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呼ぶなら言ってよね


母が30年以上言い続けている言葉。
「いつ事故に遭うかわからない。だから良い下着をつけていたい」

人生なにがあるかわかりません。その辺を散歩していて、いきなり倒れることもありえます。そんな時、救急車がきて、いざ病院だ!手術だ!となったときにかぎって、
(何もこんな時にこんな下着をつけていなくても…)という下着をつけていたら恥ずかしいから、いつも良いもの(恥ずかしくないもの)をつけておいたほうがいい。
これが母の「言い続けていること」です。

子どもの頃はなんのこっちゃわからず、
(もう!お母さんはまた面白いことを言ってる)くらいにしか思っていなかったのですが、

私は24才の時にその言葉の意味を
強く思い知ることになります。
母の言っていることとは少し違うのですが。

前置きが長くなりましたがここからお話が始まります。先に言っておきますが超絶くだらない私のエピソードです。お時間あられる方はお付き合いください。ない方は…ここでストップでお願いします。

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我が家は飲み屋を経営しておりました。
飲み屋=酒屋さんとのお付き合いがあります。季節ごとに新作のお酒のグッズ(試供品やキャンペーングッズです)をもらっていました。お酒のロゴが入ったグラスとかコースターとかTシャツとか。

グラスやコースターはまだ良いんです。お店でも使えるので。しかしTシャツはお店で使えないので家に持ち帰り、しかたがないので家族で着るんですけど、その頃の酒屋さんからもらうTシャツは生地の薄い、胸にビールや焼酎の名前が入ったお世辞にも「おしゃれ」と言えないものでした。サイズは大きめ。気が進まないものの家で着る分には誰にも見られないし楽ちんなため何も考えずに着ておりました。

ある日、私は酷い胃痛でトイレで倒れてしまいました。胃痛が酷くて仕事も早退し、帰宅後、(少しでも楽な格好を)とTシャツと短パンに着替え、トイレへ。そのままあまりの痛さで動けなくなってしまった感じです。

仕事を早退してきてトイレで動けなくなった娘を心配した母は大慌てで救急車を呼んでしまいました。
ミーミー24才の晩秋。その時私が着ていたTシャツは例のビールの名前が胸に入った生地の薄いものでした。

私はトイレに突っ伏したまま、救急車のサイレンが近づいてくるのを聞いていました。意識が朦朧としていましたが(あれ?近くで止まったな)というのはわかりました。その時です。

「ミーミーちゃん!救急車呼んだから!来てもらったから!」

えええええ!!!

救急車って、え?この救急車は私を迎えにきたの!?

私は大慌て。でもきびきびとは動けない。トイレの鍵を開けて外に這い出るのがやっとです。

救急隊の皆さんが担架をもって部屋の中に入ってきてくれました。

男前な救急隊員のお2人。慣れた感じでいくつか質問され、担架に乗せられて私は救急車に運ばれました。
胃が痛過ぎることと
初めて自分のために呼ばれて運ばれて、救急車内が珍しいのと
救急隊の方が眩しいくらいに格好良くて優しいことに感動してしばらく忘れていましたが、

病院で点滴を受けたりなんだかんだ時間が経ち、症状が落ち着いた私は自分の身なりにギョッとしました。

胸にビールの名前、(もともとの素材も薄いうえに)着古してダルダルなTシャツ、(ホットパンツくらいに短い)短パン、はだし。

季節は11月。本来ならカーディガンやコートのひとつも羽織る時期。それをだるだるの半袖Tシャツでおまけにノーブラ。
救急車で運ばれてバタバタと処置をしてもらったので私がいるのは簡易的な処置室の細いベッドの上。
「痛みが落ち着いたら帰ってもいいですよ〜」と看護士さんに言われていたので、もう帰っても良さそうなんだけど…

私はついてきてくれてるはず(ぼんやりした記憶)の母を探しました。はだしですからね、ベッドから降りるのも緊張します。こっそりドアを開けると廊下の椅子で母が居眠りをしていました。

