチームでした。

西)少年団活動は、保護者の方々も含めてチームなんですよね。

お二方の選手時代の経験、エピソード

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西)サッカーをやり始めたきっかけというのはありましたか?

こ)キャプテン翼ですね!キャプテン翼は、絶対読んだ方がいいです。

有)生まれたときからJリーグはありました。サッカーをやっていた父や兄の影響が大きいですね。キャプテン翼も読みましたよ。

西)実は私読んだことがないんですよね。兄弟の影響でサッカーを始めるというのも、サッカーあるあるですね。

西)選手活動はいつからいつまでされていたんですか。

こ)小学4年生から始めて、24歳までやっていましたね。Lリーグの実業団チームでプレーしていたこともあります。今も社会人チームの選手としても活動していて、4チームで構成される市民リーグに参加しています。

有)小学校2年生のときに男の子たちの少年団でサッカーを始めて、小学5年生で浦和ラッキーズに誘われて入団、小中学生時代は浦和ラッキーズでやっていました。高校時代は女子サッカー部でやっていました。自分たちで練習メニューを考えて、それで春の大会で2位になる結果を出した、という経験もあります。自分たちで考えると選手同士で意図がわかりあえたんです。ポジションはフィールドプレーヤーもやりましたが、主にゴールキーパーをやってきました。小学5年生のときからゴールキーパーがやりたくて。本格的には中学生からゴールキーパーをやり始めました。高校時代のコーチの厳しい指導、最初はやめたいくらい嫌だったんですけど、うまくなることを思って教えてくれていることを素直に伝えてもらえて、それが分かってからは有難いと思えるようになりました。良い意味での厳しさがありました。県選抜のコーチの指導もよかったです。埼玉県では各年代でキーパー講習会もあったりして、指導者にとても恵まれていました。

西)厳しい指導に対して、有季子さんが受容する力があったんですね。

こ)(厳しく)叱った後のフォローも大事だよね。

西)女子サッカーは男子サッカー以上に指導者次第なところがあるようですね。サッカーをやっていて、トラブルなどはありましたか。

有)中学生のときは、ラッキーズに所属しながら、中学校の男子サッカー部にも途中まで所属していたんですが、いじめみたいなことがありました。小学生の時の男子の少年団でも女子のくせに、みたいなことを言われたりはありましたね。ラッキーズでは同学年で仲良くやっていましたが、コーチに対しては生意気だったと思います。戦略の話だったり、話自体が長かったりすると、理解しようとしない年頃だったかもしれません。楽しくボールを蹴れればいいみたいな感覚もあったような気がします。

こ)私は、中学生時代、登校拒否だったことがありましたね。高校には行かないとダメだとは思っていたんで、テストだけは学校で受けていました。学校の人間関係に悩みがあったわけじゃなく、単純にサッカーができなくて(サッカーできる環境がなくて)つまらなかったんです。学校に行かずに、人を集めてサッカーしたりすることもありましたよ。男子サッカー部の顧問に1対1で教えてもらったりしたこともありました。高校生時代は男子サッカー部にしっかり所属してやっていました。高校1年生の途中で、まちに女子サッカーチームができて、日曜日だけはそっちに行く、というような生活をしていましたね。

こ)(指導側の話でいうと)人間力は大事ですね。教える、というより「自らも学ぶ」ということを大事にしていて、いつも事前にぼんやりと練習メニューを考えてはいきますが、教える子たちのその日の状態でガラッとメニューを変えることはよくあります。また、女子の特徴として、性格でヒエラルキーをつくるようなところがあり、技術以上に、性格が強い子・きつめの子がヒエラルキーの上になり、技術的に上手な子がかえって抑えつけられるような現象が起こることがあるんです。性格が強い子には、技術レベルがまだともなっていない子の面倒をみさせるようにもっていくといいんですよ。うまい子しかやれない雰囲気、は変えていきたくて、私はボトムアップしていくことが快感ですね。普及と強化は同時にできるんですよ

女子サッカーと進路

西)有季子さんは、トップリーグでサッカー選手として活動する道も考えたんじゃないですか。

有)考えました。日本代表を目指すなら、サッカー選手としてやっていく道もあると思っていました。でも、日本代表を目指すまでの実力ではないと考え、サッカー選手として生きるのではなく、パン職人になる道を選びました。

