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私、ミキオ先輩の総理大臣に就任しました Vol.7「総理のきけんな決断」
人間には簡単に決断できることと、簡単には決断できないことがある。カシオの時計を一つ買うくらいのことなら何のためらいも要らないにしても、ニワトリを一羽飼うかどうかはなかなか即決できない。さまざまな価値基準が邪魔をするからだ。
いま、私はミキオ先輩からの電話で、武器をもつかと尋ねられていた。
「総理、ご決断を」
けれどこれも簡単に決断できることではない。
「……バイクとパソコンは、無事に取ってき
私、ミキオ先輩の総理大臣に就任しました Vol.5「取引は成立したか」
フォークでペペロンチーノを巻く間、私はぎゅっと口を閉じ、鼻呼吸もしないように注意した。
怪物のいる場所では、なるべく呼吸をしたくなかった。
たとえば、今夜みたいに居間で食事を三人でしなければならない時はなるべく下を向き、食べ物が口に入る瞬間以外は口を開けないように気をつけた。
いつだって怪物は私を見ていた。私がいる時は、もれなく私を見ていた。私の髪の先から足の先まで、いまにも飛び出しそ
私、ミキオ先輩の総理大臣に就任しました Vol.3「対話はファンタジーか」
自分がからっぽになったみたいな朝だった。落ちるところにまで落ちたら、人間はがらんどうになる。頬の痛みすら、「これは私の頬の痛みであって私の痛みではない」と分離することができる。あらゆることが他人事だった。手の甲がまだずきずきと痛んでいた。
母にさんざんぶたれた後、怪物は私に近づき、今後二度と同じようなことをしないように印をつけておかなくては、と言った。そして、ペーパーナイフで私の手の甲をぐさり