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魔王の二つの答礼――『ジョーカー・ゲーム』、結城中佐と小説とアニメの間

〈目次〉
序 「貴様……調べたな?」
1 交叉するXX(ダブル・クロス)
 (1)犯人と動機 
(2)狂気と陰謀
2 ねじれるXX(女性)たち
 (1)入れ替わるヒロイン
 (2)傷痕を残した女
3 〈死/私〉を与える――魔王の二つの答礼結 魔王の影

序 「貴様……調べたな?」

 つい先頃最終回を迎えたTVアニメ『ジョーカー・ゲーム』は、その雰囲気・人物共に渋く格好も良く、まさに燻し銀の魅力を満載したまま、それを一貫して失うことなく幕を下ろすに至った。初出を小説誌『野生時代』にもつスパイ・ミステリーの原作小説は、単行本(文庫)一冊あたりに4~5本の独立したエピソードを収めているため、ボリュームから見ればそれぞれが短編に分類されるのだろう。すでに実写映画化もされてはいるものの、原作小説の長さにフィットするのは、むしろTVドラマやTVアニメであるように思われる。実際、TVアニメ・シリーズは、おおむね原作に忠実に作られていることから、アニメを見て原作を読むにせよ、原作を読んでからアニメを見るにせよ、そこで「再現」されているかのように見えるTVアニメは、原作小説のヴィジュアル化において、非常に高い完成度を誇るものだったと言えるだろう。

 そこでこのエントリーでは、TVアニメ『ジョーカー・ゲーム』より第12話(最終回)「XX ダブル・クロス」を採り上げて、アニメとその原作小説のあいだで加えられたアレンジ(変更点)を整理したのち、両者の違いに注目しつつ、それぞれの物語について検討してみたい。

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