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[物件] #眠れない夜に

庭園を歩く。
一面石畳のだだっぴろい庭である。
ごつごつと苔むした石を踏みしめて歩く。

と、ぐらり。
大地が揺れて、
すわ地震かと辺りを見まわせば、
行く手にしゃもじのような形の土塊が、
むくり。

盛り上がり、
ゆっくりと振り返ったそれには目があった。
重そうなまぶたを持ちあげて、
奥まった目でこちらをじっと見る。

石畳だと思っていたのは、甲羅なのだった。
たたみ十畳ほどはある、亀の甲羅。

と、ふいに男がやってきて、
「お買い得ですよ」と早口で言う。
ここと、あちらと、そちら。

男が示す先をよくよく見れば、
巨大な亀が何匹も。
ここは十畳、あちらは六畳、
その向こうは二十畳の大広間。

男は不動産屋であるらしい。
亀は不動産物件であるらしい。

なんともはや。
呆然としていると、また、ぐらり。

こんなにぐらぐら揺れるのに、
不動産とはこれいかに。
これでは「動産」ではないでしょか。

ぶつぶつ文句を言う私に耳寄せ、男が返す。
え、ぞうさん?
目を輝かせて、揉み手をする。
象がお好みでしたか。
ありますよ、象さん物件。

いや、あの、そうではなくて。ね……。

 
 
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先日友が「巨大な招き猫」の話しをしてくれた。
目を輝かせて語るので、ネットであれこれ検索し、
無数の招き猫を鑑賞。
そうしたら、こんな夢を見たのでした。

猫がどうして亀になったのか。
あまりにもくっきり奇妙な夢だったので、
すっかり目が冴えて。
#眠れない夜に  

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