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【管理栄養士×パティシエ×商品開発】WHO発表で話題!人工甘味料、どう思う?

先日、世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)が、人工甘味料「アスパルテーム」について、発がん性の可能性があるという発表をしました。

子育て家族に向けたライフスタイルブランドthe kindestを展開しているMiL社には、食に希望と課題意識を持つメンバーが多く、ちょっと気になるトピックに社内コミュニケーションツールSlack上でも大賑わい。

管理栄養士の資格を持つメンバーと、the kindestの「甘み」を担当している商品開発部のパティシエ、人工甘味料使用経験のある食品メーカー出身メンバーで、ざっくばらんに話してみました。人工甘味料、どう思う?

中村 七穂(なかむら ななほ)
保育園の管理栄養士を経て、2022年入社。カスタマーサポートにて、日々お客さまの離乳食や育児の悩みに向き合っている。

古川 詩菜(ふるかわ しな)
食品検査機関にて衛生やQCに携わり、保育園の管理栄養士を経て、2022年入社。商品開発部に所属し、ベビーフードやおやつの開発を担当中。

田中 春菜(たなか はるな)
2023年入社。アイスメーカー勤務を経て、現在商品開発部にて新規商品の開発に従事。管理栄養士。

菊地 俊輔(きくち しゅんすけ)
一流ホテルのペストリー部門やレストランでパティシエ経験を積んだのち、2022年入社。the kindestのおやつ開発を担当。保育園勤務経験あり。



人工甘味料、どう思う?

左奥:中村(管理栄養士:CS担当) / 右奥:古川(管理栄養士:商品開発担当)


ーーー日本でも身近な人工甘味料「アスパルテーム」ですが、WHOが発がん性を認めた発表をしましたね。日本のメディアでは、なかなかセンセーショナルな報道がされていましたが、皆さんはどう思いましたか?

中村:もともとWHOでは「砂糖摂りすぎないでね」っていうメッセージを発信していて、今回その代替案ポジションの人工甘味料も「推奨しない」となると、じゃあどうしたらいいの?全部ダメなの?と混乱する方が増えるのでは・・・と。何を基準に選んだらいいのか、困っちゃう人もいるんじゃないかと感じました。

菊地:やっぱりな〜と思う反面、結構派手に報道されているので、あまり煽られず、冷静に受け止めたいなぁという感じです。
発がん性もそうですけど、血糖値が上がらないことでむしろ血糖コントロールが乱れちゃうこととか、腸内細菌への影響とか、これからどんどん研究が進むんだろうけど、他にも気になるポイントはいろいろありますね。


ーーー元保育園勤務者多いですが、保育園の現場では人工甘味料は使わないですよね?食事での甘みはどのように捉えられているんですか?

古川:保育園ではもちろん砂糖は取り扱っていて、おやつも作るし、煮物などにも使うし、常識範囲内で使っています。甘さは少し控えめですね。


ーーー使用量の上限もあるんですか?

古川:特になくて、栄養計算は一ヶ月単位(園による)でカロリー計算しています。
でも、保護者の方から「砂糖控えたい」という要望をいただくこともあって。個別対応はできないから、お話した上で、本当に嫌であれば代替におやつを自宅から持ってきてもらったりしていました。
お砂糖が嫌っていうのもあると思うんですけど、「甘さを覚えるのが嫌」という話はよく聞きます。


ーーー保育の現場だと、レシピはカロリーの観点がメインになってるけど、甘味に関しても全体的に感度が高い状態なんですね。

古川:そうですね。ちなみに現場では砂糖のかわりに人工甘味料を使うってことはないですね。使う必要性が特にないです。


ーーースイーツを作るパティシエ業界では、原材料で人工甘味料を使うことってあるんですか?

菊地:ほぼないですね。使うのはグラニュー糖、きび砂糖、甜菜糖です。
人工甘味料は、糖尿病のお客さま向けのものを使ったことがあります。(今回WHOが指摘している合成甘味料ではなく、糖アルコールの一種です。)
でも滅多に使わないから、一回二回使って、そのまま倉庫に置いてあるような感じでした。

ーーー人工甘味料は、加工品としては身近だけど、手作りの現場では馴染みがあるわけではないんですね。今回はネガティブな面で取り上げられましたが、ポジティブな側面もあるのでしょうか?

