俺のバイト先のおんぼろラブホには、ちょっとおかしな常連客がいる。ロングの黒髪に銀縁のメガネをかけ、濃いグレーのスーツを着たOL風なおねえさんで、週に数回夜1人でここに泊まりに来る。ここはぼろい分格安だし、男のお客さんならホテル代ケチってラブホ使うのはよく聞くからまだ分かるけど、真面目そうな成人(済みだと思われる)女性がラブホに1人で泊まりにくるとかなんかおかしくないか?1人で一体なにしてんだろって思うのがフツーだと思う。受付でそんなことをボーッと考えてると、そのおねえさんが
優しくされたら優しくし返さなきゃと人間は思ってしまうらしい。 相手に優しくしたら、優しくしてもらえなきゃ許せない?? 通りすがりの人に優しくしたら、そのお返しを望んでいるの?? そんなことないでしょ。 優しくされたからといって、優しくし返さなきゃと思うことはないんだよ。 その優しさは、もしかしたらニセモノかもしれないし。 誰かに優しさをもらって、優しくしたい気持ちが出たら、大事な人に優しくしたらいい。 別にもらった人に返さなきゃいけないわけじゃないと思うの。
「いらっしゃいませー!」 自動ドアが開き、入ってきたお客さんの方へ顔を向ける。 あ、愛華ちゃんだ! まぁた不機嫌そうな顔してる…… にこにこしてたらめちゃくちゃかわいいのに、もったいない。 でも、他のヤツに目ぇつけられても困るから、それでいい。 他の誰にも、彼女のよさなんて知られたくない。 それを知ってるのは、僕だけでいい。 愛華はいつものカフェオレとチキンサンドを持って、レジにきた。 これからまた公園で絵を描くはずだ。 それはお昼すぎに仕事の終わる彼女の日課だった。
きみが帰ったあと、僕は読み終わった手書き原稿をゴミ箱へと捨てた。 内容が悪かったわけでもない。 むしろよかった。 それでも僕は手元にそれを残さなかった。 1週間後、ピンポンとチャイムがなり、きみがやってきた。 きみは、す、とゴミ箱に視線を落とし、意外にもあっけらかんとした声で 「あぁ、やっぱり捨てたんだ。」 と言った。 てっきりしょんぼりと肩を落とすだろうと思っていたのに、予想外だった。 「あ、せんせ、その顔。わたしがしょぼくれるとでも思ったんでしょ。」 きみはまたいた
「ねぇ、せんせ。送られてくる小説は全部保管してるの?」 今日も送られてきた小説を読みおわり机の上に放るときみが問いかけてくる。今は小説家をやっているが、昔編集の仕事をしていたので、それを知っているファンからはときどき小説が送られてくる。 「まさか。読んだら捨てるよ。」 「捨てちゃうんだ……」 きみは少し眉を落とす。 「小説は一点ものじゃない。再現可能性が高いからね。これを送ってきた人だって、保管してもらえるなんて思ってないよ。」 そう言うと、きみは、ふぅんとなにか
きょう、帰り道にきいろいお花をみかけた。 好きだった子が、ひまわりみたいなきいろいお花の写真を送ってくれたことを思い出した。 ひまわりかな?これ? うーん、ひまわりじゃないかも?でもかわいいね。 やだ、ひまわりがいい。 ひまわり撮って渡したい。 きみの好きなひまわりがいい。 キミがひまわりというなら、これはひまわりだよ。 その気持ちがとてもうれしいの。 だからこれは、わたしの大好きなひまわりだよ。 。 。 そんなことを、書いた気がする。 よめなくてはがゆいとコメ
わたしが入院したら、タイトルの見えない本たちを持ってきてください。 あおむけになっている、まだ読んでないこたちです。 それは、その時のために用意されたのかもしれません。 でもなるべくなら自由な時に読みたいのです。 なるべくなら、もう不自由な生活はしたくないのです。 #閉鎖病棟の詩 #詩 #散文
