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Casteを読んで


Timeで紹介されていたのに興味を持って手にした著作。
Casteというとすぐに頭に浮かぶのはインドの階級制度であるが、この著作ではアメリカ社会に根付くアフリカンアメリカンに対しての差別について、
自身の体験を踏まえて書かれたものである。

インドでのそれがある意味明示的な階級を示しているのに対して、アメリカのそれは表面的には示されていないだけに差別される側にとっては差別されていること自体を問題にすることさえ難しいという複雑かつ根深いものがあり、それがこの時代に至るまで続いているのだと感じた。

ジョージフロイドさんが殺されたことによってBlack Lives Matterとして再考を促す運動がかなり大規模に起こり、世界中にその現実を知らしめることになって以降もまだ継続している事がアメリカという国が今Civil Warが現実的なものとして語られている事の証左なのだろう。

2024年の大統領選は今のところバイデンとトランプとの間で再び争われようとしている。共和党ではすでにトランプが代表になるであろう事は間違いないようだ。このトランプを支持する白人の中間層がこのCasteを維持せんとしてトランプの主張を支えている事がこの著作でよくわかったし、こうした考え方が簡単には覆る事はなく、アメリカ社会に現前としている分断が行きつけばCivil Warへと向かうのも必然かもしれない。

しかし、この本を読んでいてわかった事はCasteの根底にあるアフリカンアメリカンへの差別意識は共和党支持層だけでなく民主党支持層の白人にも少なからずあるのではないかという事である。
著者が白人の友人レストランで食事をしている時にウエイターがいくら待っても水も持ってこないし注文も聞きにこない上に後から隣の席にきた白人の客にはすぐに水を持って行きオーダーをとっており、連れの白人が何度か督促しても態度が変わらず、怒った連れの白人が店に対して悪態をついて席を立つという行動に出る。しかし、著者にとっては日常的な事であり、それを一々怒っていては疲れるだけという諦観があり、一方で怒った白人は自身が食事をするときはこうした扱いはされず偶々起きた事としてこの日のように怒って席を立つという事で怒りを収める事ができるのだという事である。
差別をされている事の辛さは日常的にそうした事に晒されている人と同様に問題意識を持つ事の難しさを感じた。それ以外にもファーストクラス内での嫌がらせやそれを見て見ぬふりをする客室乗務員の話など著者がNEWYORK TIMESの記者でピューリッツアー賞を受賞するジャーナリストであってもこうした扱いを受けている事には驚かされた。

この本を読んで2024年の大統領選の結果次第では今の様に無条件にアメリカに従属している様な外交を続ける事自体がこの国にとっても大きなリスクとなる事を憂慮せざるを得ない。しかしながら、現政権を見ているとこうした問題意識がどこまで持たれているのか。この国が抱えている課題と合わせて新しい国家像を描いていくにはギリギリの時期かもしれないと感じた。

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