古川:低カロリーっていう面はポジティブとされてきていましたよね。

中村:血糖の上昇が穏やかであるとか、吸収がゆっくりだから、そういう特定の場面での活用シーンはありますよね。

菊地:特に疾患を抱えていない一般の人にとっては、もうカロリー神話自体がなくなってきた感じがありますよね。ダイエットって大切なのはそこじゃないよね、みたいな。
でも、人工甘味料って、世の中的にもずっと騒がれているのに、メーカーがわざわざ使うメリットってなんだろう?って、消費者視点だとシンプルに疑問です。砂糖と比較すると、少量で同じような甘みが出せるから、「安さ」「低カロリー」「使い勝手」・・・?


ーーー「使い勝手」!砂糖と人工甘味料だと、使い勝手も全然違いますか?

菊地:砂糖だと湿気って溶けたり、乾燥して固まったり、虫が湧いてしまったりと、管理が必要です。人工甘味料はそういうのがないから比較的扱いやすいと聞きます。
ただ、砂糖には甘み以外の多くの役割があるから、単純に甘みの代用っていう意味ではむしろ使い勝手悪いですし、パティシエの使用量ぐらいだと、わざわざ使うメリットはないですね。


メーカーでのリアルな使用状況

田中(管理栄養士:商品開発担当)


ーーーアイスメーカー勤務のときは、人工甘味料を使っていましたか?

田中:使っていました。目的によって、砂糖や水飴、人工甘味料などを使い分けていました。アイスって嗜好品だし、メーカー品は基本的にマス向けに大量生産するものだから、健康的観点より、値段と味が最優先でしたね。

私は個人的に、人工甘味料特有のあと引く甘さが苦手で、商品を企画する際も、極力使わずに作っていました。かき氷のように濃いシロップを使う商品だと、全部砂糖を使用すると原料原価が上がりすぎちゃうので、0.002%とか、本当に少量使用するような感じ。それで砂糖と同じような甘さにできるから、使わざるを得ない商品には使うっていう感じです。


ーーーなるほど!同じアイスでも、使う人工甘味料にバリエーションがあるのでしょうか?

田中:メーカーによっても、使い方や使用している人工甘味料は違いますよ。味も全部違うし、甘さの残り方も全然違う。人工甘味料にはたくさん種類があるけど、前職では主にスクラロースを使っていました。でも、いっぱい使わないから、在庫が余っちゃうんですよね・・・。

菊地:混ぜて使うパターンもあるって聞きました。甘みの出方も違うから、それぞれの特性を生かして、なるべくグラニュー糖の甘さに近づけるみたいな。そういう使い方もあるんですか?

田中:甘味料をよく使うメーカーは、そういう風に組み合わせて使ったりもしていると思います。一括表示を見ても、複数の人工甘味料が記載されている商品ってよくあります。


ーーー値段重視は大前提とした上で、味も大切だから、基本的には甘みのメインは砂糖系を使っていた、ということですか?

田中:砂糖と水飴、液糖、粉あめあたりがメインでした。個人的に、人工甘味料は最終手段というような位置付けでしたね。
前職は結構原料にお金をかけるメーカーで、高くてもおいしいものを作ろう!って。商品を作る上でやっぱりおいしいのは砂糖だから、おいしいものを使うことを第一優先に考えてました。


ーーー甘いものを作るメーカーさんでも、メーカーそれぞれの考え方とか商品で全然違うんですね。

田中:違いますね。低カロリーを訴求したアイスも十年以上前からあるけど、アイスってやっぱり嗜好品だから、「野菜」とか「体にいい」とか、なかなか売れない。大きいメーカーさんがずっとコツコツやってきて、人工甘味料を使ってもおいしくできるようになって、今は時代に求められているから少しずつ増えてきてる印象です。
でも、アイスの中では健康っていう商品カテゴリーだけど、人工甘味料使っているのって、自分が消費者として買うときに「健康にいい。カロリーも低い。でも、人工甘味料使用?」と、ちょっと矛盾を感じるところです。

嗜好品って、本来は度を超えてたくさん食べるものじゃないから、普段は砂糖とか気にしてるけど、せっかく食べるならおいしさを優先したい!みたいなところがある。
一方で、「砂糖不使用」とか「健康に配慮されてる」ものだからといって、なにも気にせずたくさん食べて良い!っていう捉え方をしちゃうのはどうかな?と思います。

菊地:そうですよね。消費者のリテラシーがすごく大切。人工甘味料の許容量の話もありますけど、「体重に対してこれぐらい」みたいなものだから、自分に当てはめて考えるとちょっと分かりにくいし、飲料に入っていると結構ガブガブ飲んじゃうよなぁと。
結局、そこは選ぶ立場の消費者のリテラシーが重要なんだろうなってすごく感じます。