愛華は、砂川隼人の接客してるところを見るのがとてつもなく嫌だった。 自分以外に、そのかわいい笑顔を見せていることが許せなかった。 隼人は、愛華の家から徒歩十分のコンビニでバイトをしている。 「いらっしゃいませー!」 今日も元気な挨拶が聞こえる。 いつもの缶コーヒーを手にとる。 カフェオレの中で一番カロリーが低く、自社製品のため、このコンビニでしか売っていないわたしのお気に入りのものだ。 それとチキンサンドも追加して、いつものセットをつくる。 誰も並んでいないレジの前へと
その絵を見た瞬間、これはわたしが手に入れなければと思った。 自分のものにしなければ、絶対に後悔する、と。 文哉とわたしは、同じ高校の美術部に入っていた。 主に油絵を描いていて、みんな写実的な絵を描いている中、文哉だけは一人、抽象画を描いていた。 いつも真剣な眼差しをキャンバスに向けていた。 その集中力は凄まじく、ただ声をかけただけでは彼の耳に届くことはなかった。 モデルも物体も何もない、ただ色を置いているだけだと馬鹿にする生徒もいた。 一体何を描いているのかわからなかったが
わたしは、絵を展示する際になぜ描いたかなど、説明書きをのせない。 聞かれたら、なるべく伝えられるだけ伝えるけど、けっこう考えないで描いてること多いから、難しかったりする。 かわいいと思ったからーとか、楽しそうだったからーとかが大半だ。 説明するのが苦手というのもあるけど、あえて説明は記しておきたくないと思っている。 それは、その作品を見てくれた人の感じ方に委ねたいからだ。 わたしの作品に関しては、解釈違いという概念がない。 あなたの感じたもの、それが正解(というの
わたしは作品の価値はひとつではないと思ってる。 作家がこの絵には価値がないと思っていても、それを買いたいという人がいるというのは確かで、この場合、ふたつの価値がある。 作家が価値数が0だと思っているとして、買い手は100だとすると、その絵の価値は0でもあり、100でもある。 有名な批評家がいいと言ったから価値があるのか。 売れたから価値があるのか。 それは、その相手にとっての価値でしかない。 けなされても、売れなくても、自分には価値のあるものだと思っていればそれは
きみのことばはぼくの太陽 いつもぼくをあたたかな気持ちにさせてくれる はやく朝にならないかな きみのことばを 浴びたくてしかたないよ。 #詩
夜になるととくに落ちる。 今日は危うくやってはいけない行動を取りそうになった。 冷静になれ。 メンタルコントロールがなかなか難しい。 書きたい小説も書けないでいる。 やりたいことがやれない、のが沢山ありすぎて苦しい。 やれることに集中してなんとかやり過ごす。
わたし、ちょっと追いつめられすぎててさ すごく消えたくなったら、 神様が消してくれたんだよね。 今はこの世界にいちゃいけないよって。 でも、一晩神様の近くで寝たら、落ち着いて 元の世界に戻してもらったんだ。 ね、神様っているとおもう??
鳥の声がやんだ。 今日は空が泣いている。 ぼくの一撃がか弱いすずめを刺したのかもしれない。 嫉妬をしていた、青い鳥に。 あの子が去らなければ、わたしがいなくなっていた。 なにかを察知したのかもしれない。 嫌なことをされて 嫌であろうことをし返すのは ただの子供だ。 そこらにいるのはみんなひなだった。 卵からすらかえっていないのかもしれない。 雨がやんだ。 鳥がなく。 わたしをみてと悲しげに。 ぼくはそっと、イヤフォンをつける。 #詩#散文
人生には欲、というものがついてまわります。 三大欲求として、食欲、睡眠欲、性欲がありますね。 その中でも、性欲はネガティブにとらえられることが多々あります。 自慰行為をして、終わったあとに罪悪感のようなものを感じることもあるでしょう。 でもそれって、「欲」に関して言えばお腹が空いたから食べたり、眠いから寝たりするのと変わらないと思うのです。 もちろん、欲に溺れて、生活に支障がでてしまうなら、改めなければなりません。 でも、適度な欲の摂取はしてしまうのが当たり前というか、その