趣味日記:映画クレヨンしんちゃん勝手にランク付け その3

前回の記事「映画クレヨンしんちゃん勝手にランク付け その2」の続きです。

案の定久々の更新になってしまいましたが、今回もクレヨンしんちゃんの歴代作品を勝手に批評し、ランク付けしていきます。

「その1」で紹介した1~10作目が本郷監督と原監督による「黄金期」、「その2」で紹介した11~20作目を2年毎に監督を交代させたけど上手くいかなかった「暗黒期」と表現しました。
さて、これから21~30作目までを紹介しようと思いますが、この10年間はまさに「復活期」と言って良いのではないかと思っています。
それでは、今回も勝手にS~E評価でランク付けをやっていきます。

映画クレヨンしんちゃん復活期(21~30作目)

21.バカうまっ!!B級グルメサバイバル:A

橋本昌和監督作(2013年)。
B級グルメカーニバルなるお祭り会場に子どもたちだけで向かう途中、伝説のソースを託され、そのソースをめぐる戦いにカスカベ防衛隊が巻き込まれていく冒険もの。
ソース・酢味噌のエンドレスしりとりもおもいしろいし、全体的にマサオと風間君の使い方がうまい。劇画や疾走等の定番要素も外さない。コメディあり、感動ありの王道しんちゃん。
シロVSピギーちゃんも見もの。後半の幹部3人とのバトルも熱いものがある。敵も魅力的で、グルメッポーイのコンプレックスがすべてのきっかけとして描かれるが、なんだか彼には同情したくなる。最後歌って焼きそばを作り、グルメッポーイすらも救う演出は多幸感が出せている。
友情回で、家族愛成分は無いが、テンポの良い痛快な冒険活劇に仕上がっており、あっぱれ戦国以来10年ぶりの良作と言えるでしょう。堂々のA評価。
「こんな天気のいい日に働かなくてもとーちゃんの代わりなんていくらでもいるぞ。でも、オラを焼きそばに連れてってくれるとーちゃんはとーちゃんしかいないぞ。」byしんのすけ

22.ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん:S

高橋渉監督作(2014年)。
これは伝説級の作品。脚本がすげー。全父親必見の作品。いわゆるパターナリズムとか、亭主関白とかを含む父親の存在自体に焦点を当てた作品。
エステに行ったらロボットになって帰ってきたヒロシ。
このロボとーちゃんはヒロシの人格を完全にコピーしているので、全力でしんのすけの父であろうとする。それによって生じる切なさを描いている。いつものおちゃらけた作風ではなく、全体的にものものしい雰囲気が漂っているので、そこはしんちゃん映画としては評価の分かれるところか。ジャンルは違うけど、テーマの重厚さでいったらあっぱれ戦国に近いかもしれない。
全体を通して腕相撲がキーワードになっていて、ラストシーンの伏線にもなっている。そしてなんといっても朝日をバックにしたラストカットが美しい。このラストカットのための作品と言っても過言ではないくらいだ。
人格をコピーされたロボとーちゃんが動かなくなるとき、それはつまり父の死が表現されていると言って良い。最後の腕相撲は子の親なら涙するのは必至である。私も一人の父なので、どうしてもこの作品は高評価を付けたい。Sランク進呈します。
「とーちゃんもロボとーちゃんも、どっちもオラの大好きなとーちゃんだ!」byしんのすけ

23.オラの引っ越し物語~サボテン大襲撃~:E

橋本昌和監督作(2015年)。同監督2作目。
これはなかなかにひどい作品。ピークは最初の15分でしょう。野原一家がメキシコへ引っ越すことになり、その際のヒロシの苦悩や風間君との別れのシーンは素晴らしかったと思う。しかしメキシコに着いてからはかなりテンポが悪くなった。
カスカベを離れたことで、メキシコの住人たちをメインにしては無しが進むのだけど、このキャラ達に魅力が無さ過ぎる。例えば、スパイ大作戦とか雲黒斎なんかも野原一家が異国へ行くタイプの話だけど、レモンちゃんや吹雪丸に魅力があったので十分面白かった。それがこの作品には決定的に欠けている。
全体的に説明不足。キラーサボテンというモンスターに追われるのでそれから逃げるだけの話なわけだけど、結局キラーサボテンがなんだったのかわからないし、表現もえぐいので笑えない。敵がただの植物で、思想も哲学も持たないモンスターというのもいただけない。相手に思想がないからしんちゃんサイドも思想をぶつけることがない。せめてキラーサボテンを意図的に作り出した悪の組織でも出てくれば締まったように思うが…。
B級パニック映画さながらのこの脚本をしんちゃんでやる必要が果たしてあったのか、はなはだ疑問である。私は嫌いだったのでEランクで。
興行収入的にはヒットしたらしいが、それは前年のロボとーちゃんのおかげだろう。ホントこういうの知ると、映画の興行収入と作品の出来に相関関係が無いことが分かって切なくなるよね。

