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落とし物を届けてくれる犬

「これ引換券になりませんかねえ?」という感じでリモコンを咥えて私の目の前に来た抹茶さん。

うちのお約束

うちでは落ちているものを私に届けてくれたら、おやつと交換できるというお約束があります。

どんなものでも持ってきてもらえるよう、お約束は毎回しっかり守らせてもらっています。

落ちているものを見つけて届けてくれるときの抹茶さんは、なにやら嬉しそうです。このあとのおやつまでがセットですから落とし物を見つけたときは「ヤッター!」と思っているのだろうと思います。

ただ、彼女が届けてくれるたびにおやつをあげていると食べさせすぎてしまいそうなので、飼い主側には床に物を置きっぱなしにしないという習慣がつきました。ずぼらな私には嬉しい副産物です。

気をつけてはいても、気づかずに床に落としてしまったものや置き忘れたものがたまにあり、そういう時のこの自主的なお手伝いは、とても助かります。

以前、行方不明だった画鋲を持ってきてくれたことがありました。赤い何かが口先から見えていて、手のひらに赤い頭の画鋲を置かれた時は、さすがにゾッとしました。

今回のリモコンは朝から床のどこかに置きっぱなしにしてしまっていたようです。抹茶さんのおかげで夜になって探しただろう手間が省けました。

彼女のこの行動はうちに来た頃に教えてから13年ほど続いています。

どうやって教えたのか

抹茶がうちに来たのは生後5ヶ月弱。そのころは、2×1メートルのサークルを組んでいました。目を離す時はそこにいてもらい、見ていられる時は部屋に出していました。

その頃の抹茶はお子ちゃまなので、部屋のもの全てが彼女のおもちゃ対象です。

部屋に出す時は抹茶が咥えても大丈夫なものだけをいたるところに置いておきました。

触って欲しくないものはしまっておいたり、抹茶の動き回れる範囲を制限したり、室内でもリードを使うこともありました。

おもちゃをかじったり咥えて運んだりする時は、それを邪魔しすぎないようにたまに引っ張りっこ遊びをしたり、投げて遊んだり、食べ物をあげたり、私の周りでものを咥えることに対し良いイメージを持ってもらえるようにしました。

そんなことをしているとおもちゃを咥えて持ってきてくれることが多くなっていきました。

意図してそうなるように仕向けた訳です。(下心ありありですが抹茶のご機嫌は良いまま)

他の物でも練習を積み重ねていくと、小さなものや紙切れなど、どんな物でも持ってきてくれるようになっていきました。

13歳半になった今でも持ってきてもらう練習やおもちゃでの引っ張りっこ遊びなどは続けています。

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やってしまいがちな間違った対応

ドッグトレーナーとしてよく相談を受けるのは、物を咥えたら渡さない、咥えて逃げる、飲み込んでしまう、物を守って近づく人に噛みつくといったこと。

物を守る意識が元々強い個体もいるのですが、飼い主側の対応でより物を守るようになってしまうことがあります。実はこのケースが多いのです。

触って欲しくないものに犬が簡単にアプローチできる環境で犬を自由にさせていたり、犬が物を咥えたら渡してもらおうと「ちょうだい」攻撃をしたり、咥えている物を口から引っ張り出そうとしたり、口をこじ開けたり。

中には強い口調で叱ったり、叩いたりする方もいます。

犬にしたらビックリですよね。ちょっと気になって咥えただけで飼い主が過剰反応するのですから。

こんな経験すれば、せっかく咥えた物を取られないように、逃げる!飲み込む!噛みつく!となることは自然な流れです。

「取れるもんなら取ってみろ!」とそれを楽しむようになる犬もいます。

飼い主が見ていない時や留守中にものを破壊するなども、飼い主側の対応が原因のこともあります。

叱られるのを避けるために物で遊ぶことや咥えること自体をやめてしまうケースもあります。

人の都合を考えればしつけが成功したように見えますが、犬が生きるための行動のレパートリーを一つ奪ったことになってしまいます。動物福祉的な観点からは良い対応とは言えません。

成功のための環境づくり

ドッグトレーニングというといきなり何かを犬に教えるのかと思われている方は多いと思いますが、その前の環境づくりがとても大切です。

環境づくりの目的は、「やって欲しくないことをやる頻度を増やさないようにすること」と「やってほしいことをやる頻度を増やすようにすること」です。

ここでの環境づくりというのは、
① 触って欲しくないものに犬がアプローチできないようにする
② 触って大丈夫なものをたくさん置いておく
③ 触って大丈夫なものでに犬がアプローチしたらゆっくり楽しめるようにする

犬はその場所や置いてあるものやそこにいる人たちも一緒に条件付けして覚えます。

その時の感情も条件付けられるので、「安心」や「楽しい」気持ちになってもらえる工夫をします。

最後に

多くの飼い主は、犬の行動に困って「しつけをしないと」となりがちですが、犬は飼い主側の意識とは関係なく、常に学習をしています。犬を取り巻く環境や対応の全てが犬の行動に反映されます。

犬と暮らす場合、常に犬への影響を考えながら環境を作ったり、対応したりする必要があるので、一見面倒ですが、結果的にお互いがストレス少なく楽に暮らすことができます。

なんだかんだお話ししましたが、飼い主の抜けている部分を愛犬にフォローしてもらっておいて、今回はちょっと偉そうでしたね。

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最後までお読みくださりありがとうございました。

たばたまき


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