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【喫茶店 美来】1-3話『わたしの行きつけ喫茶店』

「あなたが、教えてくれた3つのことが実現できる場所を作ろうと思って!」

確かに!
わたしは、居場所について過去に相談したことがあった。
その時に、3つの条件を話した。
なんかとても申し訳なく思った。

「それでね、作ったわけ」とチラシを一枚見せてくれた。
「契約内容?」と不思議に思いチラシを読んだ・・・

契約内容
・年齢・性別問いません。
・現在不登校中・休職中・職場復帰に向けたリハビリをしたい
 あるいは学校・職場行きたくない方募集中
・勤務時間・仕事内容は要相談
・給与要相談(給与は、お金とは限りません)
・得意なこと・不得意なことは必ず教えてください
・必ず、言いたいことは隠さず言いましょう
・人の心に寄り添うことができる方
・自信がない方

「この仕事場では、自分の得意なこと・好きなことを、存分に発揮してください。苦手なこと、不得意なことは事前にお伝えしてください。極力業務内容にいれませんので、無理のない範囲でお仕事していただけます。」

これを読んでも、まだ理解が追い付かない。
「上にも下にいるあの子たち、みんながお店のスタッフで、働いているってこと?」と店長に聞いた。

「そうよ」と答える。
「誰しも、働いているじゃない。小さいころあなたも言われなかった?
 勉強があなたのお仕事ですってね」

確かに言われた記憶はある。
給与は、お金とは限らないってどういうことだ?と考えていたら
「ご注文のパスタです。」と高校生くらいの男の子が持ってきてくれた。
「ありがとうございます。あなたもスタッフさん?」と
 思わず聞いてしまった。
その男の子は、「はい!そうです。」と笑顔で言って厨房へ戻っていった。

わたしは、食べ始めた。
「あれ?いつものパスタよりおいしい。風味が変わった気がする。」と思った。
わたしは飲食関係の仕事をしているため、食の変化に敏感に感じ取るというスキルを身に着けてしまった。

その思いは、声に出ていたようだ。
店長が「うちのパスタ少し変わったでしょ!」とにこやかにいう

わたしは、「とってもおいしいです!トマトの風味がすごく出ていて・・・」と話し出した瞬間
まずい!食レポになってしまうと、話すのを止めた。

「いいのよ続けて。」と店長は、ニコニコしている。
「面が前より柔らかくて、食べやすいです。」と照れながら言った。
店長が「よかったね~本職の方に褒められたよ。
里奈ちゃん・将人くん・紗季ちゃん・隆大くん」と厨房に向かっていう。
「最後のワッフル楽しみにしていてね~」と
みたことのない店長の笑顔だった。

わたしは、パスタとワッフルを食べている間に、1階や2階の子どもを迎えに来る保護者の方。新たに喫茶店に入ってくる子など出入りがひっきりなしにあった。

わたしは、食後の紅茶を頂いていた。
気づけば、お客さんは、私一人になっていた。
「店長。お先に失礼します。」と厨房の女の子が言って帰っていく。
「里奈ちゃんお疲れ様」と店長が言う。
店長が「将人くん・紗季ちゃん・隆大くん、お仕事終わりでいいよ。
あとは、私で大丈夫」というと
奥から「はい」という声が聞こえる。

それを聞いて、あたしも帰らなきゃと思ったその時、
「もう少し時間ある?」と店長が聞いてきた。
明日仕事は休みだし、特に家に帰ってもすることはない
「はいあります。」とわたしは言った。
なんだろう?と緊張感とワクワクした感じもあった。

<続く・・・>
©️心空


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