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月曜の憂鬱は日曜から始まる

早く起きて、今度こそ先延ばしにしていたことを全て片付けよう!と意気込んでいた日曜の朝。まだアラームが鳴る前の目覚まし時計を確認ながら「うん、あと少し...」と目を瞑ったが最後。

いつの間にか、私は女優の新垣結衣と行動を共にしていた。

ご存知の通り、ガッキーはアーティストの星野源と昨年結婚し、今頃は順調に新婚生活を営んでいるはずである。

「でも、実はまだ今まで住んでいた部屋を解約できていなくて...」何処か困った表情を浮かべながら、ガッキーは私に、独身時代に住み今も新居と行き来しているという部屋を案内してくれた。

案内された部屋は芸能人にしては質素、というより、戦後直後の日本、もしくは東南アジアの国のような雰囲気の、土間のついた(今の日本の水準からすると)お世辞にも綺麗とは言い難い、高温多湿のじめじめとした狭い部屋だった。

しかし、そこはさすが新垣結衣というべきか。おそらく家賃が安く条件もあまり良いとは言えない部屋の中にも、清潔感が感じられ丁寧な暮らしをしているのだろうな、ということがその随所から垣間見れた。

よくわからないが、ガッキーはあまり幸せそうではなかった。顔も青白くため息ばかりついていて、あの独身時代の部屋が未だ解約できないというのも、もしかすると星野源との結婚生活が上手くいってないからだろうか?と私は他人事ながら心配になった。

目覚めると、いつもの憂鬱な朝で一気にやる気を失った。

それから、寝ぼけた頭で、ガッキーは大丈夫だろうか?とぼんやり考える。そういえば最近見ていたNHKの大河ドラマで彼女は、残酷な運命に翻弄される姫の役を演じていて、険しい表情ばかり浮かべていたことを思い出す。

私が見たガッキーは、確実にそのドラマの影響下にあって夢なんて単純なものだな、と脱力する。

あの大河ドラマの不幸な姫も、最新話では、長年思い続けてくれた主人公の男性と再婚して子を産み幸せそうだし、ガッキーも皆の知る通り、仕事もプライベートも絶好調で、近い将来役柄と同じく、妊娠出産を発表しても何らおかしくはないだろう。

夢の話とは言え、全てを手に入れた国民的女優の心配をしている場合ではなかった。私はもっと自分自身の心配をした方がいい。

私だけが、ずっと前に進めない。私だけが、世界から取り残され続けている。

何処へ行って何をしても面白くない。1秒ごとに、こんなはずじゃなかったという思いが押し寄せる。生きた証として、せめて思い描いた希望だけでも書き残しておこうと思い、理想のパートナーや生活を、ほんのお遊びのつもりで書いてみるけれど、それすら疲れて自己嫌悪に陥る。

理想さえなければ、こんなはずじゃなかった現実もない。それが全てだ。


願いが叶うなら、全て投げ出して自分以外の人間として生きていきたい。朝目覚めたら、私が私ではありませんように。

いや、せめて、悲惨で憂鬱な現実だったとしても受け入れて、地に足をつけて生きられますようにー。

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