「お母さん!お母さん、ちょっと!」
「ああ、ミーミーちゃん、もう痛いの治った?帰る?」
「うんうん!治ったけど、私、こんな格好なんだけど…」

母は上から下まで私を見て、ぷっとふきだし、
「まぁ、痛かったからね、しかたないわ」

「私トイレに行きたいんだけど、こんな格好で行くの嫌だ。はだしだし」

「ああ、はだしだわね。ちょっと待ってて」
母は病院のスリッパを玄関から持ってきてくれました。

ビールの名前つきTシャツ、ノーブラ、短パン、はだしから、

ビールの名前つきTシャツ、ノーブラ、短パン、スリッパになったので少し昇格した気分になりましたが、
恥ずかしさはまだまだあります。

ふと見ると母がもふもふの大きい茶色のコートを羽織っているではありませんか!

「お母さんのそのコートかしてくれない?ノーブラだから恥ずかしいのよ」

母の大きなコートを借りる私。

…いや、なんだか。
コートを羽織ることにより、ノーブラなのとTシャツのロゴ(ビール名)と短パンを隠すことには成功しましたが。

これが↓

首元もだるだるになった薄いTシャツ。胸にビール名。

こうなっただけ↓

コートから生足。足元は深緑の病院スリッパ。

むしろ、少し露出狂みたいな感じに。

トイレにはこの格好で行ったものの、ロビーでお会計を待つ間、
胃痛のことなんてすっかり忘れて、ただただ私が考えていたことは

(帰りのタクシーにこの格好で乗るのか。いや、寒い外に出るんだもん。母にコートを返さねばならぬ。じゃあ、タクシーにまたノーブラTシャツ裸足で乗るのか!?しかしコートを借りたままだとして露出狂ファッションでタクシーに…)

ということでした。記憶はそこでぷっつり途切れています。
たしか胃痛の原因はストレス性の胃炎だったか何かぼんやりした理由だったのは覚えているのですが。
そんなことよりもあの時の痛みの記憶をこえて、自分のファッションの恥ずかしさの記憶の方が強い。

人間、いつ倒れてもいいように下着は良いもの(恥ずかしくないもの)をつけておいた方がいい。
人間、いつ救急車で運ばれても良いようにビールの名前が入った着古したTシャツに短パンノーブラで家にいない方がいい。

その時に学んだことがこれです。
いや、家の中では楽な格好でいたい。
それでは、家族にこう伝えておきたいところ。
「(救急車を)呼ぶなら言ってよね」と。


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今回のお話は
チェーンナーさんのこちらの企画↓に参加させていただきたく書いたものです。

記事のテーマは「心に残るあのエピソードをあなたへ」だったのに、私のこのエピソード・・・。心には残りまくってます。どなたかの心に残って救急車を呼ぶときに思い出してもらえたら・・・(こんな話ですみません)

私にバトンをまわしてくださったのは大好きなnoterさん。ゼロの紙さん。私は勝手にゼロさんのことを友達だと思っております。最初は尊敬から入って、遠い存在だったゼロさんと交流していくうちに共通点を次々発見!やりとりをするたびに出てくる共通点とシンクロ。嬉しいです。お会いしたことはないけれど(noterさんのどなたとも未だお会いしたことがない)繋がっている気がします。いつもありがとうございます。

さて、次のバトンは〜。
いろいろ考えたのですが、私のこのエピソードを読んでバトンを渡されても皆さん困惑されるのでは…と、不安になってきまして。
それと、昨年もそうだったのですが、主催者であるチェーンナーさんの記事をじっくり読みたいなぁという気持ちがむくむくと。いつも素敵な企画で輪を繋げてくださるチェーンナーさんにバトンをお渡ししたい!!
と、いうことでチェーンナーさんにお渡ししてもよいでしょうか。よろしくお願いいたします。(毎年すみません)


こんなところまで読んでいただけていることがまず嬉しいです。そのうえサポート!!ひいいっ!!嬉しくて舞い上がって大変なことになりそうです。