涙が ぽろり
8月17日(土)
朝、目が覚める。まだ眠い。勇気を出して むくりと起き上がる。
玄関の戸を開けて朝のぜんぶに「おはよう!」と、あいさつをする。
カカオにミルクをあげる。
ウーちゃんとルーちゃんにエサをあげる。
修一郎の食事を用意する。
今日も こもれびの森に行く。
支度をして ごはんさんとしゅっぱーつ!
ずっと朝早く出ていたが、今日はお昼前に出た。途中で地元で人気の天ぷらやさんに寄る。
カウンターに座る。
ごはんさんは定食を、私は単品で食べれるものを注文する。
注文を聞いてくれた外国人の女性が最後に
「さかいみるさんでしょ。」と言った。
びっくりした。全然知らない人だった。
「そうです。」と言って ぽかんとしていると、
「Facebookでいつも “いいね“ しています。」
と言ってくれた。
「ありがとう。出身はどちらですか?」と聞くと、
「ネパール。」と言った。
自分の顔がゆるむのが分かる。ネパール。懐かしい。
料理が運ばれてきた。天ぷらの衣を少し剥がす。天つゆは ごはんさんに渡して、お塩を振っていただく。
ごはんさんと何度も
「おいしいね。」
「うん、おいしいね。」
「ぜんぶおいしいね。」と言いながら、もぐもぐ食べる。
おなかいっぱいになって、しゅっぱーつ!
道中の田んぼがきれい。山がきれい。空がきれい。
到着。
しばらくしてTさんがみえた。
みんなでお話をする。その中で、Tさんが大のカメ好きだということが分かった。びっくりした。ごはんさんと私も大のカメ好きだ。
カメの中でもTさんは淡水のカメが特に好きで
”淡水亀研究会“ という会に参加している。
ごはんさんと私はリクガメが特に好きだ。
3人でカメのことを熱く語りあう。カメの話が延々と続く。すごくおもしろい。
用事を済ませ片付けをして帰路に着く。
荷物がたくさんあった。一旦荷物を置いてからお買い物に行くことにする。
家に帰り着く。ごはんさんに荷物を運んでもらう。
「またあとでね。」と言って家の中に入る。
カカオがトコトコ走り寄ってきた。
実はカカオの調子が悪い。ミルクを少し入れてあげる。しゃがんだ私の膝に乗って じっとしている。
外に出るとカカオもついてきた。庭に出ていた ごはんさんが手を振ってやってきた。
ごはんさんの姿を見たカカオが、ごはんさんのそばに行って足に すりすりして甘えている。ごはんさんが優しくカカオを撫でる。
車の中に忘れていたものを持って家に戻る。もう一度庭に出ると、ごはんさんの庭で座り込んだ ごはんさんとカカオがいっしょにいた。
そばに行く。
カカオが しゃがんだ私の長靴に頭を乗せて寝そべる。ごはんさんがカカオの頭や足や しっぽを撫でてあげる。
ごはんさんが地べたに足を伸ばして座った。私も同じように座った。カカオは私に ぴったりとくっついている。
ごはんさんがカカオのことをとても心配してくれている。しょんぼりしている私のことも慰めてくれる。
カカオがわが家にやってきて1年くらい経ったとき、調子が悪くなり「もうダメでしょう。」と言われたことがあった。1ヶ月くらい全力で看病して元気になった。
今まで何十匹も猫をみてきた。”病院に連れていった方がいいとき” と、”連れて行かない方がいいとき” がある。今回のカカオの場合は後者だった。
きゅうりさんが通りかかった。みんなで少し話す。
きゅうりさんが帰り、座ったまま ふと空を見ると桃色の雲が目にはいった。そのとき、
「あの雲すごくきれい。ほとんど止まってる。」と、ごはんさんが言った。
「うん、すごくきれいね。」と、私。月も出ていた。少し朧げでそれもとても美しかった。すると、
「月も出てる。きれい。」と、ごはんさんが言った。
ごはんさんと私とカカオで ずいぶん長い時間 座り込んでいた。暗くなってきた。お買い物に行くために立ち上がる。
「そろそろお買い物行こう。」と ごはんさんに言う。
「大丈夫?」と、ごはんさんが心配そうに言った。
「カカオ、行ってくるよ。」と言う。じっとこちらを見ている。涙が ぽろりとこぼれた。胸が きゅうっとなった。ごはんさんがまた慰めてくれた。
修一郎に頼まれていたコーヒーやお弁当などを買う。
家に帰り着く。カカオはいなかった。
修一郎に「カカオ調子悪いね。」と言う。気がついていなかったようでびっくりしていた。
書き物をする。
「みるさん、カカオのことで頭がいっぱいでしょう。」と、ごはんさんが言った。
「うーん。」と言って、ちょっと笑った。
夜、星空がとてもきれいだった。月もきれいだった。夜空のすべてが愛おしかった。夜のぜんぶに「おやすみ」を言う。
今日もいい一日だった。