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余 白(掌編・夢日記・うそ日記)

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ほんの余白ほどの、 ちいさなものがたり。 あるいは、夢日記。 はたまた、嘘日記。 (写真と共に)
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記事一覧

暁の夢

怖い夢 を見た。 部屋のあちこちにネギが。 5cm程に筒切りした長ネギが。 何?と思ったその時カーテンがふうわりと。 閉めたはずの窓がわずかに開き、 射し込んだ月光の中に透明の小さな箱、 中には筒切りのネギひとつ。 だ、誰!! 叫んで目覚め、驚くミメオに説明したら爆笑された。 ほんとに怖かったのに。 ----------- 写真と内容は無関係です(笑 今年は紫陽花が早すぎて、もう梅雨の佇まい。 まだ5月なのにね。

宵月

キッチンで豆乳をあたためる間に 何やら気配がして窓に寄り カーテンをあける、と。 月。 目の前に、月。 窓いっぱいの月。 あまりのことに驚いて声も出ず 軽く会釈し窓におでこをぶつけたのち 慌ててカーテンを閉めキッチンに戻り なにごともなかったように 豆乳を飲む 宵月の、宵。 ------------ 月のこよみを調べたら、 本日は「宵月」(よいづき)。 宵(日暮れから暫くの間。夜の始まり)の間だけ見える月。 確かに、いつもより早い時間に低い空に浮かんでいて、 追いかけて走

赤い月の列車

荒野の真ん中に、唐突に鉄塔が立っている。 錆色の鉄塔は、まだ建てている途中で、 その足元には、大勢の人々。 何を作っているのですか。 駅です。 駅? そう、「赤い月の列車」の駅。 五年に一度、赤い月の晩に、列車がくるという。 天空を走る列車が。 その列車の停まる駅が、ちょうどあの鉄塔の先。 その日のために、その列車に乗るために、 みんなで鉄塔を建てている。 あの天空にプラットホームを作るのだ、と。 空の果てからふいに現われ、 蒸気をはきながら、やってくる列車。 赤い月に

失なわれた夢

深い、深い森を走っていた。 青い植物の匂いが、まとわりつく。 柔らかな土。 朽ちた葉。 わたしは何かに追われているのだ。 誰かにずっと追われている。 それが何なのか 誰なのか、 まったく分からないのだけれど、 とにかく切羽詰まっている。 ふいに森が途切れる。 と、 そこは断崖絶壁だった。 のぞきこむと、 どこまでも深く、果てしない。 底は海なのか陸なのか、 それさえも分からぬ程の、 蒼褪めた空洞。 どうしよう。 立ち尽くしていると、追っ手の気配。 どうしようどうしようど

ベランダに棲む蟹のことで

 ベランダに棲む蟹のことで、ご相談申し上げます。  数年前より、私の家のベランダには蟹が棲みついております。  五センチほどの、横長の甲羅をもった真っ赤な蟹。  山蟹です。  まいとし春になると、子を孕みます。  泡立てたシャボンのような卵が、両の鋏をすっぽりと覆い、  しばらくのあいだ蟹は万歳をしたままの恰好で、  ベランダの角の日陰にひっそりと身を隠します。  が、ある日とつぜんシャボンは消えて、  小さな山椒の実のようなものが、  辺りにぱらぱらと散らばるのです。

あのキリンの背に乗って

夜明け前の商店街。 閉ざされたシャッターは、どれも錆びついて、ペンキが剥げ落ち、 今にも朽ち果てそうなものばかりだ。 長い長いその商店街を、右に行けばいいのか左に行くのか、 迷ったまま立ち尽くしていると、 ふいにキリンがあらわれた。 破れたアーケードに、くいっと長い首を突き出して、 たたっ、たたっ、と駆けてくるキリン。 黄色と焦げ茶色のまだら模様を、 夜明け前の薄闇にぼんやり溶かし、 たたっ、たたっ、と足音をたてて。 みつけた。 どうやらあたしが探して

水の夢

水の夢をよく見る。 流れの速い大きな河を、 さかなの群れと泳ぐ夢。 天にそびえ立つほどの波の夢。 水深200mというプールの夢。 いたるところに水路がある海底都市の夢や、 車も電車も船もなく、 移動手段はすべてウォータースライダーという 古代都市。 状況や設定はさまざまだけれど、 水の夢すべてに共通するものがある。 それは、匂い。 水の匂い。 そして、手触り。 感触とでもいうような。 どんなに澄んでいようとも、 水には匂いがある。 水の匂いとしか言い表せないような匂い

月夜の夢

扉をあけたら 風呂場いっぱいに 月見草が咲いていた。 #眠れない夜に

[物件] #眠れない夜に

庭園を歩く。 一面石畳のだだっぴろい庭である。 ごつごつと苔むした石を踏みしめて歩く。 と、ぐらり。 大地が揺れて、 すわ地震かと辺りを見まわせば、 行く手にしゃもじのような形の土塊が、 むくり。 盛り上がり、 ゆっくりと振り返ったそれには目があった。 重そうなまぶたを持ちあげて、 奥まった目でこちらをじっと見る。 石畳だと思っていたのは、甲羅なのだった。 たたみ十畳ほどはある、亀の甲羅。 と、ふいに男がやってきて、 「お買い得ですよ」と早口で言う。 ここと、あちらと

ひゅるり。(今朝の夢)

夢の中の夢の中の夢の

蕎麦屋 (百文字文学)

     お品書きに、小ざる、とあった。      親子丼とこれひとつ。            運ばれてきたのは、小猿だった。      椀の中に、ちょこなんと。            帰り道、鼻歌まじりに歩いていると、      鞄から調子っぱずれな歌が聞こえる。      ものまね小猿であったらしい。 #百文字文学

ゆめうつつ。

眠りに堕ちてすぐ、夢を見た。 夢の中のあたしは、ちょうど今布団に入ったところで、 そういえばパソコンの足元の暖房を消しただろうか、 と、思っているのだった。 夢ウツツでそう思っているのではなく、 しっかりとした夢の中で、そう思っていた。 はっと目覚めて、ああ夢か、と思う。 パソコンの足元の暖房は、部屋の明かりを消す前に、 ちゃんと確認した覚えがある。 だから、消しただろうか、などと心配しなくて大丈夫、 そう思いながら、再びとろとろ眠りに就いた。 と、またも夢を見た。

剥がす

今朝の夢。 手の甲に、ぺたりと張りついたセメダイン。 乾いてがびがびになったので、 ぺろーんと剥がす。 と、剥がしたところが、銀色に。 アルミのような、鋼鉄のような。 どうやらあたし、 実はロボットだったらしい。