母と書道と私
「あんた、仮名やりよし。仮名」
そんな母の鶴の一声で
この6月より、月に一度か二度
筆を持つようになった。
小学生低学年の頃、
母主宰の書道教室に生徒として混じったことはあるけれど
同級生の前でダメ出しばかりされるのが嫌で
すぐにやめてしまった……苦い記憶。
母曰く、お月謝をいただいている他人の生徒さんは褒めても、
身内、ましてや自分の娘を褒めるという行為は
自分の辞書の中にはなかったらしい。
***
物心ついたときより、
私にとっては疎ましいような存在だった「書道」
夜、母と一緒に寝たくても
母は硯で墨をすっていたり
書にまつわる本を読んでいたり
作品を書いていることがほとんどで
週末も「勉強会」や「審査」で
家をあけることが多かった。
俳句、篆刻、短歌などの創作活動にも
常に全力で取り組んでいた書家の母。
家族よりも書道が大事なのかと
父と母の喧嘩もいつもそんな内容だったように記憶している。
***
そんな母の書道教室運営を
少しづつ手伝うようになり、
まだまだ亀の歩みだけど
あんなに毛嫌いしていた書道を
かじってみようとしている私がいるなんて
人生ってわからないものだと思う。
家族をバラバラにしている元凶のように感じていた「書道」が
今では私と母を繋ぐ接点となっているのだから。
奥が深すぎて
先を見ると気が遠くなりそうな仮名の世界。
千里の道も一歩から。
まずは月に最低一度は書と向き合うこと。
これが目下の私の目標かな。
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