エイプリルフール に 。

人は、嘘吐きだ。

そして、類に漏れず
彼も 嘘吐きだ。


今、私が立たされている状況を、『 エイプリルフール 』という言葉で片付けられるとしたら…どれだけ良かったろう。

行動心理学上、人が嘘を吐く時は、幾つかのサインがあるらしい。
・相手に顔を見られたくないので、顔を隠したがる。
・偽物の笑顔を作る。
・まばたきが多くなる。
・髪や髭をいじる。等。
そして、彼の嘘は、それらを参考にせずとも分かりやすい。
話し始めには決まって、深呼吸をするかのように、大きく息を吸うのだ。

これまで、幾度となく、饒舌じょうぜつに話す嘘に騙されてきてあげたのは…
いつか、私の元へ帰ってきてくれるだろうという、驕おごりにも似た願いだった。

それなのに 今、私の顔をじっと見て、淡々とした口調で、好きな子が出来たから別れて欲しいと言う。

   返信が遅い LINE 。
   予定の入ることが多くなった 週末。
   キスさえもしてくれない 唇。

いつから、この人の口は、嘘を吐くだけのものになってしまったんだろう。

誰が見ても、どちらが本命なのかは一目瞭然。

それでも、裁判官は 私の筈だったのに…


しかし、無常にも審判は 下された。
そこに もう、深呼吸は無かったのだ。

腕時計に視線を落とす。

「 よかった。
私も…
別れたいと思ってたよ。」

0 時になる前に…
彼の顔を見ず笑顔でそう言って、私は 席を立った。



◌ 補足
それまでは嘘吐き続けていた彼が、エイプリルフールの日に限っては嘘を吐かず…
嘘を吐いたのは、彼女だったというオチです。

小説なんか、久しぶりに書いたから…
補足でもないと、分かりずらかったよね ՞