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RADICAL MARKETS         エリック・A・ポズナー/E・グレン・ワイル

少し前に刊行された著作であるが、ようやく読み終えた。未来に対する提言としてはとても興味深い物であった。冷戦後、フランシス・フクヤマではないがイデオロギーとしての右派・左派の対立は事実上、終焉しまさにグローバルな環境下での経済的なパフォーマンスが新自由主義として喧伝される中、この動きが格差と分断を助長し、政治的にはポピュリズムが台頭してきたいる。こうした状況下で、著者らは社会をラディカルに再構成する試みを提言する。そして、そのベースを市場においているのである。但し、その手段としてオークションの概念を利用するという主張である。

今年のノーベル経済学賞もオークションの理論を提唱したポール・ミルグロムが受賞したが、このオークションの考え方が面白いのは、まさにオークションの環境下では競売にかけられているものは市場に晒せれていて、私有し保持している状態を許さないというもので、それにより富の偏在を解消する事が可能になる。

幾つかの仕組みとしての提言がなされているが、最も面白いのは財産の価値を自ら決める事。そして、その価値に応じた税負担を行うことによって均衡を保つという考え方である(著者らはCOSTと称している)。これにより財産の価値が市場価値に見合わないと判断されれば、競売にかけられ妥当な価値に落ち着き、相応の税負担を強いられる。こうしてCOSTが実現すると所有よりも使用を重視した市場が形成され、富の偏在が解消され分配されるようになる。今現在の大きな問題点が中間層の没落であることを鑑みてもこうした使用重視の市場は遍く機会を拡げる事で中間層が勢いを取り戻す可能性を感じる。

次いで、もう一つの課題である民主主義。こちらへの対策はよりラディカルで民主主義の根幹を為す多数決の原理を各論で覆す事でより、民主的な力を反映させうる仕組みである。QVと称しているこの仕組みは投票力を貯蓄し、かつ平方根関数という手法を使う事で可能になる。詳細は著書に当たって頂くとして、この仕組みを活用するしアジェンダごとに自らの投票権を集中させる事でより少数意見の価値を最大化させうる。それにより民主主義を健全な形でまさに民の手に戻そうとしており、より参加型の制度となりうる。

この他にも移民労働者を市場価値に基づいて導入する仕組みやAIとの共存についてのデータの価値を如何に個人に還元させるかなどまさにラディカルな提言が示されている。しかし、その根底には健全な市場がプラットホームとしてある。この市場を如何に健全に保つかということを最大限に考え抜かれた仕組みの構築はとても理に適っており著者らの提言に現実味を帯びさせている。



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