見出し画像

ハウトゥーサクシードによせて

先日、春ぶりの東京へ。

東京旅行(という名のファン活動)は何度目になるか数えていないが、今だに人混みに慣れる兆しはないし、おそらく慣れることはない。
今回の旅行のメインはミュージカル「ハウ・トゥー・サクシード」
2年連続上演される(た)ミュージカルで、昨年は大変好評のまま幕を閉じたそうだ。
そうだ、というのも、私は昨年チケット戦争で惨敗して観劇していないので、ネタバレになりそうなものは全て避けていた。雑誌のインタビュー記事すら意地になって読んでいない。
去年はそんな様子だったが、今年は運よくチケットがご用意され、ワクワクしながらも12/5(土)がくることを待っていた。
ネタバレの定義は人によって異なるのでくれぐれも注意して欲しい。

*

そもそも、去年の私が優秀だったおかげであらすじすら知らない。
観劇したフォロワーの盛り上がりと本舞台に関するリツイートの多さから、よほど"良い"ミュージカルなんだろうなと思っていた。


結果から言ってしまうと第1幕から仕事で見聞きしたアレやコレやを掘り起こされ、フラッシュバックしたソレに精神を削られ、コメディ・ミュージカルとは一体なんなんだ…?と幕間の短い時間で本当に真剣に考えてしまった。
あれ、もしかしてほかの人たちと世界線違う?と思うほどに。
以下、Wikipediaからストーリーを引用する。

しがないビルの清掃員であるフィンチは、ある日「努力しないで出世する方法」という本を読んだことから出世を強く意識するようになり、出世するなら大企業に入らなければならないという本の教えに従い、ワールドワイド・ウィケット社の郵便係に転職した。そこでの懸命な働きぶりに感心した郵便室長のトゥインブルは、自分の後任にフィンチを指名したが、彼は「会社の為を思って」と言ってその誘いを辞退し、社長の甥であるバドに郵便室長の座を譲る。実のところ、これも「郵便係は長く勤めるものではない」という本の教えによる行動だったが、彼の行動に感動した人事部長のブラッドの推薦で、企画推進部の部長代理の座を手に入れた。
その後もフィンチは本の教えに従い、話術や人脈を駆使して「努力」しトントン拍子に副社長にまで出世し、秘書のローズマリーとも恋仲になって全てが順調に進んでいた。しかし、彼が企画したTV番組で重大なアクシデントが発生し、責任を問われてクビを覚悟することになってしまった。フィンチの幸運もここで潰えてしまうのか?

ストーリーって所謂あらすじのことよね?と、手には少し大きいiPhoneを3度見ぐらいしてしまった。
長い。
思っている量の倍以上の文章がそこにはあった。

*

ハウトゥーが初めて上演されたのは1961年。
1950年代アメリカのサラリーマン社会を皮肉って描いているそうで、たった数年で社会は変わってしまうのだから70数年前なんていえばもはや「化石」ではないのか。四捨五入したら100年だし(?)

そうかぁ、皮肉か。
皮肉って言葉は知ってるけどなあ。
そうかこのミュージカルは皮肉ったものなのかー(棒読み)

とか考えながら「皮肉ってなんだ?」と、考える箇所はそこなのか論に至った。
大辞泉において皮肉とは「遠まわしに意地悪く相手を非難すること。また、そのさま。」ということだが、明るくキラキラとしててテンポよく進んだハウトゥーが?暗に社会を非難するミュージカルなの?という目からウロコ情報が飛び出してきた。え、コメディ・ミュージカルだよね?


ハッとした。
もしかして私が「コメディ」というものを履き違えているのではないか。


皮肉の意味を調べた大辞泉にはコメディの意味はこう記してあった。
喜劇。こっけいみや風刺を交えて観客を笑わせながら、人生の種々相を描こうとする演劇。

風刺!

漸く腑に落ちた。
そうかハウトゥーは風刺を効かせたミュージカルだったのか。

ハウトゥー側は予め提示していたのにも関わらず、言葉の意味をキチンと知らず、自分の思い描く「コメディ」という物差しではかり、かの劇が見せたかった本質を見ていなかった。
めちゃくちゃド真面目に本舞台を観ていたが、もっと肩ひじ張らずに、自分と重ねず、身を委ねてしまえばよかったのだ。
(まぁ正直それが出来ていたらなんの問題もなく、最後まで楽しい思いだけで観劇し終えたんだろうけどな)

正直、ここで話がどうだとか皮肉がー風刺がーと記したところで、増田貴久の顔面が強く美しく格好良かったことには変わりないのだ。

この記事が参加している募集

#舞台感想

5,880件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?