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縛り

黒いTシャツ、それに濃いインディゴのスキニーを履く。
少しレースのついたお気に入りのキャミソールに祖母のお下がりのカルバンのニットカーディガンを着て、リビングに降りてはいけない。母が怒る。

パソコンを開いてから、本が読みたい思いと葛藤する。最近は、エビデンスを検証するために医学論文と厚生労働省のホームページしか読んでいない日々が続いている。正直言って、つまらない。
文を書くことに規定をつけられるのは得意じゃない。エビデンスのある参考文献を3つ以上、それを文末に添付すること。誤字脱字、誤変換は採点しません。2000字以上ないと採点しません。期日はいつまでです。縛られた中で書く文章は、自由を奪われたように感じる。

今日は、目覚めが悪かった。
昨日、寝る前に本を読まずにブルーライトを浴びていたことが原因だと思う。アラーム音にMoon Riverを設定したとて、所詮ホリー・ゴライトリーにはなれない。
朝食は、クロワッサンではなく、トーストに蜂蜜とバターを塗ったやつ。アヲハタの白桃が好きだったけど、もう無くなってしまった。好きな物は、たくさん使ってしまう。
カップのコーヒーも飲まない。白湯2杯。美容に気を使っているからそうしているわけではなく、ただ単に身体を希釈できるものを飲みたいだけだ。

与えられた論文に手をつける、飽きてSNS。それの繰り返し。

自粛生活は、意外とよかったりする。自分の時間で活動も休息もとる事ができる。
でも、大学に行っていないからといって、果てしない量の課題は正直嫌になる。
とうとうわたしの大学のオンライン授業は、教授の作ったパワーポイントを読んで、大量の課題をだすシステムにしたらしい。オンライン授業でもなんでもない。教科書に書いてある内容がそのままパワーポイントになっただけのものを読んで、課題をこなすだけなのだから。
と言っても、縛られるのは好きでは無いので、時間指定の無いこの方法もいいかもしれない。

今日も、本は読めなかった。読んでもらえずにベッドサイドにあるサガンが可哀想になってくる。そろそろ、彼女がよく書く夏の季節になるというのに。

いつか、お気に入りのキャミソールと祖母からもらったカルバンのニットカーディガンを着て、サガンの夏に思いを馳せるような時間が来るといいと思う。
明日は、Moon Riverで起きられるように、もう寝ることにする。

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