こ)冷静に現実的に考えているね。

西)サッカーを長くやってきた人が、違う道に進むというのも、希望ですよね。サッカーで培った力は、サッカーじゃないことにも応用できますよね。

有)サッカーに打ち込んで続けてきて培った体力とかメンタルとかは、(パン職人の仕事の中で)生かされていると思います。

こ)女子サッカーに限らず男子もそうですけど、セカンドキャリアでやり直しが効きにくい雰囲気が日本社会にはまだありますね。ドイツのサッカー選手はプロ選手をやりながら会社を経営していたりするのも当たり前です。勉強も大事ですね。「ひとつじゃないんだよ」というようなメッセージ、幼少期の教育が大事で、(サッカーがただ上手いということじゃなく)協調性とかコミュニケーションといった要素を大切に伝えていく必要がありますね。サッカーは一人でやるものじゃない、切り抜きではない、人生の一部だということが分かっていれば、いじめなんて簡単にできないはずですよね。

サッカーが上手になる環境

西)指導の話に戻りますが、どんなかたちで行っていますか。

こ)よく、「ボールタッチ」「パス」「ドリブル」・・・のように個別に練習するやり方があると思うんですが、私はまずゲームをやらせますね。ゲームの中にはドリブルもパスもシュートも、すべての要素があるじゃないですか。サッカー初心者は特に、個別に練習しても、練習の意図を理解できないことが多いんです。まずゲームをやらせて、ゲームの中でできなかったことを、練習でやってみよう、という感じですね。

西)M-T-M(マッチ・トレーニング・マッチ)ですね。

こ)そうですね。人数を少なめにして、なるべくボールを多くさわらせるように、小学生なら3対3、中学生なら5対5などを取り入れます。「教える」というよりは、「みせる」(→真似させる)ということ、「相談」「共感」「解放の場」「一緒に!」ということも大切にしていますね。自分の世界に閉じこもるのではなく、「他人を感じる」ことはすごく大切ですね。子どもたちだけで褒め合う空気もつくっていきたいですね。

有)ラッキーズは、解放できる感じ、自由度、すごくありました。

西)解放感が大事なんですね。自分を表現できるって大事ですね。

こ)最近の子どもたちのサッカーをみていると、チームというより、「個人個人」になってしまっていますね。「自分さえよければいい」という感覚は、サッカーに限らず社会現象になっているように感じます。サッカーにしても、「人との関わり合いのツール」になっていないということを感じます。ちょっとサッカーが巧い子で、仲の良い子にしかパスを出さない、みたいな子もいたりします。でも、本当にサッカーが巧い子って、ちゃんと(色んな子を)使うんですよ。あまり上手じゃない子がいても、その子をどうしたらうまく使えるか、ということを皆で考えさせますね。少年団で教えていたときに実際にそういうことがあり、子どもたち同士で、この子はポストプレーが上手だから試合で生かせるということに気づき、本当に試合で生かせたことがあります。あまり上手じゃなかった子も、そうやって他の子にプレーの中で認められたことで、力になっていきました。私は、「うまい子を出させる」じゃなくて、「全員試合に出す」ということは一貫していて、保護者の方々にも伝えています。サッカーはみんなでやるものですから。親御さんの中には、子どもに協調性を学ばせたくてサッカーをやらせるという人もいます。それも1つのきっかけですよね。私はオシムさんのサッカーが好きなんですけど、人も動く、ボールも動く、一体感がある、そういうサッカーを目指すというところを指針としていて、そこを目指すにあたって女子のもつ共感力というのは生かせると思うんですよね。

こ)私が子ども時代のときの話でいうと、いろんな年齢や技術レベルの子とサッカーで遊んでいて、その中で自然と「自分たちでルールをつくる」みたいなことをしていて(ハンデをつくるとか、年齢や技術レベルが異なる条件の子どもが一緒に遊ぶ工夫をする)「調整力」が自然と育っていた気がしますね。それは賢さが育つことにもつながってきます。子どもって、大人がいないところでのびるんですよ。そのことを親がわかっていないと、過干渉になりやすくなりますね。親が来ないと活躍できない、なんて子もいますよ。昔は道路でも平気で遊んでいて、車が止まってくれたけど、今はそうはいかないですよね。だからこそ、小さい子から中学生まで一緒にやる場づくりを作っていきたいんですよね。