24.爆睡!ユメミーワールド大突撃:A

高橋渉監督作(2016年)。同監督2作目。
今回は夢がテーマ。野原一家とカスカベ防衛隊が一人の少女サキちゃんの悪夢と対峙する話。なかなかの良作。題材が夢ということでやはり心理学的要素もあり、悪夢を作り出すもう一人の自分を受け入れ、トラウマを克服するまでの話。今敏監督のパプリカっぽい。
サキちゃんをゲストキャラに据え、前年と違い、ちゃんと掘り下げることに成功している。だから大崩れはない。ネネちゃんとの友情、家族愛が描かれている。
悪夢に苦しむサキちゃんをお助けするというしんちゃんがかなり男前だ。ヒロシとみさえも、大人はユメルギーが元々少なく、ユメミーワールドでは通常長くいられないにも関わらず健闘するとこは熱い。
ラストはみさえに見せ場を持ってきている珍しい作品でもある。母のいないサキちゃんに母の愛を説いた終わり方も良かった。
あとボーちゃんがいちいち石になるのおかしかった。堂々のA評価。

25.襲来!!宇宙人シリリ:C

橋本昌和監督作(2017年)。同監督3作目。
しんちゃんと宇宙人シリリとの友情冒険もの。
シリリと出会い、みさえとヒロシを子どもにさせられてしまい、それを治せるというシリリの父の元へ行くために春日部から沖縄まで旅をするというロードムービー的要素のある作品。その道中でシリリとしんちゃんは友情を育んでいく。
後半はシリリの父がたくらむ計画が明らかとなり、シリリとその父との確執やしんちゃんとの友情が試される展開に胸が熱くなった。
前作同様にシリリの背景を丁寧に描いているので大崩れすることは無かったが、終盤の脚本が急に雑になってしまったのは残念だった。なのでC評価で。
そして25周年作品だからなのか、過去作品のネタやキャラをカメオ出演させており、ファンにとっては楽しかった。

26.爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~:B

高橋渉監督作(2018年)。同監督3作目。
ランちゃんをゲストキャラに迎え、カンフーアクションありの冒険友情もの。テーマはラブ&ピース。中庸の精神。
ぷにぷに拳の修行を通してランちゃんとカスカベ防衛隊が友情を育み、ブラックパンダラーメンと対峙していく物語。
ぷにぷに拳と闇突拳の対立をシンプルに描くのかと思いきや、少し展開が凝られている。雲黒斎ほどではないが、二段構えの構成で、終盤にあるキャラの立場を変化させ、マサオをフィーチャーするという、これまでの作品にはない意欲的な取り組みをしているのはおもしろかった。
野原一家はあまりでてこないため、家族愛成分は少なめ。アクションは良く動いていたと思う。
正直ぷにぷに真掌会得のあたりは中だるみしてる感じがあったが、最後のジェンガは楽しかった。このラストをやりたかったんだろうなと。
悪も行き過ぎた正義も同じこと。ゆるく生きようというメッセージが伝わってきた。Bランクです。

27.新婚旅行ハリケーン 失われたひろし:B

橋本昌和監督作(2019年)。同監督4作目。
野原一家が新婚旅行のためにオーストラリアへ行ったら、原住民にヒロシを拉致され、それを救出しに行くというのが大まかな脚本。
舞台が海外ということで、同監督による駄作引っ越し物語みたいになったらやだなと思ってたが、意外にうまくまとまった作品だと思った。
ここ近年はずっとゲストキャラを迎えて、いわばそのキャラを主人公に置くような手法を取ってきたわけだけど、本作では紛れもなく野原一家を真ん中に置いた作品だったのが良かった。今回のオリジナルキャラであるジュンコちゃんはゲストの役割に徹していてナイスだった。
序盤のダンスシーンが特におもしろかった。途中の挿入歌演出は新しかった。ただし、敵に魅力が無く、パンチに欠けてた感じもしたし、追いかけるシーンがやたら長く、中だるみする点は気になった。
あと、本作は家族というよりも夫婦に焦点を当ててるので、子どもは分からないシーンがあったかも。Bランク認定。
「これからも俺と結婚してください」byひろし

