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ただ恋をしたい人は読まない方がいいと思う本『愛するということ』

私は恋愛ってくだらないものだと思っていたし、そもそも女子たちの恋愛話はまじでこの世で一番どうでもいいものと思っていたし、後者については今でも嫌いだ。

そんな私は、『愛するということ』を薦められて読んだ。

そして「愛するということ」は、恋愛関係に限らないものだとドイツの社会心理学者エーリッヒ・フロム(1900-1980)の『愛するということ(THE ART OF LOVING)』を読んで強く感じた。


著者の紹介を少ししておくと、エーリッヒ・フロムはフロイト(1856-1939)の影響を多く受けた。また、真に人間的生活とは何かそれを可能にする社会的条件とは何かを生涯を通して追求したヒューマニストとしても有名だ。

『愛するということ(THE ART OF LOVING)』は、1956年に出版された本で筆者の代表作であり世界的ベストセラーの一つで、「幸福に生きるための技術」である「愛する」技術を教えてくれる。

かみ砕いていえば、大切にしたい・愛したい対象への態度・向き合い方を教えてくれていると思う。でも、それを読んでうんうんなるほどなと思って読んだだけではきっと「愛する技術」は身に付かない。学んで実践することで、この本を読んだ価値は最大化する。

「愛する技術」を教えてくれるのがメインだが、それをわざわざ伝えるに至った
現代社会の愛の不在の原因となっている条件

本当の意味でだれかを愛するということ

愛する技術を手に入れるために必要なこと
がつづられていた。

今日はそれらを紹介していく。


人間の最も強い欲求は、
孤独を克服したいという欲求

人間が自然と一体感を抱き、自分を動物と同一視していた時代は、動物の仮面をかぶったり、動物神を崇拝していた。

だが、人類が原初的な絆から抜け出すにつれて、自然界から分離しても、孤立感から逃れる新しい方法を見つけたいという欲求が強くなった。

その方法が、お祭りの乱痴気騒ぎのような祝祭的興奮状態だ。原始的な部族に見られる多くの儀式がこの解決策を示しており、しばらくの興奮状態の中で、外の世界を忘れ、それとともに外の世界からの孤立感も消える。

こうした儀式は、共同でおこなわれるから、集団での融合感を得られ、結果的に孤立感を克服するのに役立つ。

一方で、
現代の社会において孤立感を克服する
もっとも一般的な方法
は、
集団に同調することだ。

習慣服装、思想などにおいて集団に同調すれば孤独という恐ろしい経験から救われる。

民主主義においては、集団に同調しないことも可能なのにも関わらずほぼすべての人が集団に同調しているのは、孤立したくないという欲求の強さの表れで、群れからほんのわずかでも離れる恐怖が理解できるだろう。そして人々は強制されて同調しているのでなく、自ら欲して同調している。

集団への同調によって得られる一体感は、前に述べた興奮状態のような強烈さはなく、おだやかで惰性的だ。そのため、孤立感から生じる不安を癒すのには不十分なのだ。

このように、現代社会において孤独を克服するために集団に同調したとしても、根本的に孤独感を拭い去ることはできない。それでも現代において、コミュニティーに所属しているだけで孤独感を克服しようとして、虚しさを抱えている人は多いんじゃないかと感じた。

本当の意味で
誰かを愛するということ

愛とは、特定の人間にたいする関係ではない。(略)世界全体にたいして人がどう関わるかを決定する態度、性格の方向性のこと

このようにフロムは、特定の対象にのみ向けるものではなく、世界全体に対しての態度のことを示していると述べている。

誰かに「あなたを愛している」ということができるなら、「あなたを通して、すべての人を、世界を、私自身を愛している」と言えるはずだ。

と。

そんなふうに考えられたらすごく豊かだと思う。最後に「私自身を愛している」と言えるのもすてきだ。私もこんなふうにだれかを愛したいと思った。

このように「愛の対象」全体のことも書いてあるが、その中でも兄弟愛母性愛、異性愛についても分けて記してあるので、細かいところはぜひ本を読んでみてほしい。


「愛の技術」を手に入れるために
必要な4つのこと

愛の技術に限らず、数学であろうとバスケであろうと特定の分野の技術を学ぶには共通して大事なことがある。

一つ目が、「規律」だ。
「気分が乗っている」ときにだけやるのでは、絶対にその技術を習得することはできない。

また、その規律は外から押し付けられたものでなく、自分自身の意志の表現となり、楽しいと感じられ、その行動にすこしずつ慣れてゆき、それをやめると物足りなく感じられるようになることが重要だ。

二つ目は、「集中」だ。
現代社会の集中の欠如を一番よく示しているのが、一人でいられないという事実でほとんどの人がおしゃべりもせずに、本も読まず、音楽も聴かずじっと座っていることができない。

また、フロムが言う「集中」とは、「いまここで、全身で現在を生きること」で、「自分にたいして敏感にならなければ、集中力は身につかない」とも述べている。

たしかに、目の前のことや人、自分自身に向き合えなければ集中しているなんて言えないだろう。

そして、三つめは「忍耐」だ。

結果をすぐに求める人は、絶対に技術を身につけることはできない。ただ、現代の産業システムのなかでは「忍耐」とは反対の「速さ」が求められ評価されている。

多くの現代人は、速く手に入れられるわかりやすい結果を求めるし、そういうことができる人が評価される社会だと思う。

そして、最後の一つが「最高の関心を抱くこと」だ。これがないと、今まで出てきた「規律」「集中」「忍耐」を維持することはできないだろう。

最高の関心を抱くことができれば、日常生活から「規律」「集中」「忍耐」を鍛えることができ、それは「愛の技術」だけでなく、他の分野の技術習得にも役に立つと思う。

何をしていても、誰と居てもなんとなく虚しさを抱えているなら人から愛されるための身だしなみや態度を学ぶのではなく、もっと本質的で主体的な愛する技術を学んでもいいんじゃないかと思う。

『愛するということ』は、何度も何度も読んで少しずつ理解していく本だと思う。だから、今すぐ恋人がほしいという人が読んでもがっかりするだけだろう。「愛する」ということはどういうことなのか知りたい方はぜひ読んでみて下さい。

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