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レモネードにしてあげるよ

米津玄師の「Lemon」を聴いていると、吉本ばななの小説「ムーンライト・シャドウ」を思い出す。

MVの女性ダンサーと同じハイヒールを履く米津玄師と、小説に登場する恋人の形見のセーラー服を着た高校生の男の子の姿が自然とオーバーラップして、ハッとする。

別にその人のファンというわけでも、恋をしていたというわけでもなかったけれど、2003年版「白い巨塔」に出演していた上川隆也演じる関口弁護士は、当時10代の少女だった私にとって「どこか憂いを帯びた、いかにもカッコいい大人の男性」といったイメージで未だに忘れ難い。

彼の存在をふと思い出し、Twitterで検索をかけたその先。ごく一般的な上川隆也ファンであり、ドラマファンと思われる女性のツイートに行き着いた。

ドラマを純粋に楽しんでいて、どこか優しさと上品さを感じる文章に私はすぐ好感を覚えた。

だけど、何か様子が変なのだ。数年前から更新されていないツイートとそこにぶら下がった、ツイートの内容とは一見無関係と思われる意味深なリプライの数々。一体、彼女に何があったのだろう?と疑問を持つのに、時間はさほどかからなかった。

モンスターを倒した。
これで一安心だ。    
@okanofponta事件当日のものとされるツイートより引用


結論から言うと、彼女は、自分の母親を殺した”殺人犯”だった。以前、割と大々的に報道されていたので、私も何となくそのニュースを覚えていた。人の命を奪うことは決して許されることはないが、彼女の置かれた環境を思うと、胸が痛い。

奇しくも、自分を産み育てた母親を殺したことで、彼女にやっと平穏な毎日が訪れたんだと思うとやりきれない。こんなことを願っていいのかわからないが、罪を償った彼女の未来がせめて明るいものであることを願わずにはいられない。

また夢を見た。ほとんど悪夢しか見ないのに、久しぶりに少し幸せな夢。

初恋の芸能人のあの人がフラッと出てきて、彼の車の助手席に乗せられてドライブデートをしていた。いや、実はそれも過去の回想で、私は20代前半に彼に出会ってデートをしていたことを唐突に思い出す。あー願いは本当に叶うんだなというか、既に叶っていたのか!という不思議な気持ちになった。

でも、そう。2人きりでデートはしても、付き合っても結婚してもいなかった。私の気持ちはもちろん彼にバレていて、仕方ないなあと子供をあやすような感じで1度か2度付き合ってくれた感じ。

別に彼と今更交際したいわけでも結婚したいわけでもないし、望んでも到底結ばれる相手ではないが、どうせ夢ならば彼の本命の女にしてくれてもいいのに…と少しがっかりした。

初恋の芸能人とデートできたものの、夢の中ですら片思いしているのが実に自分らしい。

自分にとって、直接関係のあることじゃない。生きるのに必須のことじゃない。いつも心のど真ん中にあると言ったら、大げさ。自分よりそれを好きな人はゴマンといる。運命というには、あまりにも足りない。

だけど、誰にも渡したくない大切な思い出のひとつひとつ。


レモンはそのまま食べるには苦いから、せめてレモネードにしてあげるよ。

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