ミニラブレター。


愛華は、砂川隼人の接客してるところを見るのがとてつもなく嫌だった。
自分以外に、そのかわいい笑顔を見せていることが許せなかった。

隼人は、愛華の家から徒歩十分のコンビニでバイトをしている。

「いらっしゃいませー!」

今日も元気な挨拶が聞こえる。
いつもの缶コーヒーを手にとる。
カフェオレの中で一番カロリーが低く、自社製品のため、このコンビニでしか売っていないわたしのお気に入りのものだ。
それとチキンサンドも追加して、いつものセットをつくる。
誰も並んでいないレジの前へと立つ。
店員の名札には砂川の文字が書かれている。

「いらっしゃいませ、お預かりいたします。」

愛華はコンビニに入ってからずっと不機嫌な顔のままだった。
隼人はそんなことなど気にすることなく、接客モードの愛想のいい笑顔を浮かべている。
愛華はイライラしていた。
その、大好きなはずの笑顔に。

袋がいるかどうかなんて聞かれることなく、隼人は袋詰めをする。
そのまま公園で絵を描きながらランチをとることを隼人は知っていた。
その公園にはゴミ箱がなく、でたゴミは持ち帰らなければならないため、袋が必要なのだ。

お金を払い終わり、不機嫌さを残したまま、差し出された袋を少し乱暴にとる。

「ありがとうございました!」

相変わらずのにこにこ笑顔。
愛華は隼人を一瞥し、コンビニをでた。

コンビニの角を曲がり、住宅地へと入れば、いつもの公園が見える。
お城型のすべり台のついた遊具や、砂場などがある。

愛華はベンチに座り、コンビニの袋の中を探る。
カフェオレとチキンサンドの他に1枚の折りたたまれたメモが入っている。

『愛華ちゃんへ
  今日はしょうが焼きがたべたいです!
                                                隼人』

いつからか、隼人はこんなメモを入れるようになっていた。
こんなの、休憩中にLINEでもすればいい。
でも、こういうことをする隼人のことが、愛華はたまらなく好きだった。
これがあるから、愛想をふりまいている隼人が嫌いでもコンビニに行ってしまう。

メモを折りたたんで財布の中にいれる。
今までのをためこんでいるせいで、パンパンに膨れてきている。
帰りにメモの保管用ファイルでも買おう。
愛華はそう考えながら、スケッチブックとペンをとりだした。

#小説 #短編小説

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