誕生日

友人の誕生日だった。

彼女は、私よりもひとまわり年上。性別と、住んでいる地域が近いことを除いて、言葉にできる共通項はない。

学生時代に知り合って、それからしばらくして、いろんな話ができる仲になった。

お互いの好きな食べ物・嫌いな食べ物、芸能人やテレビに対する感想、家族のこと、これまでにお付き合いした人、今関わっている人、その日の仕事が忙しかったか・暇だったか、夕飯はなにを食べたか、ダイエットのためにオートミールとプロテインに挑戦したいと思ってることとか、生クリームのお菓子を買うならどのコンビニのなにがいいかとか。

「その人はとても優しい」と書いてしまったら、なんだか違う気がする。優しいって人を表す言葉じゃないと思うから。行動や、そこにある気持ちを表す言葉だと思うから。

とにかく、私はその人に支えられて生きている。その人も私のことをすきだったらとてもうれしいけど、そんなことはあまり気にならないくらい、一方的な感謝と好きが溢れてる。

だから、彼女が健康に誕生日を迎えてくれることがうれしい。生きててくれて、私と出会ってくれて、うれしい。

お誕生日当日付近で、直接会ってお祝いできる予定になっていたけど、こんな騒ぎになってしまった。

彼女とのトーク履歴を見ながら、私は0時ぴったりに送るメッセージの下書きをしていた。ふとそこで検索をかけると、教えてもらっていた住所が残っていた。

大人になると、個人情報を聞くことに対するハードルがとても上がってしまう。教えてもらったことを私が忘れていたから、きっと彼女も住所を教えたことなんて覚えていないだろうな。何か届いたら怖いかな？でも履歴に残ってるしな。もしご自宅に何か届けるなら、なにがいいだろう。

散々考えて、彼女の一番好きなブランドのスイーツでも、この間欲しいと言っていた美容家電でもなく、お手紙を送ることにした。

毒にも薬にも、金にもならないお手紙だけど、この自粛生活のなかで何か届いたら喜んでくれるかな。ほんの少しでも明るい気持ちになってもらえたらうれしいな。

何かを贈りたいという気持ちは、私の場合、100%思いやりなんてことはない。きっとエゴだと思う。それが手紙なんかである場合、尚更。

誕生日の少し前に、切手を貼って投函した。物流は遅くなっているというけど、いつ頃届くだろうか。ちゃんと手元に届いて、彼女に喜んでもらえるだろうか。

私を支えてくれるその人を、いつか支えることができたらいいなと思う。お誕生日おめでとう。生きててくれて、私と出会ってくれてありがとう。

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5/10　ずっと下書きに保存していたが、手紙が無事に届いたことを確認したため、この記事をこっそりと投稿する。