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ささやか物語⑧小不幸少女と幸福

こんにちわ。ミミです。

今日はミミのともだちのささやか物語。

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透き通るような白い肌。

ふわっとパーマのかかった柔らかい髪。

ドクターマーチンとプチプラのチュールの黒いワンピを着て(ミミの学生時代はマンガのNANAが流行っていた頃で、ゴツめの靴にモードな装いが流行っていた。)

つぶらな瞳と薄い唇が可愛らしく。

小柄で華奢で小動物のような子。

通称イヌちゃん。

学生時代のミミの友人だ。

性格もおしとやかで可愛いイヌちゃんは同期や先輩からも注目されていた。

ミミとイヌちゃんはなぜかシンパシー的なものが似ていて、学科が違ったが、よく一緒に遊んでいた。原宿や渋谷をプラプラして、可愛くてお洒落なものをハントする。

美容師やファッション業界の友人を作ろうとイケイケな場所に参戦して、あっけなく散った日もあった。

こんな青春の相方。華やかなイヌちゃんには1つ面白い特徴があった

イヌちゃんは…めちゃくちゃ不幸少女だったのだ。

なんだろ波乱万丈な感じというよりは

小不幸が多い。遊んでいると、びっくりするくらい。

カフェでコーヒー頼めば、なぜかイヌちゃんは違うものが届く

うまく来たかと思うと、スプーンがめちゃくちゃ汚い

よく躓き、小さな虫(リアル虫)が寄り付いて離れない。

男運もびっくりするくらい悪くて、よく彼氏に待たされていたり、ひどい時は騙されていた。

詐欺にあって、美容費やたら高いの吹っかけられたり。

「イヌちゃん、小不幸日記書きなよ!」

と言いたくなるほど、小さな不幸が舞い降りるのだ。(小馬鹿にしているのでは無く、自他共に認める珍事が起きるのだ。本当に)

子不幸少女。イヌちゃん。

そんなイヌちゃんと卒業後はたまに会うくらいで3年くらいお互い東京で仕事に勤しんでいたが

イヌちゃんが地元で就職が決まり地元に帰る事になった。気軽に遊べる相手がいなくなってしまうのは寂しい。。

が、これはイヌちゃんの希望する業界であったから、幸福が舞い込んだのだ。

イヌちゃんが地元に行ってからも度々、イヌちゃんの出張の度に東京でご飯をしていた。

東京で会う度に近況報告などをしては、ケラケラと笑って、毎度、子不幸伝説を残しては、頑張ろうねって誓い合って別れるのだったが、


この日のイヌちゃんは違った。


あった瞬間から何か落ち着きがあるシックな女性であった。黒のモダンなロング丈のワンピにシンプルだけど良く手入れされた革靴と、お洒落なPCが入るかわのバッグを持っていた。

席について、注文通りの食事が運ばれ、食器も問題なくセットされた

次の瞬間。

『私ね。結婚するの』

と。イヌちゃんの薄い可愛いらしい唇から、恥ずかしげに発せられた…

「おおおおめでとぉぉぉ!!!」

と店に響くくらいの声がでた。

そう。この日のイヌちゃんは全然面白くないくらいに不幸がないのだ。

むしろ幸の塊だった。

結婚が幸せのゴールとは言わないが、

イヌちゃんは確実に<子不幸女>を卒業していた。

美しかったし、たくましかった。何かを決めた眼差しが。

よく、不幸の分だけ幸せが来る

なんて言うが、

不幸が小さく小さく積もって、大きな幸福を手にするパターンもあるのだなぁ

とイヌちゃんを見て思った。

イヌちゃんはそれ以来 不幸はありつつも

幸福な顔を見せることが増えた。

でも誰だってそうなのかも知れない。

今の我慢や不幸がいつか来る幸福の為なら

悪くないかも。




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