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白日夢(写真と詩歌物語)

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気になる詩歌・小説・随筆・言の葉に写真を添えて。
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#詩

『明日食べられるのだ、と牛は言った』

もし自分が、死んだあと誰かに食べられるさだめなら。 最後には誰かに食べられる命だとしたら。 どんな心持ちで生きていくのだろう。 まあ、たぶん。 たいていの牛や豚や鶏は、 そんなさだめなど知らずに生きているのだろうけれど。 でも自然界には、 喰うか喰われるかで生きているもの達もいるのだから、 そんなイキモノたちは、 自分もいつか喰われるのだろうと知っているのかもしれない。 いつ、どんなふうに、命を終えるのか。 無になるのか、どこにいくのか、生まれ変わるのか。 そんなふうに思い

おひめさま―こどもの詩―

ママ はやくおひめさまに なれるといいね だって おひめさまは おこらないんだよ ---------------------------------------- 2019/02/06 読売新聞 こどもの詩 幼稚園年少 出来村芽衣  そうか。 苛々したり、切れそうになったら、唱えればいいんだね。 胸の中で、そっと。 わたしは、 おひめさま。 ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ ところで。 見出しの写真は、ワインのラベル(エチケット)。 おひめさま、というより、

喰らう

浅漬けである。 残念ながら、あたしが漬けたのではなく、 買ってきたもの。 これで100円ちょっとである。 市場の八百屋の片隅に、 無造作に積まれて売られている。 漬け汁ごと、ビニール袋に入れられて。 商品名など、なにもない。 製造者と賞味期限が、シールでぺたんと貼られているだけ。 かぶは丸ごと、だいこんは鉈割り、 小なす一本、 にんじん、きうり、二分の一本。 土から抜いて、凍えるような水で洗い、 ざっくり切って、漬けただけ。 そんな浅漬け。

午睡

どこからか小さく流れているテレビの音が遠くなり 縁側に置き去りの皿には赤い汁と薄緑の皮と黒い種 かたかた扇風機の羽の音に夢の走馬燈は廻りつづけ 微かな風と戯れて風鈴の金魚しどけなく尾を揺する                      ちり……ん

はまぐり (朗読作品)

はまぐりを買う。 こぶりのはまぐりである。 あさりより、少々大きめか、 というほどのものを、ひと袋。 潮汁にするには多すぎるので、 酒蒸しにしようと、 家に連れ帰ってきた。 なんにせよ、まずは砂出しをしなければ。 銀色のボールに水をはり、 塩をはらはら振りかける。 人さし指で舐めてみて、 塩辛い、 というほどの塩水を作る。 そこへ、はまぐりを、 そっと沈める。 亭主とふたり、 頭をつきあわせるようにして、 じっと見る。 銀色のボールを

『白い白い木蓮が……』サトウハチロー

『白い白い木蓮が……』    サトウハチロー 白い白い木蓮が ひとつほっかり 咲きました ためいきみたいな 白さです モワッとしている 白さです だからホワッと  さびしいんです 白い白い木蓮が 春の顔して 咲きました 「おかあさんの匂い」や「ちいさい秋みつけた」。こどもの頃に歌った懐かしい歌(詩)。みんなサトウハチローさんの詩だったんですよね。 目次が載ってます↓

フライパンで

フライパンで釘を打つのは難しい。 という今朝の夢を思い出したところで、思い出した。 ずっと前の「こどもの詩」(読売新聞 2019/10/16) 『2歳の弟』 弟はフライパンが好き お母さんが取れないように 高い所にかけておいても 台にのぼって取ってしまう そして 私たちの頭をたたきに来る!   茨城県ひたちなか市・高野小5年 諏訪萊叶(らいか) 夢より現実のほうが、よっぽどシュール!

愛する歌 やなせたかし

あるいちにちがあった うみをながめていた ただそれだけのことなのに そのひのことを おぼえている ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ ༶ 詩集 愛する歌 やなせたかし https://amzn.to/39pk5up

「海に来て」

「海に来て」 まど・みちお 海に来て 「おーい」と言うて もう一度 「おーい」と言うて する事がなくなった