見出し画像

SF創作講座6期 第3回梗概の感想(2)

裏SF創作講座で投票した梗概への感想

裏SF創作講座に3作投票しています。感想くらい書き残しておくべきではと思い、思いつつ、放置してしまっていたのですが、今更ですが書きます。
実作〆切まで間があるので、参考になれば。

岸本健之朗 「怪獣国境」

タイトルが抜群にいい。〆切直後に一覧画面で見て、これしかないと思いました。このタイトル、世界観でいくらでも書けそうな広がりがあると思います。なんといっても、怪獣がつねに何体も地上に常駐しているのがいいです。大陸的なスケール大きさを感じます。
しかしながら、設定もプロットも疑問点や物足りなさを感じる点が多く、もっともっとダイナミックな小説になるような気がします。

  • 十年に一度の一斉に移動というのは、怪獣の動的な存在としての魅力を減じているように思いました。もっとランダムにダイナミックに動いてもいいのではないでしょうか。今の必ず十年に一度という設定でいくならば、天体の動きと絡めるなどした科学的/疑似科学的な理由と、動いた時の全地上的に招かれる混沌が欲しいところです。

  • 伸ばした触手(だけ)が国境になっている設定ですが、みな同じ怪獣なのでしょうか? 触手というのは怪獣全般としてはあまりメジャーな器官ではないような気がしますし、現実の国境が河川や山脈の尾根や森林を国境にするように(これらが作る国境はないのでしょうか?)、触手とは違うかたちでさだめられた国境があってもいいのではないでしょうか。例えばしっぽが超長い、眠っていても額からビームが出ていて国境の役割を果たす、怪獣同士の戦いで生じた焦土が国境となってしまうなどのように。

  • 国境越えは絶対的なタブーなのでしょうか? 他国との国交はないのでしょうか? 絶対禁止のように描かれていますが、完全鎖国状態は違和感があり、もちろん『進撃』の壁のようなものとして狙っているならばありといえばありですが。関所、出入国管理のゲートくらいあってもいいと思いました。怪獣の股の下とか。また物理的な人、モノの交流ができなくても、音声や光、狼煙などの通信は文明の技術レベルにかかわらずできるはずとも思います。

  • ケイがかんたんに怪獣を覚醒させて移動させられるならば、今までいくらでもやられているはずで、いったいこの世界の文明はいつから怪獣と共にあったのかと気になりました。国境警備隊が存在する理由は、このような国境破りが過去にあったからだという気がします。

参考にルーシャス・シェパードの『竜のグリオールに絵を描いた男』を挙げておきます。こちらは目覚めたりせず動かぬ竜の上に村ができているのですが。

大庭繭 「眩しい闇の名前はひかり」

堆肥葬という弔い方にまつわる、わりと社会派のカルトとスピリチュアルのビジネスの話。タイトルの詩的な表現はドラマの展開とは合っていない印象がありますが、タイトルを見直すのではなく、むしろ終わりかたをタイトルに寄せるなどの手もありと思いました。
課題に応えた、嘘からはじまるドミノ倒しの社会の変化になっていると思いました。とは言え、ほかの提出梗概と比較して、ドタバタのエスカレーション、サプライズもありという展開の破天荒なタイプの課題に比べて地味さは否めないのは確かであります。(講義で聞いていたので後出しで書きますが)他作品のようなドタバタが書けないとこぼしていたけれど、できないことがあるとしたらそれも発見だと思うので、書けること、書けないことを見極めていくのが良いのではという気がします。作風や技術を広げたくなるのは共感できますが、できないことがあるというのも、才能のうちだと思います。
梗概では葬儀の後の堆肥の扱いは明らかにされていないと思いますが、どうなるのでしょうか? ビジネス面が展開するさきは示されていますが、死者の行き着くさきも何か示されて欲しいと個人的に思いました。たとえば堆肥葬でつくられた堆肥だけで作物を育てる畑が、一面に広がっている〈絵〉で締めるとか。

馬屋 豊 「(有)木乃伊商会」

実家に帰ったらじつは一族が皆ミイラだった話。タイトルはシンプルに好きです。「(有)」がいいですね、個人商店感がいい。梗概本文の1行目から主人公のダメっぷりと実作のノリの良さが想像できて楽しくなります。先祖の「往時の悪癖が強調される特性」がどのように書かれるのか、実作で読みたいです。
後半から登場する彼女との交際、駆け引き、対決もおもしろそう。ミイラハンターって生業として成立するほど、ミイラがいるのかよってツッコミはありますが、そのバランスがおかしいところがそのまま楽しい。
まだ6期になってから実作を書かれていないので、そろそろ読ませていただきたいです。





この記事が参加している募集

SF小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?