中村(管理栄養士:CS担当)

中村:結局はバランスだよねっていうところに行きついちゃいますよね。砂糖も、完全に避ければいいってことではないし、かといってたくさん摂るのも良くないし・・・。

田中:メーカー側で、不使用にするポジティブな動きもありますよね。でも、リニューアルしても、あまり大々的には出していなかったり。

菊地:ありますよね。ポジティブな改善なんだけど、今まで使ってたっていうイメージを避けるためにあえて出さないっていうことなのかな。堂々と「不使用になりました!」って言って欲しいけどな。


人工甘味料との向き合い方、どうしてる?

菊地(パティシエ:商品開発担当)

ーーー離乳食期には、大人が何かしらを考慮したもので基本の食事を組み立てることができるけど、子どもたちが人工甘味料を前提とした商品だらけの世界に飛び込んで行ったときに、私たち大人はどういう風に向き合っていったらいいんだろう?向き合い方、どう思いますか?

菊地:今回はテーマが人工甘味料ということで取り上げられているけど、世の中には「推奨しないもの」っていっぱいあって、例えばタバコだって国の税収が大事という意味でも無くならないし、国や企業という規模で変えていくのはなかなか難しそうですよね。

古川:この会社に入ってくるメンバーもそれぞれ子ども食に対して想いがあって入ってくる人が多いし、ちょっと疑問に思う材料はなるべく使わずにやりたいよねっていう共通意識みたいなものがあるんだけど、理想の商品と、きちんとお客さまに届けることを前提にした商品作りのギャップや難しさってありますよね。保存性、賞味期限、価格・・・。

菊地:正直、メーカーは安くするためだけに、家庭には馴染みのないものを使っていると思ってました。でも、実際にメーカーの立場でレシピを作って工場でそれを実現して販売する流れを経験すると、それだけじゃないんだなっていうことが分かりました。
各メーカーいろんなこだわりが絶対あって、同時に安全なものを作るということが大前提だから、そこでまた葛藤がある。

田中:安全性って何だろう?と悩んでしまいますね。作り手と食べ手のギャップがとても大きいなぁって。
作り手としては、安全性担保のために使っているものも、消費者としては避けて欲しいと思うもの、多いですよね。商品作りをしていると、企業の想いをそのまま形にして届ける努力が常に必要だと体感します。

ーーーthe kindestのお客さまからは、添加物や、甘さに対してのご意見はどんなものがありますか?

中村:避けるべきものとして知られていたり、悪だと言われてるものに対しては、「ダメって言われてるから避けたいです」「○○は入っていますか?」と確認いただくことはよくあります。
the kindestも、不足しがちな栄養をしっかりとって欲しいという想いのプロダクトが多いので、食材の組み合わせで補いきれない鉄やカルシウムなどを添加しているけれど、添加物を避けたいお客さまにとっては、栄養よりもやっぱり完全無添加がいいからと解約に繋がるケースもあります。

菊地:人工甘味料を使用するメーカーさんも、葛藤がありそうですよね。「よく分からないから添加物避けたい」っていう消費者の気持ちは理解しつつ、でも安定した供給や利便性や、手に取りやすい価格にするためにはやむなし・・・というような。

田中:前職でも、安定剤なしで作ってみたことあったんですよ、かき氷。そしたら、シロップ全部沈んじゃって。作ってその場で食べるのはいいけど、それを固めて流通に乗せるとなると、シロップが沈んでいたらクレームになっちゃう。そういうのを品質として担保するために、やむを得ず使ってる側面はありますよね。

古川:人工甘味料にもいろんな種類があって、今回発がん性で指摘されたけれど、コーヒーとか、いわゆる一般的な食材もリストに入っていたりするじゃないですか。食材もいろんな面があるから、一概に添加物が悪!とかではなくて、体に入るものに興味を持つことも大切かなと思います。

菊地:わかります。「120度以上に加熱したらアクリルアミド出ちゃいますよ、アクリルアミド発がん性ありますけど」とか、じゃあこれからずっと生か蒸し料理だけでいきますか?みたいな話になっちゃう。
食品も添加物も、食べる人の個体差もすごくありますよね。これを食べていれば健康です!みたいな食品って基本的にはないし、食材に対してのメリデメももっと見える化されていくだろうし、時代的にも「あなたにとってどうか」みたいな、パーソナライズ化が前提になっていくと思います。毎朝一滴の血を採って、あなたこれ取り過ぎだからちょっと今日はこの料理食べといて、みたいなね。


自分の体に興味を持つ大切さ

古川(管理栄養士:商品開発担当)

ーーー食へのリテラシーは、どうやったら上がっていくと思いますか?

