見出し画像

読めない。

ここ数年、いつも思う。
思わず呟いてしまう。
ちっさ。
新聞に掲載される「大学入学共通テストの問題と解答」の文字の大きさ、いや、小ささに驚いて。
たぶん10代20代なら、なんてことないんだろう。たとえ近視や乱視であっても、メガネやコンタクトを使えばちゃんと読めるだろう。実際、わたしだってそうだった。文庫本だって菓子袋の裏書きだって裸眼で読んでいた。

それがいつからか、ん? あれ? という事が増えて、もう老眼だからさあ、なんて自嘲混じりに言い始め、気づいてみれば、老眼鏡や拡大鏡が手放せない。

この「小さな文字が読めない」っていうのは、こうなってみて初めて分かるのだけど、ほんとうに「読めない」のだ。自分の親が老眼になっていく様を見ていたから、トシを取るってそういうもんだ、とは思っていたけれど、なってみて、驚いた。「読みにくい」とかいう問題ではなく、
この新聞の文字なんか芥子粒が散らばっているようにしか見えなくて、そりゃあもうびっくりするほど。

もちろんこの「大学入学共通テストの問題と解答」は、対象者が絞られているから、このフォントサイズで構わない。紙面の制限もあるのだから、詰め込むのも仕方がない。
でも。

たとえばカップ麺やインスタント食品の説明書きとか、瓶詰めや缶詰の賞味期限とか、洗剤の容器に記す使い方とか。
どうしてこんなに小さな字なの、と思うもののなんと多いことか。せめて肝心なこと―たぶんほんの数行―だけでも、もうちょっと大きくできないものなのか。

製品を開発し作っている人たちは働き盛りの年代だから、たぶん「小さな文字が見えない」っていうことの不便さは、想像がつかないものなのだろう。(わたしだって、若い頃には想像もしなかった)
でもだからこそ。
自分で実感できなくても、お母さんやお父さん、おばあちゃんおじいちゃんに製品を見せて、「これ読める?」「これ分かる?」って訊いてみてはいかがだろう。

高齢者が増えて、バリアフリーやユニバーサルデザインが求められる時代、様々な研究や開発が必要で大変な世の中だなあって思う。でも、まず必要なのはこんな小さなことだったりする。ほんのちょっとの想像力と、ほんのちょっとの工夫で解決できるはずのこと。

それにしても。
この「大学入学共通テストの問題と解答」の、こんなちっちゃな字を難なく読めるなんて。
いいなあ、羨ましいなぁ。
ほんと。
若いってすばらしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?