母に寄せて。
味覚も、遺伝するらしい。
母の好きな食べ物の一つに、赤飯があるのだが…
「 おばあちゃんが、好きだから 」
いつもそう言って、赤飯を炊いていた。
幼い頃、少食で食べるのも遅かった私には、冷めても硬くなりにくい赤飯が、とても救世主に感じられて…
それだけで、好んで食べていたと思う。
そう言えば、母の口から
「 赤飯が好き 」
という言葉を、あまり聞いたことがない。
代わりに挙がるのは…
私が好きな肉じゃがや、父が好きな野菜が沢山入ったカレー、妹の好きな茶碗蒸し。
母が好きな筈の湯葉は、稀に食卓に並ぶくらいだ。
ちなみに、父が好きな、父が捌く お刺身は、台所が魚臭くなるからという理由で挙がらないのだが…
これは割愛しておく( 笑 )
ともあれ、母が好んで作ってくれるメニューは いつも、自分が好きなものというより、家族の誰かが好きなものであったことに気付かされる。
フルタイムで、時に残業をしながら、家族の為に、家族の好きなメニューを作る。
一人分でさえ 言い訳をしてサボりがちな私には、到底真似の出来ることではないし、そんな母に、幾つになっても頭が上がらない。
いつか、きっと私も
「 おばあちゃんが 好きだから 」
と言って、赤飯を炊くのだろう。
そうやって、私の中に組み込まれた遺伝子は、そっと引き継がれていくのだと思う。
帰省した際
「 何が食べたい? 」
決まって母は、嬉しそうに尋ねる。
今度は、
「 肉じゃが! 」
と言いたい気持ちを抑えて
「 お母さんが、好きなもの 」
と答えよう。
母の好きな、カヌレをお土産にして…
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