#26 こころの故郷
「富士山頂初冠雪」の写真をスクープした二日後、この日も早朝4時からの勤務だ。風船照明に映し出された鳥居前は霧雨が降りしきり、時折り雨音がテントに響く。気温6℃、体感気温4℃のこんな日にも登山者はやってくる。「初雪が降りました。富士山頂はもう冬です。途中決して無理をせず、勇気をもって下山してください」と激励?して何組かの登山者を送り出す。風船照明のエンジンを切ったころ、突然、東の空が上下に割れ、ご来光が五合目付近に降り注いだ。「こころが洗われる」とは、こんな光景をいただいた時のことなのか?
午前8時頃、「御殿場口に降りてくる人を待つのは、ここでよいのでしょうか?」と高齢のご夫婦がやってきた。聞けば、「山梨県側から登山して御殿場口へ下山する、と娘から連絡があったので迎えに来たが時間はわからない」とのこと。「鳥居の先にある大石茶屋でお茶でも飲みながら、のんびりと出迎えられたら如何でしょう?」と提案すると、「行ってみます」と二人で向かわれた。
お二人が鳥居の先へ向かわれたの見送ると、鳥居の前で、中畑さんが菅笠をかぶった青年と話をしている。話が終わったのか、菅笠の青年は鳥居をくぐり登山道を登って行った。その青年を見送りながら「えっ?!」と驚いた。裸足・素足・生足・・・。年代により表現は違うと思うが・・・靴どころか靴下も履いていない。何者なのか? テントに帰った中畑さんに尋ねた、「宗教的な意味合いはなく、想うところがあって自分を見つめ直すために裸足で登山をしている。一昨日は吉田口から登頂した。今日は御殿場口から・・」と話てくれた。菅笠の下には、おそらく3か月以上手入れしていない髭、Tシャツ、ズボンとナップサックのいでたち。百戦錬磨の商売人であった中畑さんが、菅笠の青年から滲み出るすオーラに、「富士山保全金に協力を!」という言葉を失ったと言う。
彼をして、ここまでさせるのはなぜだろう?
老若男女・善男善女が、富士山頂を目指すのはなぜだろう?
一人一人の想いは・・・・。
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