こぼれるよ日々（２）
メンバーシップ日記で取り上げなかった日々の断片を「なぞる」で公開しちゃおうのコーナーです。よかったらメンバーシップへの登録もご検討くださるとうれしいです。
2024年1月7日 火鍋の素を4つ買う軽率さで
週末。さいきん仕事を辞めたがってずうんとしている連れあいをどうにか元気づけたい。そもそも生活を計画しステップを進めていくようなことが苦手な夫婦だから、まずは未来にたいして前向きになる必要があると心奮わせ、代官山にある「BESS MAGMA」というところへ家の見学にでかけた。
BESSはログハウスを基とした家づくりをするハウスメーカーで、木と暮らす不便を楽しむことをコンセプトにしている。連れあいがアウトドア系のYouTubeかなにかで見つけてきたのだった。素敵な佇まいの家々を外から眺め内を探検し、ほほう！ いいもん見さしてもらいました。
こういう輝かしく光を放つ未来の暮らしについて考えはじめると、半分は明るく前向きな気持ちになる。でもあとの半分は。現実の、まったく未来への用意がないじぶんの内面とのコントラストがくっきりとしてきて、外からの光では照らせない部分の暗さにどうしても覆われてしまうのだ。
帰りがけBESSの人に、ゆっくりと考えてみてくださいねと言っていただくも、ゆっくりと考えてなにかがまとまる気もしない。33年も生きた人間は頭のなかを差し置いて、まるで未来が思い通りになるかのように計画と決断をしていかねば、そしてその責を負わねばならんのかい。ずっと手ばなしで明日を迎えつづけることはどうやらできないみたい。
ふたりでうだうだ言いながら歩き回ったらお腹がすいてきて、帰路。
連れあいがめずらしく「今日はだいすきなあの火鍋の素を買わないことには帰れない」とか言いだすので、最寄り駅のひとつ前で降り、そこのスーパーに賭けた（近所のスーパーにはない）。
わたしたちが気に入っているアンズコフーズ社の火鍋の素。もしあるとすれば鍋つゆコーナーではなく肉コーナーだ。入店してまっすぐに、肉コーナーへむかう。
…………。
「あった！ あったー！！！」
感動したままの流れで連れあいはどかどかカゴに入れていく。なんというたくましさ！ いきおい！ 4つ入れたところで、ここにあるということがわかってよかったねと声を掛けると、彼はそこでぴたりと手を止め、そうだな、こんなに焦って買い込まなくてもいいんだなと我に返った。カゴに入れた4つはそのまま買った。
はー。火鍋の素を一度に4つ買い込むいきおいと同じ軽率さで、家まで買えたなら！
2024年1月8日 ぶっちゃけ男道
目覚めると連れあいがキッチンでコーヒーを淹れながら変な替え歌をうたっている。替え歌というか、本人に歌詞を正しく覚えてうたおうという気がないのだ。関ジャニ∞のあの曲（わたしもタイトルを知らない）を、うたっている。
「ジェラってこうぜ〜！イェイイェイイェイ！ぶっちゃけ男道ぃ～～〜」
聴きながらわたしも、ぶっちゃけの部分をぶっちゃけと脳内でうたっていたので、あれ、もしかして本当にぶっちゃけだっけ。ぶっちゃけ男道？ ジェラって、もぜったいちがいますよね。でもわたしにも歌詞を調べるほどの熱はなく、ぶっちゃけ男道のまま放置されることとなった。
昨日の晩ごはんはふたりとも気に入っている火鍋で、そういえば昨日七草粥食べなかったねと連れあいに言うと「その代わりに火鍋のつもりだったよ、7種の薬膳で」との返事。
うわ、なにそれ。そんな粋なことを言わないでおくのずるいよ。わたしもそのつもりで食べる火鍋がよかった。行事ごと、食べものに勝手に意味を与えるのはとても文化的しぐさで、人間をやっている感じがしてすきなのだ。
瀬戸弘司さんが何年も前にやっていたマインクラフトのゲーム実況動画をイヤホンで流しながら寝るのが最近の日課。瀬戸さんはゲームと同じかそれ以上の尺で、当時流行っていたものとかニュース、コンビニの新商品、その日の朝ごはんや飲み物の話をたくさんしてくれる。彼のゲーム実況はそのまま日記なのだ。彼の日記が耳に気持ちよくてすぐに眠れる。
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