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『 赤い蝋燭と人魚 』 絵本のすすめ。

4 月 23 日、子ども読書の日。

幼い頃より、本に囲まれて生活してきた。
多感な時期こそ足は遠のいていたが、図書室や図書館に通い、それなりの本を読み漁ってきたと思う。
そして、私の本好きの原点は 絵本であり、未だ大好きである。


そんな中、好きな一冊を問われたら
   小川 未明みめい 
    『 赤い蝋燭ろうそくと人魚 』
げるだろう。

小川 未明は、小説家・児童文学作家。
「 日本のアンデルセン 」「 日本児童文学の父 」と呼ばれ、浜田広介・坪田譲治と並んで「 児童文学界の三種の神器 」と評されている。

   人魚は、南の方の海にばかりんでいるのではありません。北の海にも棲んでいたのであります。
北方の海の色は、青うございました。ある時、岩の上に、女の人魚があがって、あたりの景色を眺めながら休んでいました。
   雲間かられた月の光がさびしく、波の上をてらしていました。どちらを見ても限りない、物凄い波がうねうねと動いているのであります。
という、どこか おどろおどろした怖い話にも思える語り草で始まる この物語は…
1921 年( 大正 10 年 ) に発表された創作童話。

『 人魚 』という民間伝承にる実在しない生き物の話な為、実に幻想的で、読む人の心を一瞬でき付ける。
    蝋燭に、一心に絵を描く 人魚。
    香具師こうぐしが、人魚を買いにきた 夜。
    荒れ狂った 海。
これらが容易よういに想像でき、絵本や童話に似つかわしくない結末に、子供心に軽いトラウマを覚えたほどだ。

そして、大人になった今、改めて読み返すと…
情緒面の表現が、非常に丁寧に描かれている。
全体を通して陰鬱いんうつとしているのは紛れもないが、物悲しく、悲哀ひあいに満ちていた。
又、子供の頃感じた 怖さが、ぞくっぽいものではなく、人間にひそむエゴイズムや異形の者が抱く怨念おんねん
また、対する奇異きいの目、差別意識・排他はいた的意識。
女の人魚が、人間に自身の子供の成長と幸せを託した 身勝手さだったことに気付く。


果たしてそれらが、どんな悲劇を生んだのか…
時をて現代の我々に投げかけているものも含め、今一度 賞翫しょうがんしてみてほしい。


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