28.激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者:S

京極尚彦監督作(2020年)。
泣けた。終盤マジで畳みかけてくる。
不意打ちだった。ここ7年は橋本監督と高橋監督が交互に手掛けていて、この2人によって当時暗黒期にいたしんちゃん映画を持ち直されてきたわけだけど、ついにこの年監督が新しくなるということで、あまり期待せずに見に行った。それがまさかのロボとーちゃん以来の感動作だったとは思いもよらなかった。
作画もきれいで良く動き、音楽にもこだわりを感じた。脚本もかなり仕上がっている。前半から伏線がちりばめられ、物語の終わりにかけて回収していく様が気持ちいい。
今回は野原一家やカスカベ防衛隊は登場はすれど、活躍はそこまででもない。かといってしんちゃんの孤独な戦いかというとそうではなく、落書きによって生み出されたブリーフ、ななこ、ぶりぶりざえもんがそれぞれ魅力を持って描かれ、終盤の演出にそれぞれが一役買っている。
前半は冒険もので、終盤はしんちゃん映画にしては殺伐とした画になっていたが、最後はカンフーボーイズやB級グルメサバイバルのような歌と映像で突き抜けたカタルシス表現を用意してくれている。
ぶりぶりざえもんが劇中で話したのもブタのヒヅメ以来だったので、感慨深さもあった。ぶりぶりざえもんの人間らしさが相変わらず良かった。誰しも生きていれば長いものに巻かれる瞬間ってあると思うのだけど、そんなぶりぶりざえもんが悩みながらも良い行いをしちゃうところに私たちは勇気をもらえるのではなかろうか。堂々のSランクです。

29.謎メキ!花の天カス学園:B

高橋渉監督作(2021年)。同監督4作目。
今回は学園ミステリーもの。カスカベ防衛隊のメンツがやや強引に天カス学園へ体験入学することになる。
そこで起こる吸ケツ鬼事件の真相を追うのを軸にして、しんちゃんと風間君との友情に焦点を当てた作品。
天カス学園はオツムンと呼ばれるAIに管理されていて、エリートポイントによってクラス分けさせられているというシステムになっていた。ここの不気味さは良かった。しかし、ミステリー部分は少し退屈だった。ミスリードを誘うためにたくさんキャラは出てきて、それぞれに意味深なカットを用意しなければならず、全体的にごちゃごちゃしてる印象を持った。
そのなかでもマサオの不良化は結構おもしろかった。マサオってホントどう料理してもおもしろくなるから便利なキャラだよなー。
ラストの振りなんだろうけど、中盤の風間君とのけんかはちょっと強引だったように思う。風間君はいつも怒ってるイメージあるけど、しんちゃんってあんまり売られた喧嘩を買うイメージ無いんだよな。ちょっと違和感。
そしてラストはマラソン。チシオちゃんの、走ると変顔になるから走れないというコンプレックスの克服場面は普通に泣けた。「私、大好き」ってやつはたくさんの人を勇気づけるだろう。一生懸命な人を笑うなというメッセージが良かった。一生懸命な様を笑える人はたぶん想像力が足りてないか、一生懸命になったことが無い人だろう。
スーパーエリート風間さんっていう存在がかなりキャッチ―だし、負けたらスーパーエリートにさせられちゃうっていうのも嫌なのか良いのかよく分からんくて面白かった。
良い点と悪い点両方目立つ作品で総合するとBランクかなと。

30.もののけ忍者 珍風伝:B

橋本昌和監督作(2022年)。同監督5作目。
現代に人知れず忍びの里が存在しているという設定。
5年前同じ病院で生まれたしんちゃんとへそがくれ珍蔵。
ちよめは珍蔵とともに里を抜け、野原家へ居候。追手に捕まるが、その際珍蔵ではなく、しんちゃんが連れ戻されてしまうという導入。
忍びの里には地球のへそと呼ばれる地球エネルギーの栓みたいな場所があり、その栓をめぐる戦いに巻き込まれていく。
脚本は悪くはないが、ややまとまりを欠く部分がある。風使いの女の子が本筋にかかわることがなく、ラスト急にカスカベ防衛隊が活躍したりするのは違和感があった。今回ならカスカベ防衛隊は最後まで出さなくていいし、風使いの女の子を本筋に入れ込むほうが盛り上がったのではと思う。
途中のしんちゃんの回想は良かった。完全に泣かしにきてた。
アクションは楽しいし、ところどころ笑って泣ける安定のしんちゃんではあったと思う。でもあと一押しなにかが足りないという感覚もあったのでBランク。


さて、いかがでしたか。この10年はほとんどを橋本監督(5作)と高橋監督(4作)によって製作されています。そしてこの二人によってしんちゃんは完全に息を吹き返しました。
サボテンがEランクでやらかしてますが、それ以外は大崩れする作品はなく、ロボとーちゃんやラクガキングダムなど、しんちゃん歴代のなかでもトップクラスの作品も生まれています。まさに復活期の10年でした。
さて、この先40年目に向けてどんな作品が生まれていくのか、楽しみであります。ただ、2023年の31作目「超能力大決戦」はなかなかの駄作だったので、幸先は決して良くない状況です。
いずれにしてもしんちゃんはこの先も追いかけていきたいと思っているので、もし40作目までいったときには31~40作目までのまとめ記事を書けるといいなぁ。

それでは。次何書こうかなぁ。




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