西)「遊び場」って大事ですよね。今の子どもたちは、全部大人がおぜん立てした管理された環境の中でサッカーをやっていることが多い点ではかわいそうな側面がありますよね。私も小学生時代は、校庭開放で(大人の介入なしで)好きなように遊んでいた経験があって、今になって思えば、貴重な経験だったなと思います。

中学生年代を指導するにあたり意識していること

西)中学生年代を指導するにあたって特に意識していることはありますか。

こ)中学生年代になってくると戦術メイン、ゲーム中心でやっていくことを考えますね。(個人個人ではなく)「連動性」が生まれるように導きたいので、「戦術」はしっかり伝えたいです。男子中学生なんかだとよく「クラムジー」とか言って、技術の成長が止まる時期があると言われているんですよね。女子中学生だとどうなんでしょうね。高校で伸びる子もいたりしますからね。意識しているのは、「仲間と一緒に」「コミュニケーション」「楽しさ」「解放感」「思いやり」ですね。(つまり)「メンタル」のところを大切にしていますね。自己主張が強くなる時期、承認欲求もでてくる時期なんですよ。(小手先の共感ではなく)本気の共感が大切ですね。家の問題を抱えている子もいますしね。できることなら、小学生の時から連続的に育てていくのが一番かなと思いますね。

西)質の高い指導を広げていくために、どうしたらよいでしょうか。

こ)大人と子どもとの間にヒエラルキーをつくらない、「一緒にやる」という空気は大事ですよね。女子はメンタルの問題で脱落していくことが多いので、そこのケアは大事です。私は「選手のミスはコーチの責任」だと思っています。選手を責める前に、自分を責めろ、と思うんです。あのマラドーナも「サッカーを嫌いになってほしくない」といっていましたね。

こ)オリンピックのイギリスとチリの試合を観ていたんですけど、イギリスは強かったですね。よく見ると、ボールを蹴るときの蹴り方が1人1人全然違うんですよね。日本だとパスといえば、インサイドのやり方を細かく教えるようなところがあると思うんですけど。そうじゃなくて、自分で自由に蹴ってみる、「相手がとりやすいようにパスしよう」などとだけ声をかける。そういう指導方法もあるんですよね。

これからの展望

西)これからの展望をきかせてください

有)職業としてはパン職人をやっているのですが、サッカーとは関わり続けていきたいですね。

こ)女子サッカーにはジュニアユースの壁というのがあって、セレクションのあるチームに行こうとすれば、うまい子だらけなんですよね。そういうところに行かないけどサッカーをやりたい子たちの需要に応えていきたいですね。コロナ渦でチラシを配布したりアナウンスもしたかったんですけど配れなかったんです。週4回くらいで活動して、いつでも来ていい雰囲気がつくれたらいいと思いますね。中学生の部活動はグランドの確保問題などが原因でなかなか普及しにくい状況ですね。学校単位じゃなく、地域をあげてサッカーの場をもりあげていけたらいいな、という願いもあります。

WEリーグに対する期待

西)9月に開幕するWEリーグに対して期待することなどありますか?

こ)「プロとは?」という基準や指針が明確になっていてほしいですね。20年くらい前は、実業団で社員としてやっている選手がいたり、バイトしながら選手とか、教員やりながら選手とか、バラバラでしたから。ドイツやスペインなどと同じように男子のプロチーム(Jリーグ)の傘下にあるところはある程度大丈夫だと思うんですけど、女子単独のプロチームは地盤がちゃんとあるのかな、大丈夫なのかな、という懸念はありますね。あとは、スタジアムでお酒が飲めるようにしないと!採算をとる意味でも。私はレッズレディースが好きです。埼スタは自転車で行くには遠いですけど、駒場は行きやすいので楽しみです。