菊地:上がればいい、という単純なものでもないと思うんですよね。上がった結果、罪悪感が強くなっちゃう面もあるし、罪悪感強いものこそうまい!みたいな部分もあるじゃないですか。
おいしいけど体に悪いって思いながら食べるの、ストレスすごいですよ。おいしいもの食べるっていうのもストレス解消法ではあるし。

田中:前いたアイスメーカーでも、結構罪悪感ガッツリなカロリーモンスターみたいな商品も作っていたんですけど、商談で低カロリーとかちょっと系統の違うヘルシーなものを提案すると、「あなたのメーカーにそういうものは望んでない」と言われたり。売り場にも役割があって、成り立ってるんだなぁって。


ーーー需要があってのそれぞれの役割なんでしょうね。そういう意味では、ギルティが溢れつつも、オーストラリアみたいに、オーガニックとかヘルシーな売り場も当たり前にあって、どっちも選べるような市場になるといいなと思います。

菊地:ですよね。リテラシーを上げるのももちろん必要なんですけど、自分の体に興味を持つことが一番大事ですよね。ちょっと肉食べ過ぎて体重いな、今日は野菜でケアしようみたいな、自分を常に観察する習慣っていうのが一番いいのかなと思います。
ちょっとした体の異変に気付いて、昨日そういえばお酒いつもより飲みすぎたかも、とか、自分で気づいて行動するのが当たり前になるといいよねと思います。それこそ個体差っていう部分でも、データももちろんそうだし、自分自身が興味を持って気づけるようになることが大事。

古川:子育て世代は、チャンスだと思います。子どもの誕生って、食を見直すきっかけになる部分ではあると思うから、それでいろんな知識をつけて、知識だけじゃなくて「適度にやっていく」っていう気持ちで向き合っていって欲しいですね。
食べたものが自分に繋がるっていうことがちゃんと自分で分かっていると、食の選び方も変わるし、購入時に商品の原材料欄を見て判断する人も増えるだろうし。

中村:ちょっと耳が痛いです・・・!
私も管理栄養士の勉強するまで、食べたいものばっかり食べていたけど、知識がついていろいろ気をつけるようになって、でも社会人になるとまた忙しくなって、手軽に食べられるものに手が伸びるようになって・・・って。
忙しくてなかなか健康にまで気が回らないっていうのもリアルなところですよね。

菊地:「おいしそうだな」と、パッと手にとって、ちゃんと体に優しいっていう世界がもっと広がるといいですよね。
今取り組んでいる食育企画※のおやつシリーズも、さっき言ったように「食のリテラシーを上げる」っていうのも当然あるんですけど、いちいち裏面で原材料確認しなくても、「食育企画シリーズから何も考えずにパッと選んでも、ちゃんと安心安全」っていうのを目指してる。説教くさいものって届かないんですよね、これ食べなきゃ駄目だよみたいな感じじゃなくて、マーケットに当たり前にあるような状態にしていくことも、僕たちのミッションだなって感じます。

※食育企画
「子どもにあげたい」と信じられ、大人にもちゃんとおいしい!というコンセプトで手がけた、高品質なおやつシリーズ。
子育て家族が心からおやつを楽しめるように、みんなで「声をあげる」がミッションのプロジェクトです。
おやつの悩みや賛同の声が続々集まってきています。ぜひ皆さまのお声をお寄せください。

公式Instagram
https://www.instagram.com/shokuiku_kikaku_official/



座談会を終えて

the kindestの商品では、ベビーキッズ向けの商品がメインであることもあり、人工甘味料は不使用です。一方で、消費者として、やはり人工甘味料が身近であることも、今回みんなで話していて再確認しました。

食そのものに対する知識や興味と共に、まずは自分の体や変化に意識を向けることが大切という考え方に、激しく頷いた一同。

体が喜ぶ食を選択できる自分でありたいですね。

聞き手・文 / 大塚 かぐみ(商品開発部)



参照記事
公益社団法人 日本WHO協会.「人工甘味料「アスパルテーム」に発がん性の可能性」.
https://japan-who.or.jp/news-releases/2307-29/,(参照 2023-07-19)

サムネイルphoto :著作者 Freepik

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