編集後記

「中学生年代の女子サッカー環境」をテーマとする取材ということで始まった今回でしたが、何度も痛感させられたことは、男子サッカー以上に、女子サッカーは「指導者次第」なところがあるという点でした。指導者の接し方次第で、ぐんぐん伸びたり、トラブルが続発したりする。そういうことが如実に表れるというところが女子サッカーの特徴のように思いました。望月こず江さんもおっしゃっていましたが、選手が学んでいるのと同様に、コーチも学び続けていかなければいけないということで、これまでの経験にあぐらをかいて上から目線の指導をしていては、選手は誰もついてこないということ、特に今は昔と違い、女子サッカープレーヤーもチームを選べる時代になってきているということ、私たち大人も変わり続ける勇気や努力をつづけていく必要があるということを強く思いました。
また、望月こず江さんが何度も出したキーワード「解放感」をサッカーの場で作り出すということは、私も非常に大切だと思いましたが、現実にそれを作り出せているチームはもしかしたらすごく少ないかもしれないと思いました。コーチが選手をコントロールする、言うとおりに動かす、というやり方でも、サッカーの試合では、結果を出せてしまうこともあります。でも、果たして、それでサッカーをやっている意味があるのか?サッカーをやることを通じて充実感を味わってほしい、仲間と一緒にサッカーをやることを伝えていきたい、そのために、選手たちの解放感を引き出す、のびのびとプレーさせる、そういうアプローチは非常に大切であり、日本のサッカー環境の大きな課題なのかもしれないということを強く感じました。
ただし、質の高い指導を広げていくためには、指導者を取り巻く環境や仕組みそのものも見直す必要があるのかもしれません。具体的には、ボランティア精神に頼る仕組み、学校単位で活動する限界・・・等が挙げられます。
地域社会をあげて多くの人が協力し合う機運を盛り上げて、ボランティア活動ももちろんありですが、中心的にスポーツ団体を運営している人たちにはきちんと対価が支払われるような、プロフェッショナルな人を増やし、スポーツ指導者やスポーツ団体運営者に対する社会的地位の向上、職業としてのイメージが生まれてくるような社会に変わっていく必要があるのかもしれないと思いました。言うは易し、行うは難しなのですが。
最後に、私自身のサッカー経験と今回のインタビューを重ねて強く感じたことは、インタビューを通じて、「上手な子が、その時点であまり上手じゃない子のフォローをする」とか、「大人がいないところで子どもは伸びる」であるとか、「遊び場」の重要性であるとか、そういったポイントが出てきましたが、私自身のサッカー経験の中で、「多世代型の女子サッカークラブチーム」でサッカーさせてもらってきた経験が、そのポイントと強く重なったように感じました。今となっては、中学生年代の女子サッカーといえば、「Uー15カテゴリ」とか「男子サッカー部に混ざってやる」という2つの選択肢が主流ですが、私が中学生の時代は、中学生以上の年齢を問わない社会人チームに中学生が混ざることが主流だったように思いますし、私自身がそういう経験をしてきました。そこで、沢山の上手なお姉さんたちのプレーを間近で見たり、一緒にサッカーをしたり、ジェネレーションギャップがありながらもなんとかコミュニケーションしたり、学校の部活動とは全く違う、豊かな人間関係の場があり、私にとっては窮屈な学校生活と比べて救いの場となっていました。もちろん、同年代で切磋琢磨してサッカーをやったほうが伸びる子もいると思いますが、多世代型の多様なコミュニケーションの中でサッカーをやる、親でも友達でもないお姉さん的存在、タテでもヨコでもないナナメの関係性があることが、居心地のよい居場所となったり、伸び伸びとプレーする場となったりすることもあるのではないか、今の時代にこそ、改めて、「多世代型の女子サッカーチーム(社会人チーム)」の価値は再考されるべきなのかもしれない、ということを強く感じました。そんなわけで、今後、女子サッカーチームにおける「多世代型クラブ」の特集も、このマガジンで組みたいと強く思った次第です。

今回の取材を通しての、中学生年代の女子サッカー環境についてのポイントを私なりにまとめると
・女子チームは男子以上に指導者次第の傾向があること
・「解放感」をサッカーの場で作り出すことの重要性
・指導者を取り巻く環境や仕組みそのものを再考することの必要性
・「U15カテゴリ」「男子サッカー部で所属して活動する」以外の選択肢、「多世代型クラブ」の価値の再考
の4点がみえてきました。

今後も、中学生年代の女子サッカー環境について、ひきつづき考え続けていきたいと思います。

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stern(シュテルン)は星という意味のドイツ語だそうです。

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